サッカー女子ワールドカップが開幕し、日本代表はザンビアから5点を奪って好発進した。この初戦白星が持つ意味、この先の道の…
サッカー女子ワールドカップが開幕し、日本代表はザンビアから5点を奪って好発進した。この初戦白星が持つ意味、この先の道のりにおける重要性を、サッカージャーナリスト・後藤健生がひも解く。
■「もっと取れたのではないか」
FIFA女子ワールドカップがいよいよ開幕。女子日本代表(なでしこジャパン)は、7月22日に行われた初戦でザンビア代表相手に5対0と完勝。大会初戦としてはパーフェクトに近い内容の試合だった。
もちろん、対戦相手のザンビアはFIFAランキングが77位。11位の日本にとっては明らかな“格下”だった。とくに、女子サッカーの場合は男子以上にランキングによる戦力差が大きい。
だから、勝利したこと、あるいは5点差をつけたこと自体は当然と言えば当然の結果だった。
もちろん、世界大会の初戦なのだから「勝利」、「勝点3」という結果こそが大事なのではあるが、それ以上に高く評価したいのは試合内容が非常に良かったことだ。
この試合を見た何人かの人から「もっと取れたのではないか」という意見を聞いた。
それは僕も同意見だ。
もし、日本が「その気」になって大量得点を狙う戦い方をしていたら、8点とか9点を奪っていても不思議はない。それくらいの戦力差はあった。
だが、そもそも、日本代表は最初から大量得点などを狙って戦ったわけではないのである。
■素晴らしかったサイド攻撃
ザンビア戦で素晴らしかったのは、サイド攻撃だった。
ストッパーからウィングバックにボールが送られ、セントラルMFがサポートし、シャドーストライカーとの連係でサイドを崩してクロスを入れる形だ。
昨年の夏に、池田太監督は日本女子代表としては初めてスリーバックに切り替えた。当初はぎくしゃくした印象を受けたが、試合経験を重ね、2023年に入ってからはスリーバック(3-4-2-1)が機能し始めた。
ザンビア戦でも、序盤戦では2分にボランチの長谷川唯がペナルティーエリア奥まで走り込んだり、6分には縦につないで田中美南がシュートを放ったり、縦に攻める形を使ったが、その後はサイド攻撃を徹底した。
21分にFKから田中が決めたものの、VARが介入してゴールが取り消された場面があったが、そのFKもタッチライン沿いで藤野あおばがドリブルで仕掛けたことによって獲得したものだった。
ちなみに、この場面、映像で見るとたしかに遠藤純がFKを蹴った瞬間に田中はオフサイドの位置にいたが、あのオフサイドはVARがなかったら絶対に取られることはないオフサイドだっただろう(その後の2回のVARによるオフサイド判定は、VARがなくても間違いなくオフサイドだったが……)。
そして、43分に生まれた先制ゴールもサイド攻撃からのものだった。
タッチライン沿いでウィングバックの清水梨紗が長谷川につないだ瞬間、タッチライン際にポジションを取った藤野がボールを要求。長谷川がバックスピンをかけたボールを送ると、藤野が左足アウトサイドを使ってワンタッチでコントロール。ボールのスピードを殺さずに前に運んで、完璧なクロスを入れる。そして、ボールがバウンドするところを宮澤ひなたが正確にとらえて決めた。
ウィングバックとシャドーの選手が、タッチライン際と内側のラインを使い分け、そこにセントラルMFがサポートして崩す場面が何度も見られたが、この先制ゴールはそれが見事に噛み合った形だった。
■慎重に戦った理由
こうして、日本はサイドからのクロスの形を何度も作っていたが、問題はクロスに対して飛び込んでいく人数が少なかったことだった。クロスに対して、ワントップの田中、逆サイドのシャドーだけでなく、逆サイドのウィングバックやボランチが関わっていければ、得点チャンスは倍増するはずだ。
先制ゴールの場面でも、中央にいたのは宮澤ただ一人。宮澤が完璧な形で合わせることができたからゴールが生まれたが、クロスが抜けてしまったり、宮澤がシュートミスをしていたら得点にはならなかった。
強い相手との試合では、相手のDFも宮澤のように飛び出してくる選手をうまく抑えてくるはず。やはり、もっと多くの人数を割きたいものである。
クロスの場面だけでなく、縦へのボールに対しても反応する選手が少ないのは気になった。
だが、そういう戦い方になったのは、このザンビア戦では日本代表がそういう戦い方を選択したからだった。
慎重に戦って、相手にチャンスを作らせないこと。それが、ザンビア戦の最大のテーマであり、日本はけっして大量得点を狙って戦ったわけではないのだ。
ザンビアは戦力的には日本をかなり下回る。
ただ、怖いのはフィジカル能力の高さだ。とくにワントップのバーバラ・バンダは俊足でパワーがあり、そのうえ足元のテクニックも備えている。
日本が攻め込んでいても、一発のカウンターでやられてしまう可能性はあったのだ。