8月3日の第25節から再開した2024年J2。中断前の時点でベガルタ仙台は勝ち点38の6位につけていた。「今季J2は非…

 8月3日の第25節から再開した2024年J2。中断前の時点でベガルタ仙台は勝ち点38の6位につけていた。

「今季J2は非常に拮抗したリーグ。どこが勝つか負けるか分からない状況が続いていました。その中でJ1昇格プレーオフ圏内の6位という順位は悪くない。ただ、一瞬でも気を抜いたらすぐに下まで落ちてしまう。気の抜けない戦いが続いていくと思います」と森山佳郎監督は気を引き締めていた。

 清水戦に勝利した時点での仙台は総得点31、総失点30の得失点差+1。清水エスパルス、V・ファーレン長崎、横浜FCの上位3強が揃って40得点台を稼いでいることを考えると、得点数の少なさが気がかりではある。最多得点者が8点の中島元彦で、その下が7点の相良竜之介というように2ケタ得点者が出ていない。そのあたりを指揮官はこう捉えている。

「後ろからのビルドアップが少し安定せず、いいボールが供給されない分、得点数がやや低かったと見ています。FW不在のゼロトップのような形で戦ったことも一因でしょう。前線でキープできる梅木翼を補強したことでFWの競争も活発化していますし、サイドを使いながらラストサードを崩す形を中断期間のトレーニングでも重ねてきたので、ここからよくなるのかなと見ています」

■引き上げる必要がある得点水準

 森山監督が言うように、清水戦を見ていても、その意識が色濃く感じられた。先制点も右サイドの真瀬拓海が持ち上がり、DFにカットされたボールを松井蓮之が奪い返して中へ。DFに当たったボールをエロンが収め、中央の中島が左足で蹴り込んだ。外を使う意識が具現化したのは前向きなポイント。再開初戦から複数ゴールが生まれたのも朗報と言っていいだろう。

「開幕前は1試合平均で得点1.5、失点1以下という目標を設定していましたが、現実はなかなか厳しい。得点1.7が昇格ラインだと見ているので、今の1.2という水準を引き上げていく必要があります。

 今の我々はできるだけ多くの得点を奪い、失点を減らして、1つ1つの勝負を競り勝っていくしかない。前半戦は簡単な試合は1つもなかったし、2点差以上の勝利は4月13日のモンテディオ山形戦だけ。それ以外は全て1点差という苦しい状況です。最後の最後まで諦めずに戦い続けることが、最終的な結果につながると思っています」と指揮官は力を込める。

 再開ゲームの白星によって、自動昇格圏の2位・清水との差は11に縮まった。だが、森山監督は「最終的には5・6位でプレーオフに参加して下剋上を狙っていく方が我々らしい」と前向きに言う。

■“5・6位から昇格を狙う方が我々らしい”の真意

「すぐ下にはいわきFCやジェフユナイテッド千葉徳島ヴォルティス、愛媛FCなどが僅差で迫ってきていますし、最終的にどこがプレーオフ圏内に来るか本当に分からない状況です。そういった現状を踏まえると、仙台は5・6位でリーグ戦を終えて、プレーオフを下から勝ち上がった方がJ1昇格を果たせるのかなというイメージもあります。

『引き分けOK』という状況は逆に落とし穴。これまでの戦いを見ていても、ビハインドで負けそうになると『窮鼠猫を噛む』じゃないですけど、急にパワーを発揮するところがある。『上に食らいつく』じゃないですけど、僕自身もそういうメンタリティなので、逃げ切ることはあまり考えない方がいいと思いますね(苦笑)。

 とはいえ、プレーオフ圏内を死守するためにも、やはり得点力アップは必要不可欠なテーマ。相手陣内に入ってからの連携連動の向上は大切です。ゴールに向かう迫力や質、アイディアを高めていくことにトライし続けていくつもりです」

 ここから先も長崎を下した水戸ホーリーホック、順位の近い千葉やいわきといった難敵が続く。いかにしてチャレンジャー精神を持ってしぶとく戦えるのか。森山イズムのさらなる浸透が重要だろう。

【もりやま・よしろう】
1967年11月9日生まれ、熊本県出身。現役時代はサンフレッチェ広島などでプレーし、サッカー日本代表としてもキャップ数を重ねる。引退後は指導者の道を歩み、サンフレッチェ広島ユースでコーチと監督を歴任。その後、日本サッカー協会で育成年代の監督を務め、U―17日本代表監督としてFIFA U―17ワールドカップに出場した。今季からベガルタ仙台の監督を務める。

※記事内のデータはすべて8月9日執筆時点

(取材・文/元川悦子)

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