卓球のTリーグ2023-2024シーズン開幕戦が各地で相次ぐ中、男子新規参入チームの金沢ポートも8月12、13日にホームマッチ初戦を終えた。市の中心部にある金沢市総合体育館で迎えた初日は入場者数1,197人。2日目も585人を集める盛況ぶり…

卓球のTリーグ2023-2024シーズン開幕戦が各地で相次ぐ中、男子新規参入チームの金沢ポートも8月12、13日にホームマッチ初戦を終えた。

市の中心部にある金沢市総合体育館で迎えた初日は入場者数1,197人。2日目も585人を集める盛況ぶりで、まだ実績のない新チームとしては異例の観客動員を記録した。

この数字は例えば、卓球界の若きスター・張本智和(智和企画)擁する昨季王者の琉球アスティーダと、その前のシーズンを制した木下マイスター東京との開幕戦の入場者数1,378人に引けを取らない。

要因は金沢ポート独自のチケット販売方法にある。Tリーグのチケットはインターネット販売が中心だが、金沢ポートは"手売り"が中心。

チームの事務局がある老舗卓球専門店「清水スポーツ」の地元に根づいたネットワークにより、フェース・トゥ・フェースのチケット販売や口コミが拡がりを見せた。

さらに石川県七尾市出身のキャプテン松平健太(ファースト)の実家である卓球用品店「松平スポーツ」の援護射撃も大きい。その効果について、新チーム率いる西東輝監督兼社長はこう語る。

「普通に卓球用品を買いに来られたお客さんに、店頭でTリーグの試合があることと金沢ポートというチームが誕生することを周知できたのが非常に大きかったです。また、僕らがタッグを組んでいる卓球専門メディアRallysさんの発信力や地元出身のチームスタッフが昼夜を問わず駆け回ってポスターを貼ったりしてくれたおかげでもあります」

チームのメンバー集めも地域密着にとことんこだわった。

選手9人のうち6人が石川県出身もしくは金沢市内にある卓球の名門校・遊学館高校出身で石川県ゆかりのメンバー中心に構成されている。

もちろん西東監督も石川県出身。遊学館高校から北陸大学に進み卓球で名を挙げた後、清水スポーツ代表取締役社長や石川県卓球連盟の理事として地元の卓球振興に貢献してきた。

あいにくホーム開幕2戦は初日が岡山リベッツにマッチカウント2-3、2日目は同じく新規参入チームの静岡ジェードにマッチカウント1-3で敗れたが、予想を超える数の地元ファンを目の当たりにした西東監督は、「胸が一杯になりました。今回、勝つことはできなかったけれど、石川県の皆さまに見せたかった僕らの卓球、石川県を背負ったチームの熱い卓球を存分に見せられたのかなと思います」と感激もひとしお。

そんな金沢ポートの地域色は演出にも表れた。オープニングセレモニーで披露された和太鼓は印象的で、輪島をはじめ県内各地で盛んな伝統芸能が金沢に芽吹いた卓球チームの船出を派手に盛り上げた。

試合中の応援も新チームとは思えないほど盛大だった。32歳の最年長キャプテン・松平健太も「たくさんの声援の中でプレーできてすごく幸せ」と、家族や親戚も駆けつけたホーム開幕戦の喜びを噛み締めた。

ちなみに松平が石川県で試合をするのは中学1年生の夏以来で、「まさかまた地元に戻り石川県を背負ってプレーするとは思ってもいなかったので不思議な感じだし、実現できて楽しい」と話す。

加えて、開幕戦前夜には自身の思いをSNSで発信しようとしたが、いつも通り試合に臨もうと思いやめたエピソードも。そこには「地元でプレーできる喜びとプレッシャーの中で戦うことになると思いますが、全力でプレーします」と綴ろうとしたという。

松平と同じように初年度からTリーグに参戦し、今季で6シーズン目を迎えた岡山リベッツの丹羽孝希(スヴェンソンホールディングス)も金沢ポートについて、「1000人以上のお客さんが来てくれてすごく盛り上がって、アウエーマッチだったけどすごく嬉しい」と語り賛辞を贈った。

金沢ポートは今週末、小松総合体育館で19日に琉球アスティーダ、20日に木下マイスター東京を迎えホームマッチを開催する。


(文=高樹ミナ)