「ジャパネット杯 春の高校バレー」第77回全日本バレーボール高等学校選手権大会最終日(12日、東京体育館)9大会ぶり4度目の東京対決となった女子は、ノーシードの共栄学園が下北沢成徳をストレートで下し、2005年度以来、19大会ぶり3度目の優…

「ジャパネット杯 春の高校バレー」第77回全日本バレーボール高等学校選手権大会最終日(12日、東京体育館)9大会ぶり4度目の東京対決となった女子は、ノーシードの共栄学園が下北沢成徳をストレートで下し、2005年度以来、19大会ぶり3度目の優勝を果たした。エースで主将の秋本美空(3年)が35得点と大車輪の活躍で、大会最優秀選手賞に選ばれた。

最後はエースに託された。第3セット24-22のマッチポイント。共栄学園の秋本がコート中央に上がったボールを強打した。勝利が決まるとセンターコートに歓喜の輪ができた。仲間たちに寄りかかられた主将は、あおむけに転がって喜んだ。

「もう終わっちゃったのかなっていう感じで、実感が湧かない。(決勝は)思っていたよりもすごく楽しくて、いい試合ができたと思います」

相手は同じ東京の下北沢成徳。チームは昨年11月の春高東京都予選準決勝まで4連敗中で、「成徳に勝っていないので」とリベンジの機会をうかがっていた。

それが高校生活最後の大舞台で実現するめぐり合わせ。「絶対に勝つ」と強い思いで東京決戦に臨んだ。準決勝で前回優勝校の就実から42得点をマークしたエースは、第1セット序盤から強打や速攻を炸裂。第2セット中盤では、ブロックや強打で5連続得点をマークした。3セット合計のスパイク得点は、成徳が全員で32に対して、秋本一人で33。すべての思いを右腕に込めた。

2012年ロンドン五輪銅メダリストの母、愛さん(旧姓・大友)に勧められ、小2で始めたバレー。中学進学前に見学して「ピリッとしていて、かっこよかった」と共栄学園に選んだ。以来6年間、苦楽を共にした仲間たちと、初めて全国制覇を成し遂げた。優勝インタビューで、大会期間中は毎日のようにLINEでアドバイスを送ってくれた母に「日本一取ったぞー!」と報告。チームメートには「こんなキャプテンについてきてくれてありがとう。一緒にバレーができて楽しかったよ」と伝えた。

1年時は準々決勝、2年時は1回戦敗退。これまで、世代ナンバーワンエースといわれても「自分じゃない」と自信を持てなかった。今大会はノーシードから勝ち上がり、大会MVPを受賞。有終の美を飾り、「やっと日本一になれて、そのチームのエースが私。ナンバーワンを誇りたい」と胸を張った。

卒業後はSVリーグのチームに入団予定。高1で日本代表に選出された逸材は「出られたら次の五輪に出たい」と夢を抱く。28年ロサンゼルス五輪の星は、新たなステージでも輝き続ける。(只木信昭)

◆19大会ぶりの優勝に導いた共栄学園・中村文哉監督 「秋本は本当にチームを引っ張ってくれた。終始、みんなが笑顔でやってたのが良かった。この大会を通して3年生が成長した」

★母は大粒の涙 

秋本の母、愛さん(旧姓・大友)は宮城・仙台育英高時代から世界ユース選手権代表などに選ばれていたが、春高出場はかなわなかった。今大会は全試合を会場で観戦。この日もスタンドで声援を送り、優勝の瞬間は大粒の涙を流した。愛娘が場内インタビューで母に優勝を報告すると、右拳を突き上げて応えた。試合後には、インスタグラムのストーリー機能で親子ツーショットの動画をアップ。声を合わせて「応援ありがとうございました」と感謝のメッセージを投稿した。

★学校紹介

共栄学園(きょうえいがくえん) 1939(昭和14)年に本田裁縫女子学校として創設され、48年から現校名。生徒数は989人。中高一貫教育で、2003年に高校が共学化された。建学の礎を「至誠一貫」とし、教育理念に「文武両道」を掲げる。女子バレーボール部は1957年創部。部員数は33人。主な卒業生はバレーボール元日本代表の益子直美、大貫美奈子、ビーチバレー元日本代表の浦田聖子、草野歩、女優・タレントの間下このみら。東京都葛飾区お花茶屋2の6の1。