チーム事情から見るドラフト戦略2023〜西武編 プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月26日に開催される。今年の傾向を見ると、今までにないくらい大学生投手に逸材が集まっている。数年後のチームの運命を決するドラフト。さて、各球団どのよう…

チーム事情から見るドラフト戦略2023〜西武編

 プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月26日に開催される。今年の傾向を見ると、今までにないくらい大学生投手に逸材が集まっている。数年後のチームの運命を決するドラフト。さて、各球団どのような戦略に出るのか。今回は2ケタ投手3人を輩出しながら5位に終わった西武のドラフトを探りたい。



身長188センチの大型右腕、専修大の西館昂汰

【将来のクリーンアップ候補】

 優勝したオリックスに22.5ゲーム差をつけられての5位──。2年目左腕の隅田知一郎があと1勝していれば、高橋光成(10勝)、平良海馬(11勝)、今井達也(10勝)との「10勝カルテット」が結成されていたほどの投手力がありながら、この順位に終わったのは、ほかの投手たちが実力どおりの仕事ができなかったことも理由のひとつだが、やはり打線だろう。

 山川穂高がコンディション不良や知人女性への暴行容疑で書類送検され、ほぼシーズンを棒に振った。そのため一発の恐怖がある打者が中村剛也しかいなくなったことで、相手バッテリーにプレッシャーをかけることができなかったのが、今季の西武打線だ。チーム本塁打数(90本)、チーム総得点(435点)はともにリーグ最少だった。

 今年のドラフトは史上稀に見る大学生投手の人材豊富な年。ならば「投手で!」となりそうなところだが、シーズン後半にファームで宮川哲、田村伊知郎が来季の台頭を予感させるピッチングを見せており、チーム事情的には将来的にクリーンアップを担える人材を指名するのも"手"ではないか。

 本来なら、「おかわりくん(中村剛也)」の後継者として高校通算140本塁打の佐々木麟太郎(花巻東/184センチ・113キロ/右投左打)を獲得したかったが、プロ志望届は提出せず、アメリカの大学に進学するという。

 佐々木のように規格外の飛距離とスター性を持った選手はなかなかいるものではないが、将来のクリーンアップを任せられる打者なら東京六大学にいる。廣瀬隆太(慶應大/内野手/182センチ・91キロ/右投右打)と上田希由翔(明治大/内野手/182センチ・90キロ/右投左打)だ。

 右打ちの廣瀬は、想定外のボールでもタイミングさえ合えば豪快な遠心力打法でスタンドに放り込むホームランバッター。左打ちの上田は、ライナー性の打球で長打が打てる。昨年の西武ドラフト1位の蛭間拓哉(早稲田大)とともに「六大学のスター」がライオンズ打線を彩るのも悪くない。

【主力投手のFA流出問題】

 とはいえ、西武には頭の痛い問題として、今季のチームを支えてきた先発投手陣のFA問題があるのを忘れてはならない。高橋、今井、平良の3人がいつチームを離れてもいいように、今年のような人材豊富な年に備えておくことも必要だ。

 同じ「西館」でも西館昂汰(専修大/188センチ・92キロ/右投右打)は、中央大の注目投手・西館勇陽(185センチ・80キロ/右投右打)に匹敵するポテンシャルの持ち主だ。アベレージ145キロ前後の速球で力勝負を挑みそうなタイプだが、場面によってはツーシームとフォークを駆使して相手打者のバットの芯を外す投球もできる先発型だ。

 社会人なら、松本健吾(トヨタ自動車/180センチ・80キロ/右投右打)。大学(亜細亜大)、社会人と常勝チームで投手陣の主軸を務めてきた経験値が高い実戦力となっている。コンスタントに145キロ前後をマークするストレートと、スライダー、カットボール、フォークなどの多彩な変化球とのコンビネーションでゲームをつくる先発タイプ。

 考えてみれば昨年のドラフトで、1位に蛭間、2位で古川雄大(佐伯鶴城高/外野手)、3位で野田海人(九州国際大付高/捕手)と、上位3人は野手を指名した。ならば、より投手が必要だ。

 もちろん、上位でもしっかり注目の投手を獲得するとは思うが、さらなる厚みを持たせるためには下位指名の選手が重要になる。たとえば、昨年4位指名の青山美夏人(亜細亜大)は、今季中継ぎとして35試合に登板するなど、一軍の戦力として十分な働きを見せた。そんな青山のような活躍が期待できる投手が、今年の候補のなかにいるのか。

 4位以下で獲得できそうな投手だが、大学なら谷脇弘起(立命館大/185センチ・85キロ/右投左打)、津田淳哉(大阪経済大/178センチ・83キロ/右投右打)、社会人なら古屋敷匠真(セガサミー/178センチ・90キロ/右投右打)、粂直輝(東芝/179センチ・80キロ/右投右打)と粒揃い。

 とりわけ谷脇はスライダーのバリエーションで勝負する平井克典タイプ。またサイドハンドの粂は、森脇亮介がトミー・ジョン手術で戦線離脱のなか、貴重な戦力になれるだけの投手と見ている。

 ファームを見ると、右打ちの野手がいないに等しい。高橋隆慶(中央大/外野手/186センチ・93キロ/右投右打)と高野颯太(島根・三刀屋高/外野手/179センチ・90キロ/右投右打)は、ともに強引なほどのフルスイングから強烈な打球を飛ばす。粗削りだが、最大値の大きさにかけるなら適役だろう。