ともに王者との大一番を制したクロフォード(左)と井上(右)。この両雄に対する議論は尽きない。(C)Getty Images 35歳の最強ファイターが世界中のボクシング・ファンや識者たちを唸らせた。 現地7月29日に米ネバダ州ラスベガ…

ともに王者との大一番を制したクロフォード(左)と井上(右)。この両雄に対する議論は尽きない。(C)Getty Images

 35歳の最強ファイターが世界中のボクシング・ファンや識者たちを唸らせた。

 現地7月29日に米ネバダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナで行われたボクシングの世界ウェルター級4団体王座統一戦で、WBOスーパー王者のテレンス・クロフォード(米国)が3団体統一王者エロール・スペンスJr.(米国)を撃破。9回TKO勝ちという議論の余地のない結果を残し、史上初となる2階級での4団体統一をやってのけた。

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 超人的なパフォーマンスで「史上最強の難敵」を飲み込んだ。序盤から巧みなコンビネーションで決定打を炸裂させ、主導権を握ったクロフォード。そして試合が進むにつれて、防戦一方を尻目に攻勢を強めた35歳は、2度のダウンをもぎ取って迎えた終盤の9回に会場を熱狂させた。

 すでに出血も見られ、顔も腫れあがっていたライバルにクロフォードは強い右のジャブを小気味よく繰り出して後退させる。そして2分過ぎに右フックでぐらつかせると、すかさずラッシュを展開。スペンスJr.がロープを背に防戦一方になり、レフェリーストップがかかった。

 衰えぬパワーと身体能力をまざまざと見せつけた。試合後にスペンスJr.が「言い訳はしないよ。俺のタイミングが今日は良くなかった」と吐露したように、この日のクロフォードは圧倒的だった。

 クロフォードが世界最強たる所以を見せつけた試合後には日本が生んだモンスターとの論争も話題となった。今月25日に4階級制覇を達成したばかりの井上尚弥(大橋)とのパウンド・フォー・パウンド(PFP)1位はどちらなのかを巡る議論である。

 戦前の時点では、強敵スティーブン・フルトンを8回TKOで沈めた井上が上位という見方をする識者やメディアは少なくなかった。米メディア『Sporting News』のアンドレアス・ヘイル記者は「イノウエのフルトン戦での破壊力を考慮すれば、(クロフォードvsスペンスJr.の勝者)の1位は確実ではない」と指摘していた。

 しかし、クロフォードの圧勝劇は世間の雰囲気を変えた。米スポーツ専門局『CBS Sports』は「ほんの数日前、イノウエがスーパーバンタム級に転向し、絶対王者であるフルトンを圧倒したことで、“地球上最強”の論争に終止符が打たれたかに思われた」と試合前の風潮を記したうえで、史上初の偉業をやってのけた35歳を絶賛した。

「フルトンはたしかに素晴らしい戦士だが、スペンスの方が上だ。そうしたなかで、イノウエが印象的であったのと同様に、クロフォードは非常に印象的だった。これによってクロフォードが1位ではないと言うのは難しくなった。

 イノウエはフルトンを無力化して、凌駕もした。そして新階級でタイトルも獲得した。その事実は明らかに素晴らしいものだが、スペンスに対するクロフォードのパフォーマンスは、この時代、いやどの時代においても、ベストバウトのひとつに数えられるほど図抜けていた」

 ともに難攻不落の王者を相手に完勝を収めた井上とクロフォード。PFPの議論は尽きなそうだが、両雄ともに現役最強に相応しい好戦を演じたのは間違いない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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