10月26日に開催されるプロ野球ドラフト会議。さまざまな選手がプロへの扉を開く日に、ルートインBCリーグからも指名があるのか。 9月には、同リーグのドラフト候補を集めたBC選抜チームが、NPBファームチームと試合を行なった。9月15日は巨…

 10月26日に開催されるプロ野球ドラフト会議。さまざまな選手がプロへの扉を開く日に、ルートインBCリーグからも指名があるのか。

 9月には、同リーグのドラフト候補を集めたBC選抜チームが、NPBファームチームと試合を行なった。9月15日は巨人の三軍と、9月21日にはDeNAの二軍と、そして遠征での9月25日~28日にはソフトバンクの四軍と対戦。それらの試合で、多くのスカウトの関心を集めた選手たちを紹介する。



●伊藤琉偉(いとう・りゅうい)21歳・内野手

東京農業大(中退)→新潟アルビレックスBC

180cm 77kg 右投右打

 BCリーグの村山哲二代表、BC新潟の橋上秀樹監督も守備を絶賛する内野手。リーグ開幕後にチームに入団して5月31日に選手契約を勝ち取ると、あっという間にショートのレギュラーに定着した。堅実な守備を見せるだけではなく、長打・単打と広角に打ちまくり、8・9月は打率.397 本塁打2 打点18 盗塁3で、北地区野手部門で月間MVPを獲得。首位を猛追するチームの勝利に大きく貢献した。

 打力も目を引くが、最も自信があるのは「守備です」と胸を張る。ポジションは主にショートだが内野はどこでも守れて、大学時代に経験があったという外野も守れる。どこの守備にも「不安はない」というユーティリティ性は強みのひとつだ。

 大学を中退した時には独立リーグのことは頭になかったが、BC新潟を紹介されてBCリーグの扉を叩いた。その際、BCリーグの村山代表はこう言ったという。

「野球が好きか? 俺も勉強はできなかったけど、野球が大好きだから今は野球の仕事ができている。野球を大好きになって、全力で野球をすればいい」

 野球に全力で打ち込める環境を得て、伊藤はその才能を発揮した。目指す選手はシカゴ・カブスの鈴木誠也。NPBのファームとの対決を経験し、今後はパワーをつけていくという課題も見つかった。

 複数球団が興味を示しているが、チームは来季のNPB二軍の試合に参加することが内定しているだけに、育成指名よりはBC新潟でイースタンを戦うほうを選ぶ可能性がある。果たして、支配下指名はあるのか。


●金子功児(かねこ・こうじ)20歳

 内野手

光明相模原高→埼玉武蔵ヒートベアーズ

176cm 77kg 右投左打

 6月のBC選抜vs日本ハムの試合で本塁打を放つなど、存在感を見せた高卒2年目の内野手。夏場に調子を落としたが、チーム唯一の全試合フルイニング出場を果たした。

 BC埼玉がリーグチャンピオンシップへと進出したため、合間に選抜戦に出場しながら移動を重ね、独立リーグのグランドチャンピオンシップまでフル出場。準決勝では脚を負傷するも、坊っちゃんスタジアムで本塁打を放った。

 ホームランバッターではないが、今年は「振る力」を課題に、オフにウエイトトレーニングで力をつけた。速球に負けずにバットを振れるようになり、長打も増えて飛躍のシーズンとなった。

 自信があるのは「肩」で、BC選抜でサードに入った時も、一塁へのストライク送球で肩をアピールした。シーズン29失策はリーグワーストだが、ほとんどがファンブルなどの凡ミスで、BC埼玉が練習グラウンドを持たないことも関係しているかもしれない。もともとは投手兼任で、内野手専門になってから日が浅い。足の運び、グラブさばきなどのセンスがあるのは感じるだけに、練習次第で安定するはずだ。

 高卒1年目の昨季は、チーム事情からレギュラーで試合に出続けたが、打撃も守備もうまくいかず、「なんでこんなこともできないんだろう」「早くシーズンが終わらないかな」と嫌になったという。そこから、今季はドラフト候補となったが、「伸びしろがある部分は、全部です」とさらなる成長を期す。

 元楽天の片山博視コーチ、今季限りで現役を引退する元ロッテの清田育宏にアドバイスを受け、「野球人生の経験値が上がった」この2年。エリート街道ではない険しい道が、金子をたくましく育てている。



●尾田剛樹(おだ・ごうき)23歳・外野手

大阪観光大学→栃木ゴールデンブレーブス

175cm 74kg 左投左打

 50m5秒9という俊足で、守備範囲の広さが武器の外野手。一塁到達タイムは3.7秒台で、三塁打のタイムは11.8秒を計測する。

 大学時代は主に3番ライトだったが、BC栃木1年目の今季は全65試合を1番・センターで出場した。開幕当初こそ、BCリーグの投手への対応に苦慮したが、修正して自分のバッティングができるようになると波に乗った。

 8月に一度は調子が落ちたが、後半戦では修正。盗塁数も32を記録して、BCリーグ南地区の盗塁王(リーグ全体では1差の2位)に輝いた。他にも、得点はリーグトップ、安打数は3位と好成績。9月のBC選抜戦では全試合に出場し、そこでも盗塁を記録。長打も放って打力と足をアピールした。

