英紙ガーディアンが特集記事「日本のフィールド・オブ・ドリームス」 花咲徳栄が埼玉県に初の優勝旗を持ち帰り、幕を閉じた第99回全国高等学校野球選手権大会。今年も“聖地”甲子園では数々のドラマが生まれた。広陵・中村が6本塁打、17打点、38塁打…

英紙ガーディアンが特集記事「日本のフィールド・オブ・ドリームス」

 花咲徳栄が埼玉県に初の優勝旗を持ち帰り、幕を閉じた第99回全国高等学校野球選手権大会。今年も“聖地”甲子園では数々のドラマが生まれた。広陵・中村が6本塁打、17打点、38塁打と1大会最多記録を軒並み更新したことは記憶に新しい。およそ2週間の大会期間中に日本中を大興奮させる“夏の甲子園”について、英紙「ガーディアン」電子版が特集記事を掲載。「日本のフィールド・オブ・ドリームス:甲子園の栄光目指す高校野球チーム」と題した記事では、日本特派員を務めるジャスティン・マッカリー記者の視点から見た“夏の甲子園”についてリポートされている。

 記事では、甲子園球場について「誰もが認める日本野球の聖地」と位置づけている。その聖地で開催される夏の甲子園は「国営放送NHKが全イニングを生中継し、優勝チームは翌日の新聞一面を飾ることが確実。試合終了後、少なくとも2時間は、日本全体がこのアマスポーツの話題で持ちきりになる」と、日本の国民的行事であるとした。日本国民にとってどれほど重要な大会かを示す上で、春夏の大会会期中は「甲子園を本拠地とするプロチーム阪神タイガースを追い出すほど」だと伝えている。

 世界に誇る王貞治氏やマーリンズのイチロー外野手も甲子園出場経験を持つことにも触れ、「大会が始まった1915年以来、甲子園でユニフォームを着てプレーすることは全高校球児の大志」だと紹介。甲子園の人気を支えるのは伝統と地元愛だという専門家の見解も伝えている。同時に、丸刈りと白を基調としたユニフォーム姿の球児が記者の目には異様に映ったのだろうか、選手たちの姿は「自己犠牲と勤勉、団体行動に見る伝統的な価値を体現した時代を想起させる」とした。

「甲子園に出場し、優勝することは、財を成すより重要視されている」

 また栄光の影で「コーチや年長者から年少の部員がいじめられたり体罰を受けるニュースは少なくない」と指摘。「甲子園までの長い予選を勝ち抜くために、10代の子供たちに堪えきれない心身の負担を強いる、という批判もある」ことも紹介し、現在の在り方に肯定的な意見だけではない事実にも触れている。

 記事内でインタビューに答えているのは、『和をもって日本となす』『イチロー革命』他、日本野球について多数の著作を発表した作家ロバート・ホワイティング氏だ。ホワイティング氏の言葉を借りると、「甲子園に出場し、優勝することは、財を成すより重要視されている。生涯一度のスリルと誇りはかけがえのないもの」「よくなるためには苦労が必要、苦労するほどためになるという哲学がある」「甲子園優勝を重要視するあまり、プロ入りのチャンスをふいにする投手もいる」。まだまだ昔ながらの高校野球のイメージが強いようだ。

 今夏の甲子園では継投策が多く見られたり、エースに連投を強いるチームも減った。笑顔でプレーする選手が多く見られるなど、一昔前の高校野球とは少し違った在り方が見えた。だが、まだそういった取り組みの効果は、海外の記者やメディアが長らく持つ「高校野球像」を変える大きさには至っていないようだ。

 来年は第100回を迎える夏の甲子園。野球大国とは言えないイギリスで、読者は高校野球はどんなイメージで捉えるのだろうか。興味深いところだ。(Full-Count編集部)