サッカー日本代表はアジアカップの準々決勝で敗れ、ACLのラウンド16では2つのJリーグクラブが姿を消した。これらの敗退…

 サッカー日本代表はアジアカップの準々決勝で敗れ、ACLのラウンド16では2つのJリーグクラブが姿を消した。これらの敗退には、ある共通点があるとサッカージャーナリスト大住良之は考える。「ヘディングの重要性」を、日本サッカー界は見落としているのだ。

■基本は「ゴールへのおじぎ」

 ヘディングシュートの基本は「ゴールへのおじぎ」である。GKの足元に叩きつければ、GKに当てさえしなければ得点になる確率は非常に高くなる。できれば、GKのポジションの少し手前のグラウンドに叩きつける。「ゴール内のグラウンドを狙え」と指導するコーチもいるが、直接触れることができるボールより、ワンバウンドして跳ね上がってくるボールのほうが、GKははるかに対応が難しい。

「ゴールへのおじぎ」という考え方は、サイドからの速いクロスをニアポスト前、あるいはゴールの枠を外れたエリアからヘディングするときに、より重要なポイントとなる。こうしたボールに対して、Jリーグでは大半の選手がボールを頭の横でとらえ、そして頭を横に振る。その結果、ボールはファーポストの外に逃げていく。そうしたヘディングシュートの失敗を、1試合に1回は見る。

 では、どうしたらいいのか。ボールを額の正面でとらえ、体をひねりながら「ゴールにおじぎ」をするのである。そうすれば、着実にGKの足元を襲うことができる。こうしたヘディングシュートがきたら、GKはボールが自分の足あるいは体を直撃するという幸運を祈るしかなくなる。

リバプールFWの「10年に一度」のプレー

 ゴール前で頭を横に振り、ヘディングシュートを失敗する選手を見ると、私の頭に浮かぶのは、ゴールに「いやいや」をしているというイメージだ。「いやいや」をしたら、ゴールには嫌われる。礼儀正しく「おじぎ」をすれば、ゴールは受け入れてくれるはずだ。

 長いボール、高いボールの処理に関しては、背の高さやジャンプ力ではなく、「落下点の見極め」が8割から9割を占めると、私は考えている。

 長いキックでも、ボールは最後は真下に向かって落ちてくる。その落下点にポジションを占めることができれば、ジャンプしなくても「競り勝つ」ことができる。ポジションを占められなかった選手は、無理やり体をこじ入れたり、のしかかるような形、すなわちファウルをするしかなくなるのである。

 最近見たプレーで最も驚嘆したのは、2月17日に行われたイングランドのプレミアリーグ、ブレントフォード対リバプール戦の1シーンだ。前半35分、自陣ハーフライン手前でのブレントフォードのFKをGKが蹴り、リバプールのペナルティーエリアに送る。こぼれたボールを、エリア内からリバプールDFフィルジル・ファンダイクが相手陣に向かって大きくクリアする。

 自陣のセンターサークル手前からこのボールを追ったのが、リバプールのFWディオゴ・ジョタだった。左斜め前に全力疾走しながらハーフラインあたりから上空を見上げてボールの落下点を見定め、落ちてくるまでボールをしっかりと見定めて、走りながら上空を見上げた姿勢のままでヘディングで右にボールを流したのだ。

 そこには自陣ペナルティーエリア前から全力で駆け上がってきたFWダルウィン・ヌニェス。ドリブルで進むと、GKが前進したのを見て美しいループシュートで先制点を奪った。ヌニェスのシュートも見事だったが、頭上を越えてきたボールを正確に頭でつないだジョタのプレーは、10年に一度見ることができるかどうかの見事なものだった。

■大事なのは身長よりも「見極める」能力

 ロングボールへの対応には、何よりも落下地点を見極め、相手選手より早くそのポジションを占めることが重要だ。しっかりとポジションを占めていれば、相手がどんなに長身で、ジャンプ力があっても、負けることはない。日本代表の遠藤航は身長178センチ。現代のサッカー、とくにプレミアリーグでは「長身」とは言えない。それでもヘディングの競り合いで勝てるのは、相手より早く落下点にポジションを取ることができるからだ。

 だが、多くのコーチ、多くの選手は、ヘディングの競り合いの能力は、身長やジャンプ力で決まると考えている。もちろん、落下地点の見極め能力に差がなければ、長身の選手、ジャンプ力のある選手が有利になるのだが、誤った指導により、小柄な選手たちは最初からヘディングの競り合いで勝つことなどあきらめている傾向がある。

 プロ野球の外野手は、バッターが打った瞬間に落下地点に向かって全力疾走し、ボールが落ちかけるタイミングを見計らって初めてボールを確認し、キャッチの態勢に入る。それは生まれ持った能力ではなく、間違いなく訓練によって培われた能力である。

 ロングボールに対するヘディングの能力を開発していくには、サッカー選手にも同様の訓練が必要なのではないだろうか。たとえば、コーチがテニスボールをラケットで高く打ち上げ、キャッチするような訓練を、小学生時代に定期的にしていったら、野球の外野手のような能力が伸びるのではないか。

 ヘディングのさまざまな要素について、日本のサッカーはもう少し真剣に考え、取り組みをする必要があるように思う。

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