広尾晃のBaseball Diversity フレッシュオールスターゲームは、日本のプロ野球のファームの選手によるオールスター戦である。毎年、一軍のオールスター戦と同じ時期に行われる。 一軍オールスター戦との違い ウエスタン・リーグ、イー…

広尾晃のBaseball Diversity

フレッシュオールスターゲームは、日本のプロ野球のファームの選手によるオールスター戦である。毎年、一軍のオールスター戦と同じ時期に行われる。

一軍オールスター戦との違い

ウエスタン・リーグ、イースタン・リーグから選抜された選手によって行われるが、一軍のオールスター戦とは、いくつかの点で異なる部分がある。

・ファン投票は行わず、全選手を2軍の監督、両リーグの委員長が選考する。

・試合は2試合ではなく1試合だけ。

・ホームラン競争は行わない。

・投手に投球回数の制限はない(オールスター戦は3イニングまで)

2021年のフレッシュオールスターゲーム(松山市)

選考基準

現在の選手の選考基準は、以下の通り

・新人選手(昨年、ドラフト、育成ドラフトで入団した選手)

・支配下、育成での選手登録が5年以内の選手

・二軍の公式戦に出場した選手

・これまでフレッシュオールスターに2回以上出場していない選手

・今季の一軍のオールスター戦に選出されていない選手

・ファームリーグに参加しているオイシックス新潟、くふうハヤテ両チームから選出された選手

選考する選手数はたびたび変更されてきたが、今年はイースタン・リーグはNPB傘下の7チームから各3名の21名、そして今季からファームリーグに参加しているオイシックス新潟から2名の計23名、ウエスタン・リーグはNPB傘下の5チームから各4名の20名、今季からファームリーグに参加しているくふうハヤテから2名の計22名となっている。

フレッシュオールスター戦に選ばれる選手

フレッシュオールスターは「二軍のオールスター戦」だが、一軍のオールスター戦とは異なり、二軍で最も実績を上げている選手が選ばれるわけではない。

NPBでは、一軍で活躍したのちに不振や故障などで二軍に降格し、そこで活躍している選手がいる。またファームで何年もプレーをし、実力を蓄えた中堅選手がいるが、そうした「二軍の実力者」は選考されない。

今季で言えば、現時点でのイースタン・リーグの首位打者の松尾汐恩(DeNA)、本塁打、打点王の山本大斗(ロッテ)、最多勝、防御率1位の阪口皓亮(ヤクルト)、ウエスタン・リーグ首位打者の佐藤啓介(広島)、本塁打王のリチャード(ソフトバンク)、打点王の正木智也(ソフトバンク)、最多勝の松木平優太(中日)は選出されず、ウエスタン・リーグの防御率1位の前田純(ソフトバンク)だけが選出された。

フレッシュオールスター戦は必ずしも「ファーム最強選手」の選抜試合ではなく「これから一軍で活躍しそうな若手選手」の試合なのだ。

また新人でいきなり一軍で活躍した選手も選抜されないことがある。現ドジャースの大谷翔平は出場していない。

かつては育成選手は出場できなかったが、現在は出場できるようになった。

なお2015年は台風のため、2020年は新型コロナウイルス禍によって、開催が中止になっている。

2022年のフレッシュオールスターゲーム(長崎市)

イチロー、新庄剛志らが活躍した1992年

フレッシュオールスター戦で活躍した選手が、のちに一軍のスター選手になった例は数多い。

1992年のジュニア・オールスターのウエスタン・リーグ選抜は、のちに日米で大活躍した選手が数多く選ばれていた。

ウエスタンのスタメンのうち3番遊撃手は現日本ハム監督の新庄剛志(阪神)、6番右翼は金本知憲(広島)、7番指名打者は中村紀洋(近鉄)、8番三塁手は田口壮(オリックス)、9番捕手は矢野輝弘(中日)、鈴木一郎(のちのイチロー、オリックス)が途中出場した。

実にのちのメジャーリーガーが4人、NPB監督が3人も出場していたのだ。

試合は7月17日、東京ドームで行われた。観客は21,000人。

8回に中村紀洋の代打で登場した鈴木一郎は大洋の有働克也の2球目を右翼に本塁打。これが決勝点となり、鈴木一郎はMVPを獲得した。首位打者7回、MVP3回など多くの賞を獲得したイチローだが、これが初めての表彰だといえよう。