 BC栃木は練習設備が整っていて指導者の数も多く、NPBを目指すにための環境が充実している。BCリーグの中では随一のレベルだ。尾田も寺内崇幸監督(元巨人)、飯原誉士コーチ(元ヤクルト)の指導を受け、打撃のタイミングの合わせ方や走塁技術が向上したという。

「特に盗塁に関しては、最初は牽制死や盗塁死があったんですが、技術をイチから見直して成長できたと思います。以前は"戻る"ことに対しての意識が強かったんですが、アドバイスをいただいて、『100%スタートを切るという気持ちの中で、牽制が来たら戻る』という考えに変わりました。それからスタートもスムーズに切れるようになりましたし、リードの大きさが変わったと思います」

 チームメイトである川﨑宗則(元ソフトバンク、ブルージェイズ他)にもアドバイスを受けているようで、「野球の考え方などいろいろ教えていただけて、すごく勉強になる」と、技術面だけでなく知識や精神面の向上にも繋がっているという。

 目指す外野手像は、近本光司(阪神)や大島洋平(中日)だ。独立リーグ内での能力は折り紙つき。今年に指名されるかはわからないが、「NPBに向けては、まだ体も全然細いので、体作りから見直したい」と今後も見据えている。



●日渡騰輝(ひわたり・とうき)19歳・捕手

霞ケ浦高→茨城アストロプラネッツ

174cm 84kg 右投左打

 高卒1年目で開幕からマスクを被った捕手。霞ケ浦高校からはNPBを目指さず、BC茨城に入るためにプロ志望届を出した。ポップタイム(捕手が盗塁を阻止するために目安として計測される時間)は1.95秒前後をコンスタントに出す。勝負強いバッティングも印象的で、BC選抜でもタイムリーを放つなど打撃をアピールした。

 BC茨城の色川冬馬GMは、選手時代は5カ国でプレーし、引退後はイランやパキスタンなどさまざまな国で代表監督を務めた異色の経歴を持つ。海外のトライアウトチームを主宰するなど、海外への"窓口"のような存在となっており、外国人選手も含めた素材を見つけ出して育成する術に長けている。

 選手たちには、「若いうちこそ無理をする時」と試合後にもウエイトトレーニングを課す。ただ体重を増やすのではなく、意識も含めたマインドセットを施し、各々に必要なものを理解させた上でのフィジカル作りに力を入れる球団だ。高卒ルーキーの日渡も「自分は体重を増やすのではなく、体脂肪率を減らして筋量を増やす体作りをしました。ウエイトは試合後でも毎日しています」と語る。

 チームに多い外国人投手とのやりとりは「なんとかジェスチャーでこなした」と言い、150キロ級の投手たちを相手にマスクを被り続けた。シーズン途中にはホセ・コリーナ捕手(元メッツ3A)が入団し、支配下期限の7月末まで在籍したが、コリーナからも技術を教わった。普通の高卒ルーキー捕手にはあり得ないような経験を、独立リーグの1年で積んできた。

 送球難な時期もあって苦しんだが、少しずつ修正して8月頃には安定した送球ができるようになり、BC選抜の試合では落ちついた送球で肩をアピールできていた。目指すは、「森友哉さんのような打てる捕手」。スケールの大きな捕手になっていくことを予感させる19歳だ。



●(あしだ・たけと)24歳・投手

国士館大→オールフロンティア→埼玉武蔵ヒートベアーズ

185cm 88kg 右投右打

 大学の投手に逸材がひしめく中、独立リーグからの投手指名は厳しくなることが予想されるが、レベルの高い投手はいる。BCリーグの中でも評価が高い投手のひとりである芦田は、最速153キロのストレートが魅力。シーズン前のオープン戦でいきなり151キロを出し、国士館大、社会人時代も無名だった投手が、独立リーグの舞台で脚光を浴びることとなった。

「一日に米9合」という食事量も才能のひとつ。堂々たる体躯を生かして投げ下ろすストレートは球威十分だ。得意の変化球はツーシームで、二種類のフォークも有効に使う。シーズン終盤は、ストレートの球速を上げるよりも変化球の質を上げることに注力していた。

 昨年12月からは月に一度、中学生からプロ野球選手まで多くの投手を指導する酒井竜矢さんから指導を受けている。フォームを確認し、ラプソード(投球の回転数や回転軸、縦横の変化量などを数値化できるデジタル機器)で変化球もチェックしながら調整する。個人的なルーティンにしている初動負荷トレーニングは5年目だ。

 夏場に調子を落としたが、再度トレーニングと走り込みで自らを追い込んだことが功を奏した。元NPBのコーチ陣からの指導もあり、マウンドでのメンタルも向上。今季最後の登板となったグランドチャンピオンシップ準決勝では、自己最速を更新する153キロを記録した。

 明るい性格でコミュニケーション能力もある。人を巻き込んで場を盛り上げる力が、リーグ優勝を果たしたBC埼玉の団結にひと役買ったことは間違いない。

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 独立リーグでは球団によってチームや個人の個性も色濃く出る。その選手の能力や個性がどう発揮され、どう伸びていくのかという物語も独立リーグの楽しみ方のひとつだが、そこからNPBへと羽ばたく選手が現れることを期待したい。