10月29日に開幕した「WTTチャンピオンズ フランクフルト」<11月5日・男女シングルス決勝>の大会2日目。日本勢は早田ひな(日本生命/世界ランク5位)を筆頭に篠塚大登(愛知工業大学/33位)、張本美和(木下アカデミー/14位)、平野美宇…

10月29日に開幕した「WTTチャンピオンズ フランクフルト」<11月5日・男女シングルス決勝>の大会2日目。

日本勢は早田ひな(日本生命/世界ランク5位)を筆頭に篠塚大登(愛知工業大学/33位)、張本美和(木下アカデミー/14位)、平野美宇(木下グループ/17位)が1回戦に登場し、張本美和と平野はいきなりの日本人対決で火花を散らした。

結果は早田が地元ドイツのシャン・シャオナ(34位)にゲームオールで勝利。

篠塚はTリーグで対戦経験のあるピッチフォード(イングランド)にゲームカウント1-3で敗れ、張本美和と平野は序盤リードした平野を張本が追い上げて3-1で勝った。


早田ひなvsシャン・シャオナ PHOTO:World Table Tennis

大会2日目は地元ドイツのシャン・シャオナと早田の女子シングルス1回戦で幕を開けた。

ラケットの片面のみに表ソフトラバーを貼るペンドライブのシャンはやりにくい相手。早田も第1ゲームから思い切りのいいフォアドライブやスマッシュ、表ソフト特有のナックル性のブロックなど変化に富むボールに翻弄された。

それでも先にゲームポイントを握ったのは早田。ところがシャンにバック側を徹底的に突かれた早田はこのゲームを11-13で落としてしまう。

しかし、第2ゲームはサーブからの展開で早田が主導権を握り11-7で取ると、第3ゲームも11-5で奪った早田に流れが傾いたかに思われた。
 
ところが第4ゲームに入るとシャンが反撃。再び早田のバック側を狙ってミスを誘い8-11でゲームオールに追いついた。

「表(ソフト)でペンっていうのもあって、(ラケットの)面の開き具合とか(ボールの)当たり具合によって、ちょっとナックルが強かったりボールが跳ねたりしました。自分が1球ずつ調整しないといけない部分が多くて、いつもだったらもっと細かくコースや回転量を調整できるのに自分のボールが相手に狙われることが多くなってしまった」


早田ひな PHOTO:World Table Tennis

そう話す早田は最終の第5ゲームに入る際、ベンチの左俊斉コーチと「相手のいろいろな質のボールに対し、自分からタイミングを変えたり回転量を変えたりするのはすごく大事だよねって話をして、コースを変えることも意識した」と明かす。

ちなみに早田のベンチは前戦WTTコンテンダーアンタルヤでも名コンビの石田大輔コーチではなく岡雄介トレーナーが入っていた。その狙いを早田本人はこう説明する。

「違う方向からのアドバイスをもらったりして、すごくいい勉強になりますし、オリンピックや世界卓球の大きな舞台でいつもと別の人に入ってもらうこともあると思う。そういうのを想定して試合をやっていかなきゃいけないし、その中で自分自身がブレないものを持ちたい」

最終ゲーム、シャンのペースに飲まれないよう体勢を立て直した早田は一気に7-0までリードを広げると、追いすがるシャンを突き放し、最後は11-5で接戦を締めくくって勝利を挙げた。

だが、ゲームオールに持ち込まれた試合を「危ない試合」と位置づける早田。

「苦しい状況でも狙った場所に打てたり、出したい質のボールを打てたり、そういう究極のレベルを目指していかないといけない。自分の実力はまだまだ」とさらに高い次元を見据えていた。

その早田は11月1日の女子シングルス2回戦で張本美和と対戦する。


張本美和 PHOTO:World Table Tennis

これまで何度も早田に立ち向かい跳ね返されてきた張本は、「いつも(試合を)やるたびにちょっと手応えはあるんですけど勝ちに繋がらないので、今回は勝ちに繋げられたらと思う。しっかり準備をして頑張りたい」と言う挑戦者の立場。

しかし、15歳にしてWTTチャンピオンズに初出場し、世界ランキングも14位まで上げている脅威の超新星はあちらこちらで賞賛を浴びる。

この状況を本人はどう捉えているかといえば、「15歳といっても、選手の皆さんの多くが二十何歳で、自分はその半分は越えている。15歳という実感がない感じで聞いているのであんまり気にしていないです」と涼しい顔だ。

さらに「(卓球台が)1台だけで、たくさんの観客の方がいる中での試合がすごい好き」と笑顔を見せる強心臓ぶり。

Tリーグの木下アビエル神奈川のチームメートで普段から一緒に練習をしている平野に勝った要因については、「ひとつではないんですけど、戦術の切り替えが良かったと思います。相手を見て、変えるべき場面と変えない場面をしっかり判断できた。変えるにしても同じことをやるにしても、やっぱり自分で自信を持ってやることが一番」と分析した。

対する平野は第1ゲーム、持ち前の両ハンドドライブやフリックなどで積極的に攻撃を仕掛けた他、よく止まるストップで緩急をつける見事なパフォーマンスを見せたが、第2ゲームは本人が「何本かフォアのチャンスボールをミスしてしまった」と話すように、ここでやや流れが変わった。


平野美宇 PHOTO:World Table Tennis

そして第3ゲームの競り合いを11-13で落とすと、「4ゲーム目の出足、3ゲーム目を少し引きずってしまって、頭の切り替えが遅かった」と悔しそうな表情。

しかし、パリ五輪代表選考レースで2番手につける平野の目標は女子シングルス代表の2枠に入ること。

「11月の選考会(2023全農CUP大阪大会/11月25〜26日)と全日本選手権(2024年1月22〜28日)でオリンピックの代表が決まる。まずは選考会で全力を尽くして優勝を目指す気持ちで戦いたい」と自身を奮い立たせていた。


(文=高樹ミナ)