過去3度戦って、いずれも0-1で敗れている因縁の地・ジェッダで宿敵・サウジアラビアに挑んだ10日の日本代表。今回も案の…
過去3度戦って、いずれも0-1で敗れている因縁の地・ジェッダで宿敵・サウジアラビアに挑んだ10日の日本代表。今回も案の定、苦しめられる展開となった。
「試合前から4枚で来るかもしれない、アンカーを置いてくるかもしれないというのは言われていたけど、僕らはミラー(3-4-2-1)を期待していました。でも相手は4バックで来て、僕らは最初、前から行っていた分、蹴られた後がしんどかった。『行かなければいけない』という意識のまま守備をしていたのがきつかった」と守田英正(スポルティング)は試合の入りを振り返ったが、立ち上がりは主導権の握り合いのような状況もあった。
そんな中、日本は前半14分という早い時間帯に鎌田大地(クリスタルパレス)がいいビルドアップから先制点をゲット。チーム全体を落ち着かせた。そこからはミドルブロックを引いて、そこまで奪いに行かない守備に変化。その分、相手がボール握る時間も増え、カウンターも多くなったが、日本も負けじとチャンスを作った。
最たるものが前半終了間際の上田綺世(フェイエノールト)の反転シュートだろう。板倉滉(ボルシアMG)のタテパスを南野がターンしながら出したボールを受けた背番号9は「これはもらった」とばかりに左足を振り抜いたが、惜しくもGKに弾かれた。
「シュートチャンスは逃さないようにしてますし、味方を生かしつつも、そういうターンのチャンスも来ると思ってるんで、それは逃さないようにしてます。ただ、課題はシュート精度。もう1個運んでもよかったかなとも思います」と本人も悔しがったが、こういった思い切りのいいプレーはフェイエノールトでコンスタントに試合に出るようになったからこそできるものなのだろう。
■最前線のFWに求められたもの
ご存じの通り、今季も上田はサンティアゴ・ヒメネスの控えという立場からシーズンをスタートさせたが、そのメキシコ人FWが9月下旬に負傷。9月28日のNACブレダ戦から名門の1トップを張っている。
「今、勝負だと思うんで。体の準備だけはしっかりして、最大限、パフォーマンスを発揮するというのは意識しています」と本人も意気込みを新たにしている。
そんな時の代表戦だけに、より存在感を強烈にアピールしたいと思うはず。前半はこの決定機と前半17分に遠藤航(スルーパス)に抜け出したシーンを逃しているだけに、後半は確実に巡ってきた仕留める必要があった。
しかしながら、日本はハーフタイムに引いてブロックを作る戦い方を確認。後半は相手により一層、保持される展開をあえて選択した。90分通してのポゼッション率はサウジが56.7%、日本が43.3%と大きく下回った。
そうなると、最前線のFWに求められるのは、体を張ってボールを収め、仲間が上がってくる時間を稼ぐこと。ある意味、黒子の仕事ではあるが、それができてこそ、チームが円滑に回る。森保一監督から「綺世は多彩なゴールパターンがあるし、シュートもうまいが、それ以外の部分に課題がある」と前々から指摘されていた分、こういう時こそ、ターゲットマンとしてのタスクを確実にしなければならなかった。
■「上手に壁になれればチームももっといい形で前進できる」
上田の高い意識はピッチ上で如実に表れた。3~4人のDFに囲まれても何とか粘ってキープし、味方のチャンスをお膳立てするようなシーンが何度か見られたのだ。
「収める仕事が前進した手ごたえ? まあ、あるっちゃあるけど、もうちょっとできるかなっていうのと、もっと効果的にパスを受けて上手に壁になれればチームももっといい形で前進できるのかなと。まだ受け方のところはもっと幅を広げていかないとなと感じています。チームのために時間を作る、前でタメを作るっていう仕事は今後も求められるし、どこに行っても同じ。それができるようにしたいなと思ってます」
結局、上田の献身的プレーが追加点に結びつくことはなかったが、前線で体を張る仕事に限って言えば、着実な成長を示したのは確か。それは森保監督も認めているはずだ。フェイエノールトでヒメネスからポジションを奪い、2026年W杯で日本の看板に君臨するためにも、その部分を突き詰めていくことが肝要だ。2-0で鬼門突破したジェッダでの大一番で、上田が得た自信は少なくなかっただろう。
(取材・文/元川悦子)
(後編へ続く)