◆サッカー男子パリ五輪アジア最終予選兼U―23アジア杯 ▽準々決勝=延長戦15分ハーフ= 日本4―2カタール(25日・ドーハ) 対照的な光景だった。90分間で決着が付かず、両チームの選手たちがベンチ前へと戻ってきた。日本は選手が倒れ込む様子…

◆サッカー男子パリ五輪アジア最終予選兼U―23アジア杯 ▽準々決勝=延長戦15分ハーフ= 日本4―2カタール(25日・ドーハ)

 対照的な光景だった。90分間で決着が付かず、両チームの選手たちがベンチ前へと戻ってきた。日本は選手が倒れ込む様子もなく、自然発生的に輪を作り、その中で、大岩剛監督が選手たちの目を見て、指示を送り、そして、鼓舞していた。

 しかし、前半41分にGKが退場して1人少ない状態で戦ってきたカタールは、まとまって集まる様子もなく、1人、また1人と倒れ込んだ選手を、スタッフがマッサージするなど、見るからに満身創痍(そうい)。一度は逆転しながら、同点に追いつかれたダメージもあったのか、自国開催のホームアドバンテージを受ける余裕もなく、明らかに重苦しい雰囲気だった。

 試合後に指揮官が「自然とああいうふうになったし、選手も目が合ってたので、ハッキリ伝えたいことを伝えたし、選手側がしっかりくみ取ってくれたと思います」と、振り返った冒頭の場面は、“ファミリー”としての一体感を象徴していた。

 転機となったのは、1次L第3戦の韓国戦だった。既に2連勝で準々決勝進出は決めていたが、0―1で敗れて2位通過。悔しさを味わったと同時にチームには批判の声も向けられた。その翌日。主将・藤田を中心に22年3月の「大岩ジャパン」発足後、初めて選手だけで約20分ミーティングを行った。

 選手の中で共有された合言葉は「ファミリー」。韓国戦前の円陣でこのワードを発した副主将の1人のDF内野貴は「(韓国戦前に)ロッカールームに戻ってきたら叩く人なんていないし、全員ファミリーなんで、またここに帰ってこられるから、ピッチに出た時には堂々とサッカーをしようと。選手23人プラス、スタッフの人たちは絶対に仲間だからって話はしました」と振り返る。勝てば五輪王手、負ければ32年ぶりの予選敗退の大一番。延長前半11分にFW細谷の大会初ゴールとなる決勝点などで4―2で勝利し、8大会連続五輪に王手をかけたのも、より強く結束していたあの光景を見れば、必然の結果だったように思う。

 もちろん、1人少ない相手に90分で勝ち切れなかったことや、2戦連続でセットプレーからの失点など課題もあったが、一発勝負の戦いで「大岩ジャパン」が示すチーム力は他国にはない唯一無二の強さ。準決勝、決勝を制し、パリの舞台へ―。まだまだ強くなる姿を見せてほしい。(U―23日本代表担当・後藤亮太)