昨年度のJRA賞最優秀ダートホースに輝いたレモンポップ(牡6歳)。海外の水が合わないのか、昨年3月のドバイ遠征は不本意な結果に終わったものの、国内では1年間を通じて勝ちまくった。 1月のGIII根岸S(東京・ダート1400m)を皮切りに、…

 昨年度のJRA賞最優秀ダートホースに輝いたレモンポップ(牡6歳)。海外の水が合わないのか、昨年3月のドバイ遠征は不本意な結果に終わったものの、国内では1年間を通じて勝ちまくった。

 1月のGIII根岸S(東京・ダート1400m)を皮切りに、GIフェブラリーS(東京・ダート1600m)、地方交流GI南部杯(盛岡・ダート1600m)、GIチャンピオンズカップ(中京・ダート1800m)と4戦4勝。まさに"無双"状態だった。

 そして今年も、海外GIのサウジカップ(2月24日/キングアブドゥルアジーズ・ダート1800m)こそ12着と大敗を喫したが、地方交流GIさきたま杯(6月19日/浦和・ダート1400m)、南部杯(10月14日)と2連勝中。相変わらずの強さを誇っている。

 そのレモンポップが、今週のチャンピオンズカップ(12月1日)で引退する。はたして、国内ダートの頂上決戦となる一戦で、見事に連覇を遂げて有終の美を飾ることができるのだろうか。


チャンピオンズカップ連覇を狙うレモンポップ

 photo by Eiichi Yamane/AFLO

 関西の競馬専門紙記者の評価は少々辛口だ。

「あれだけの馬ですから、それなりに格好はつけると思います。でも、勝つとなるとどうでしょうか。個人的には(勝つのは)かなり厳しいのでは? と見ています」

 専門紙記者が「厳しい」と見る理由は、ふたつある。ひとつは距離、もうひとつは競走能力に関するものだ。

 まず距離についてだが、レモンポップはデビュー以来、1400m戦を中心にマイル以下のレースを使われてきた。おそらくその辺りが適距離であることは間違いない。

 つまり、チャンピオンズカップの1800mという距離は、本質的には長いのだ。

 昨年もチャンピオンズカップを前にして、予想における最大のポイントになったのは、レモンポップは1800mをこなせるかどうか、だった。関係者やメディア、ファンの間でも侃々諤々が展開された。

 結果は、逃げ切っての快勝。本質的に1800mは向かなくても、この馬のポテンシャルを持ってすれば、こなせない距離ではない、ということが証明された。

 ただし、それはあくまでも昨年のこと。「昨年もこなしたらから」という理由で、今年も"こなせる"とは限らない。

 そこに、競走能力の問題が絡んでくる。先述の専門紙記者が言う。

「昨年の今頃、レモンポップは競走馬としてまさにピークの状態にありました。ゆえに、本質的には長い1800mのGIも勝つことができました。

 でも、その時と比較して今の状態はどうか? すでにピークはすぎていて、普通に考えれば、下がることはあっても、上がることはない、と見ています。そういった状態にあって、それでも勝てるのか、距離をこなせるのか、ということですよ」

 確かに昨秋のレモンポップは絶頂期と言える状態にあった。圧巻だったのは、10月の南部杯だ。レモンポップは、1分33秒8という芝のレース並みの勝ち時計をマーク。2着馬に2秒もの差をつける、記録的な"大差"で圧勝した。

 この余勢を駆って、課題とされた距離1800mを克服してチャンピオンズカップも勝った。

 昨年同様、今年も南部杯を勝ってチャンピオンズカップへ、という臨戦過程は同じ。だが、そこに昨年ほどの勢いがあるかどうか。

 南部杯を勝ったことに変わりはないが、勝ち時計は昨年よりもおよそ2秒遅い。2着馬との着差も今年はわずか4分の3馬身差だった。

 無論、相手や馬場状態が違うため、単純比較はできない。だとしても、他馬の陣営が「手がつけられないほど強い」と呆れたほどの強さは、今年は感じられなかった。

 現状の出来でも、得意の1400m戦や1600m戦なら勝ち負け必至と見るべき存在であることは間違いない。しかし、強敵相手の1800m戦となると、さすがに疑問符がつく。

 ともあれ、レモンポップへの"追い風"がないわけではない。

「出足の速さから、単騎逃げが見込める点です。加えて、舞台が中京コースであること。同コースはコーナーがきつく、追い込みが利きにくい。要は、逃げ・先行有利の舞台ということです。これらのアドバンテージをうまく生かすことができれば、有終の美を飾るシーンがあっても不思議ではありません」(競馬専門紙)

 レース終了後には、そのまま中京競馬場で引退式が行なわれるレモンポップ。チャンピオンズカップで競走生活の掉尾を飾ることができるのか。注目である。