Jリーグの誕生とともに劇的な進化を遂げてきた日本サッカー。一方で、プロリーグではないものの、重要な部分を担ってきた「戦いの舞台」がある。日本のサッカーの成長を示す「JFLの現在地」を、サッカージャーナリスト後藤健生が探る。■最も熱いダービ…

 Jリーグの誕生とともに劇的な進化を遂げてきた日本サッカー。一方で、プロリーグではないものの、重要な部分を担ってきた「戦いの舞台」がある。日本のサッカーの成長を示す「JFLの現在地」を、サッカージャーナリスト後藤健生が探る。

■最も熱いダービーとなっていた「天竜川決戦」

 静岡県浜松市にあるHonda FCは、JSL時代にはお隣の磐田市にあるヤマハ発動機とライバル関係にあり、両者の対決は「天竜川決戦」として親しまれていた。

 そのヤマハは「ジュビロ磐田」と名前を変えて、Jリーグには2年目から参戦。それに対して、Honda FCはJリーグには加盟せず、企業チームとして「最強のアマチュア」としてJFLに君臨。Jリーグ加盟を目指すクラブの前に立ちはだかり続けた。

 ジュビロ磐田は、Jリーグの中では非常に企業色が強いクラブであり(スタジアムも、ヤマハの敷地内にある)、アマチュアを選択したHonda FCとの隔たりは小さい。もし、本田技研もJリーグ入りを選択していたら、Jリーグで最も熱いダービーとなっていたことだろう。

■昇格へのモチベーションが非常に高い「JFL」

 いずれにしても、JFLというリーグは企業チームが減少して、Jリーグ昇格を目指す地域密着型クラブが主体のリーグとなってきているのだ。

 こうしたクラブは、Jリーグでのプレーを経験した選手を多数、擁している。元Jリーガーのベテランだけでなく、戦力外となりながらもJリーグへの復帰を目指す中堅選手。そして、Jリーグクラブで出場機会を得られなかった若手もいて、昇格へのモチベーションは非常に高い。

 そうしたクラブに対して、企業内クラブは社員選手が多く、引退後は企業内でキャリアを築こうという選手が多いのだ。

 いずれ、JFLがJリーグ志向のクラブだけのリーグになっていく可能性もある。実質的な「J4リーグ化」ということになる。

 そうした中で、ソニー仙台の活動終了という事態が起こったのだ。

■Jリーグが発足後「報道される機会」が激減

 かつて多くの大企業が実業団チームを抱えていたのは、一つは社内の結束を高めるため(福利厚生のため)であり、また、競技の報道でチーム名=企業名が露出されることによって宣伝効果があったためでもあった。

 だが、Jリーグが発足してプロ化してからは、企業内クラブは実質4部のJFLでプレーすることとなり、報道される機会は激減した。「宣伝効果」は期待薄だ。現在の企業内クラブの存在意義は社内の福利厚生と育成活動などによる社会還元の2つということになる。

 企業の経営状況が好転しないとすれば、今後も企業内クラブが“廃部”になる可能性は大きい。

 J3リーグとJFLの入れ替え制度ができてから、J3リーグのサッカーは大きく進化している。Jリーグからの退会という事態を避けるために、意識を高く持ったチームが増えている。一方、JFLでJリーグ入りを狙うチームが増え、Jリーグ経験者多数を擁するチームが上位を占めるようになって、J3リーグもレベルアップ。Jリーグとの格差も小さくなっている。

 今ではJ3リーグでも、あるいはJFLでも、J1リーグと同じようにしっかり狙いを持った試合ができるチームが多くなった。もちろん、選手個々のレベルはJ1には及ばないから、J1のチームに挑戦したら跳ね返されてしまうことが多いだろうし、技術的ミスは多いかもしれないが、同じカテゴリーのチーム同士の試合なら、互いの戦術が噛み合った好ゲームも多い。

 もちろん、さらに下部の地域リーグのレベルも急速に上がっており、日本のサッカー全体が大きく動き始めているのである。ソニー仙台FCの活動停止という出来事の背景には、こうした日本サッカー全体の大きな動きもあったのである。

いま一番読まれている記事を読む