第3回プレミア12で連覇を目指す侍ジャパンは10月29日、清武総合運動公園で宮崎合宿初日を迎えた。 午後の全体練習で行なわれた打撃練習のあと、室内練習場に移動してバットを振り、報道陣の前に最後に現れたのが、追加招集された清宮幸太郎(日本ハ…
第3回プレミア12で連覇を目指す侍ジャパンは10月29日、清武総合運動公園で宮崎合宿初日を迎えた。
午後の全体練習で行なわれた打撃練習のあと、室内練習場に移動してバットを振り、報道陣の前に最後に現れたのが、追加招集された清宮幸太郎(日本ハム)だった。
侍ジャパン・井端弘和監督(写真左)に声をかけられ笑顔を見せる清宮幸太郎
photo by Sankei Visual
【後半戦だけなら球界トップクラス】
「(大会までに打撃をこう仕上げたいというイメージ?)そこまでないですかね。練習をやりすぎないようにというか。疲労をためないように、常にパフォーマンスを発揮できる状態にしておくのが一番かなと思います」
今回の侍ジャパンで、清宮にかかる期待はさまざまな意味で大きい。
ひとつ目の理由は、2023年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で活躍した岡本和真(巨人)や村上宗隆(ヤクルト)、近藤健介(ソフトバンク)がケガで出場できず、さらに万波中正(日本ハム)もコンディション不良で辞退となったことだ。彼らパワーヒッターたちの穴を埋められるとすれば、代わりに急遽呼ばれた清宮だろう。
ふたつ目は、中学1年時のリトルリーグ世界選手権、高校3年時のU−18W杯以来となる国際大会出場となることだ。2019年3月のメキシコ代表との強化試合は右手の骨折で辞退しており、清宮にとって初めて侍ジャパンのトップチームでの檜舞台となる。
3つ目は、今季後半戦で見せた覚醒だ。前半戦で出遅れて規定打席には届かなかったものの、打率.300をマーク。特に7月以降は、67試合で233打数77安打、打率.330、15本塁打というハイパフォーマンスを披露した。
今回のプレミア12には追加招集という形になったが、井端弘和監督は最大限の期待を寄せている。
「(期待は)大いにあります。後半戦だけを見れば、トップクラスの成績を出していますし、今後も踏まえて期待している選手です。来年以降、プレミア12以降ですね。そこを踏まえて(日本代表になる可能性も)十分にあります。プレミア12を経験することは非常に大きいことだと思います」
順当に行けば2026年の第6回WBC、さらに2028年ロサンゼルス五輪でも中心になってくるひとりだろう。
そうした期待が清宮にかかるなか、今回の侍ジャパンでまず気になるのが打順だ。囲み取材で問われた井端監督は「全員揃わないとイメージはできてこない」としたうえで、チームづくりにおいてベースになるものを語った。
「最初の決めつけが、僕は一番嫌いなので。実際に見て、そこからでも遅くはないのかなと思います。宮崎にいるメンバーは11月5日の試合(広島との練習試合)しかないので、そこである程度見極めていければいいかなと思います」
打順はあくまで"噛み合わせ"だ。誰と誰をどのように並べれば、チームとして機能するのか。11月5日の広島戦と9、10日のチェコとの強化試合、さらにプレミア12の序盤戦で見極めていくことになるが、早く"形"を知りたい記者から質問が飛んだ。
4番候補としていた岡本が離脱となったなか、クリーンアップに据えるのは清宮、森下翔太(阪神)、牧秀悟(DeNA)あたりか──。
「あまりそこにこだわっていないというか、自分自身で決めるのではなく、そこはコーチ陣と会話して決めていこうかなと思います。さっきも言ったとおり、そこの決めつけが大きな過ちになることもよくあるので。今のところはまだ、本当に何も決めていない」
【自身が語る打撃の変化】
一方、清宮自身はどんな思いで侍ジャパンに合流したのか。
「アピールは大事だと思います。でも、自分らしく。しっかりいい準備をして、いろんなところで臨めたらなと思います」
爽やかな笑顔を浮かべながら、余裕を持って報道陣に受け答えしている姿が印象的だった。
名ラガーマンの息子として生まれ、自身も中学時代から名を馳せた。早稲田実業では当時最多の高校通算111本塁打を記録し、甲子園のスーパースターとして鳴り物入りでプロ入りした。
以来、大きな期待に応えるようなパフォーマンスは見せられていなかったが、今季後半戦、明らかにひと皮剥けた姿を打席で見せ続けた。
いったい、何が変わったのだろうか。
「前までは左足に乗ったときにトップをつくって、そのまま打ちにいっていました。でも今は左足に乗って、体重移動するタイミングでトップをつくるようにしたら、間(ま)ができるようになったという感じですかね」
打撃動作で上半身と下半身の"割れ"や"分離"、"セパレーション"と言われるものができ、うまく間が取れるようになったと清宮は言う。チームメイトのアリエル・マルティネスと話しているなかで、ヒントが得られたという。
「(今の打ち方になって)バットが出やすくなったんですかね。変なところに力を入れず、素直に振れるようになったかなと思います。(打球の質も)安定しだしました。ミスが減ったかなと思います」
打順は全体的にハマる場所に据えられるだろうが、今季後半戦と同じような打撃ができれば、侍ジャパンでも中心を担うことは間違いない。
今後は11月9、10日のチェコ戦を経て、13日に初戦を迎えるプレミア12ではオーストラリア、韓国、チャイニーズタイペイ、キューバ、ドミニカ共和国との対戦が続く。見知らぬ相手と打席で対峙することになるが、外国人投手にはどんなイメージを持っているだろうか。
「日本のピッチャーと、やっぱりタイミングが違うなって思います。それこそプロ野球にも外国人のピッチャーがいますけど、それは感じますね」
とりわけ中南米には、小さいテイクバックでパッと投げてくる投手も珍しくない。日本人とは異なる投球モーションの相手に対し、覚醒した清宮はどんなバッティングで対応するのだろうか。自身の役割を聞かれると、こう答えた。
「チームを勝たせるバッティングができるのが一番だと思います。得点圏とか、点が欲しいときに点が取れる役割を果たせればと思います」
今季後半戦で生まれ変わった姿を見せた清宮は、日の丸を背負ってどんな活躍を見せてくれるのか。楽しみな大会がまもなく始まる。