『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載（（20）クインシーズ刈谷 吉永有希（連載19：クインシーズ刈谷の髙佐風梨が、影山飛雄の言葉に思う「セッターにしかわからない」感覚＞＞）（ｃ）古舘春一／集英社 幼い頃、少女は日本代表の試合の放送に釘づ…
『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載（（20）
クインシーズ刈谷 吉永有希
（連載19：クインシーズ刈谷の髙佐風梨が、影山飛雄の言葉に思う「セッターにしかわからない」感覚＞＞）
（ｃ）古舘春一／集英社
幼い頃、少女は日本代表の試合の放送に釘づけになった。高橋みゆきや木村沙織のプレーに喝采を送っていた。"面白い！" その感覚だけ覚えている。それは体に刻まれたのかもしれない。
「同じクラスにバレー部の子がいて、その子に小学校１、２年生の時にずっと『一緒にやろうよ』って誘われてたんです。背が大きかったし、運動神経も悪いほうじゃなかったですし。なかなか入るには至らなかったんですが、最後はテレビで見ていたこともあって、やりたくなった感じです」
吉永有希は、バレーボールとの邂逅をそう語っている。その友達に導かれ、今シーズン、SVリーグに挑戦するところまできた。
バレーの何が楽しかったのか？
「みんなでやるっていうのが楽しかったんです」
吉永は無邪気な笑みを浮かべた。
「いろんな体験をしていて、バドミントンもやったりしたんですが、バレーはとにかく"みんなとやる"って環境が楽しかったです。入ったのはそれほど強くはないチームだったんですけど、誘ってくれた子に『みんなで強くしようよ！』と言われて、『面白いじゃん！』って」
最初のポジションはセッターだった。日本代表で活躍していた竹下佳江に憧れていたという。しかし周りと比べると身長が高く、打力もあり、６年生からスパイカーに転向した。
最初は戸惑いもあった。
「セッターは点を取るポジションじゃなかったんですが......スパイカーは自分で点を取るし、常に誰かに見られる。表に出るのが得意ではないタイプなので、それが最初は好きじゃなくて（苦笑）。でも、わかりやすいポジションなので、いろんな人から感謝されるようになったんです。『すごい！』って言ってもらえると、乗せられていい気分になってました（笑）」
そして名門、下北沢成徳高校で鍛えられる。
「中学生までは、身長170cm弱あればネットが２m15cmの高さなので十分に戦えました。でも成徳に入ったら、周りは大きな選手で、みんなが飛べる。私は一回、リベロになったんですよ。反対のコートでレシーブをしていて、Bチームの試合にリベロで出るといった感じでした」
ひとつの挫折だった。
「人並み以上のレシーブ力がないと、試合に出せない」
監督にはっきりと言われたという。
しかし彼女の心は折れなかった。むしろレシーブに励み、ディフェンス力を上げた。結果、オールラウンドな選手として殻を破った。大学時代はベストスコアラー賞、レシーブ賞を何度も受賞している。
「自分のバレーの感覚が変わりました。今も（成徳での経験が）生きていると思います」
吉永は言う。今季がSVリーグ１年目だ。
「（SVリーグは）環境も、飛んでくるボールの質も違う。今は通用しない部分が多いです。身長があったり、フィジカルが強かったり、そういう選手がいるので。そこで、どれだけ心を折らずに突破口を見つけられるのか。その準備をする、じゃないですけど、自分ができることを日々、積み重ねを一番に頑張ろうと思います」
強くなる方法を、彼女は知っている。
【吉永が語る『ハイキュー!!』の魅力】
――『ハイキュー!!』、作品の魅力とは？
「小学校５、６年生の時、父親が買ってきてくれたんです。娘がバレーを始めて、試合にも出るようになって......競技を学ぶというか、試合を見たり本を読んだり、ということの一環で『この漫画いいよ』と勧められたんです。
小学生の時は漫画を読む習慣がなかったんですが、アニメでどハマりして、コミックスも全巻読みました！ バレーをやっていた人間にも、（プレーや練習法など）いろんな選択肢をくれる漫画だと思います」
――共感、学んだことは？
「鴎台の星海（光来）さんに共感します。家族のなかでは自分だけが背が低くて、兄はバスケをやっていた。だから星海さんが幼い時に母に言われた『大きくなる方法は知らないけれど、強くなる方法は知っている』っていう言葉がいいなって。コミックスを読み直した時は、自分がうまくいっていない時で。だからレシーブを磨いて、高校でトッププレーヤーになった星海さんのすごさにあらためて気づきました」
――印象に残った名言は？
「また星海さんですが、『俺は 俺が弱いことを とうの昔に知っている』ってセリフが好きです。めっちゃ自信ありげに話すキャラクターですけど、過去のエピソードにグッときました」
――好きなキャラクター、ベスト3は？
「３位からですが、まずは星海さん。２位は音駒の（孤爪）研磨くんです。意外と熱いんですよね。相当に考えていないと、あのプレーはできない。早流川工業戦で、研磨くんがめちゃくちゃ動かされて限界に近づいた時、虎（山本猛虎）が『だいたい最後までやる』と信じていて、最後に研磨がジャンプトスで福永（招平）くんに上げる場面が最高で......。自分がそうじゃないからかもしれないですけど、表立って光る選手よりも、根が熱い選手が好きです。
なので、１位は稲荷崎の北（信介）さん！ 自分は『人の影響を受けやすい』と言われるんですが、北さんのように身の回りのことをしっかりしよう、と思いました（笑）。北さんの『ちゃんとやんねん』は好きだし、積み重ねたら、どんな舞台でも堂々といられるんだなって」
――ベストゲームは？
「烏野vs音駒。研磨くんもよかったですし......もうひとつ選ぶなら、さっきも話した早流川工vs音駒ですね」
【プロフィール】
吉永有希（よしなが・ゆうき）
所属：クインシーズ刈谷
2001年11月23日生まれ、171cm・アウトサイドヒッター。下北沢成徳高校時代にインターハイ３位となり優秀選手賞を受賞。東京女子体育大学では、リーグや東日本インカレなどでベストスコアラー賞など多くのタイトルを受賞した。2023年のV・サマーリーグ東部大会に、全日本学生選抜代表のキャプテンとして出場。2024年にクインシーズ刈谷に入団した。
