所変われば品変わる、と言う。取材で世界各国を訪れる蹴球放浪家・後藤健生にとっては、当然のことだ。また、郷に入っては郷に…
所変われば品変わる、と言う。取材で世界各国を訪れる蹴球放浪家・後藤健生にとっては、当然のことだ。また、郷に入っては郷に従え、とも言われる。サッカー取材においても、同じことが言えるのだ。
■「直接聞けばいい」
まあ、僕にとってはそれほど重要な試合ではないので選手の名前が分からなくても問題ありませんし、現地新聞の予想記事は持っていました。「先発予想」は現実と違っていましたが、控え選手の名前と背番号も載っているので、ピッチ上の選手と照合すれば誰が誰だか分かります。
なにしろ、南華(サウス・チャイナ)は当時の香港最強チームでしたから、GKの黄文財やDFの頼羅球、余国森、MFの黄国安、FWの巴貝利(英国系)など香港代表選手もたくさんいました。
しかし、現地記者たちはメンバー表がなくて不便じゃないのでしょうか?
すると、「知りたければ、ロッカールームに行って、監督かコーチに直接聞けばいい」というのです。つまり、記者は試合前にロッカールームに入ってもいいようなのです。
■ロッカールームで取材
もっとも、アメリカ合衆国では試合後にロッカールームで取材するのは普通のことのようです。
ベースボールのMLBでも、アメリカン・フットボールのNFLでも、バスケットボールのNBAでも、アイスホッケーのNHLでも、記者たちはロッカールームに入って、シャワーを浴びたり着替えをしている選手にインタビューするのが普通の光景です。
今から40年ほど前までは、女性記者はロッカールームに入れなかったのですが、訴訟が起こされて女性記者にもロッカールーム内に入る権利が認められました。
南米でも、ロッカールームで取材ができます。
2001年4月に観戦したボカ・ジュニアーズ対リーベル・プレートの「スーペル・クラシコ」の記者証には記者席の座席番号(SECTOR D 219)とともに、「ZONA VESTUARIOS」と書いてあります。「VESTUARIO」というのがスペイン語で「ロッカールーム」のこと。
つまり、このチケットを持っていればロッカールームに入れるのです。
■日本にもあった古き良き時代
僕は、ロッカールームに入って選手にインタビューするつもりなどありませんでしたが、記者席のチケットを申請したら、こういうチケットをもらったのです。
せっかくですから、記念のためにちょっと覗きに行ってみることにしました。たしかに、選手たちが裸でウロウロしている中で、顔見知りの記者たちが選手の話を聞いています。
僕はスペイン語は多少分かりますから、記者会見のような公式の場での発言なら、半分程度は理解できます。ただ、ガヤガヤした中で、裸の選手が知り合いの記者相手にボソボソしゃべっているのを聞いていても、ほとんど理解できません。ですから、早々にロッカールームは引き揚げてきました。
そういえば、僕がサッカーを見始めた1960年代の日本サッカーリーグ(JSL)や天皇杯では、まさに出入り自由でした。
当時の僕は、もちろん記者なんかではなく、ただの中学生、高校生でした。
それなのに、勝手に記者席に座って試合を見ていましたし、試合後のロッカールームに入って行って選手のサインをもらったりしていたのです。なんと大らかな、古き良き時代だったのでしょう。