イチローは翌1993年に福岡ドーム(現みずほPayPayドーム)で行われたフレッシュオールスターゲーム(この年から名称が変更された)にも、一番中堅手でスタメン出場したが、この年のイースタン・リーグの4番左翼手はルーキーの松井秀喜(巨人)だった。

2023年のフレッシュオールスターゲーム(富山市)

2018年のフレッシュオールスターゲームは青森県の弘前市運動公園野球場で9,715人の観客を集めて行われた。

このときのイースタン・リーグのスタメンは3番指名打者、清宮幸太郎(日本ハム)、4番三塁手、村上宗隆、5番一塁手安田尚憲(ロッテ)、この3人は同学年。前年のドラフトでは早稲田実業の清宮を7球団が1位指名したが、日本ハムが当たりくじを引き当てた。清宮を外した6球団のうち、3球団が村上、残る3球団が安田を指名した。村上と安田は清宮の「外れ1位」だったのだ。

清宮は4回にホームランを打っている。またこの試合でウエスタンの9番右翼手でスタメン出場した周東佑京(ソフトバンク)は、二塁打を含む2安打と活躍し、ともに優秀選手に選ばれている。

今年のフレッシュオールスター戦

フレッシュオールスターゲームは、2009年以降、地方球場で行われている。プロ野球の本拠地球場がない地方の野球ファンにとって、ファーム中心の選手とは言え、プロ野球選手に身近に接する貴重な機会となる。

ただ、フレッシュオールスターゲームは、満員札止めになることはほとんどなかった。多くの試合で1万人前後であり、観客席はやや寂しいことが多かった。

しかし2024年7月20日に、姫路市のウインク球場で行われた今年のフレッシュオールスターゲームは、前売り券が早々に売り切れ、観客席は立ち見の出る超満員となっていた(観客数は11,080人)。客席数の少ない小さな球場ではあったが、満員の観客が見守る中での試合は、選手にとっても大いに励みになったのではないか。

なお、フレッシュオールスターゲームは、通常、オールスター戦の前後に行われるが、今季は、まだ一軍のペナントレースの前半戦最終週が行われている7月20日に行われた。

このために、出場辞退が相次いだ。

・イースタン・リーグ選抜

<辞退選手>

中島大輔(楽天)チーム事情のため

滝沢夏央(西武)チーム事情のため

石田裕太郎(DeNA)チーム事情のため

井上絢登(DeNA)チーム事情のため

細野晴希(日本ハム)左肩上腕二頭筋長頭腱炎、左肩甲帯機能不全のため

上田希由翔(ロッテ)右ハムストリング肉離れのため

<代替選手>

前田銀治(楽天)

金子功児(西武)

吉野光樹(DeNA)

石上泰輝(DeNA)

松浦慶斗(日本ハム)

松石信八(ロッテ)

・ウエスタン・リーグ選抜

<辞退選手>

吉田賢吾(ソフトバンク)チーム事情のため

佐藤一磨(オリックス)チーム事情のため

杉沢龍(オリックス)チーム事情のため

河野佳(広島)チーム事情のため

野口恭佑(阪神)チーム事情のため

<代替選手>

広瀬隆太(ソフトバンク)

川瀬堅斗(オリックス)

茶野篤政(オリックス)

杉田健(広島)

福島圭音(阪神)

「チーム事情」とは、ほとんどが「一軍の試合に出場するため」だった。事実、7月20日、21日に行われた一軍の公式戦には、フレッシュオールスターゲームを出場辞退した選手の多くが出場していた。

オールスターゲームは故障など理由がないままに出場を辞退するとペナルティが課せられるが、フレッシュオールスターゲームにはそうしたペナルティはない。

選手にしても「二軍のオールスター戦よりも、一軍の公式戦に出たい」と思う選手が多い。

また急遽、出場が決まった代替選手の多くは一軍出場経験があるだけに、複雑な心境だろう。

今年は2安打4打点の活躍をした橋本星哉(ヤクルト)がMVPを獲得した。

今年の開催はイレギュラーだったと思われるが、フレッシュオールスターゲームは、やはり一軍の公式戦と重ならない日程で行うべきだろう。

2024年のフレッシュオールスターゲーム(姫路市)