群馬県高崎市の榛名山に設定された特設コースで「第11回 榛名山ヒルクライムin高崎」が5月14日、開催された。メインとなる「榛名湖コース」(16.1km)に加え、勾配も穏やかで中学生以上が参加できる「榛名神社コース」(11.6km)や小学3…

群馬県高崎市の榛名山に設定された特設コースで「第11回 榛名山ヒルクライムin高崎」が5月14日、開催された。メインとなる「榛名湖コース」(16.1km)に加え、勾配も穏やかで中学生以上が参加できる「榛名神社コース」(11.6km)や小学3年生から参加可能なショートコース「初心者コース」(6.7km)など、一般市民が参加しやすいコースも設定され、毎年多くの参加者を集め「ハルヒル」の愛称で親しまれている人気の大会だ。



雨は少し残ったが、新緑の榛名山で開催された「榛名山ヒルクライムin高崎」

コロナ禍以前は、7000名を超えるエントリーがあり、前日にはタイムトライアルレースやステージイベントも開催されていたが、近年は感染の拡大状況に合わせ、参加人数を抑え、ヒルクライムのみの制限付きの開催に。今年はヒルクライムレースのみではあるものの、会場でのマスク着用義務や、条件による参加制限もなくなり、笑顔の参加者の歓声が響く会場が戻って来た。募集時期が、まだコロナ禍にあったにも関わらず、北海道から九州まで、全国から4400名のエントリーがあったという。

人気の榛名湖コースの高低差は909m。平均斜度は5.6%だが、最高斜度は14%にも達する。なかなか走り応えのあるコースである。序盤は比較的穏やかなアップダウンが続くが、榛名神社を越えたあたりから勾配が厳しくなり、激坂も登場する。脚力に自信のない方は、前半は頑張りすぎず、抑えめにしておかないと、後半でバテてしまう。納得のいくリザルトを得るためには、それぞれの目標に合わせた戦略的な走り方が必要となる。



最大勾配14%、高低差909mのヒルクライムだ(画像は大会公式サイトより)



榛名神社までは比較的走りやすく、ビギナーでも参加しやすい

榛名湖コースは、ロードバイクやクロスバイクなどのスポーツバイクでの参加を基本としているが、ママチャリでも参加は可能だ(榛名湖、榛名神社コースはカゴとスタンドを外す必要あり)。初心者コースは、カゴ付きのママチャリでも参加できる。市内なら無料で使用できるコミュニティサイクル「高チャリ」での参加も可能だ。非常に参加しやすい条件が揃っているのも、この大会の特徴と言えるだろう。



初心者コースには親子の参加も多い



声援を受けながら走る

大会当日の天気予報は、残念ながら雨。今年は早々に夏日を記録していたものの、この日は気温も下がることが予想されていた。参加者は、入念に下山用の雨具と防寒具とを用意し、前日のうちに荷物預かり所に預けて、当日に臨んだ。

だが、当日の朝、うれしい「予想外」が訪れた。前日に軽く降った雨も上がり、路面は乾き、覚悟していたよりも暖かく、空も明るかった。明るい笑顔の参加者が、早朝から続々と集合場所に集まってくる。風は少し強かったが、熱中症のリスクがあるような暑い日より、むしろ走りやすいかもしれない。
交通規制が始まり、最初のスタートグループである「エキスパートクラス」の参加選手がスタートラインに並んだ。このクラスは主催者が、過去の大会や他の主要大会のリザルトを基に、参加を許可した精鋭のみがエントリーできる特別なクラスだ。

前年度の大会では、金子宗平(群馬グリフィン)が、36分42秒という驚異のコースレコードを叩き出した。ちなみに、金子は、この翌月の全日本ロードタイムトライアル選手権で優勝し、タイムトライアルの全日本チャンピオンとなっている。この大会がきっかけに自転車競技人生が始まったという、いわば大会の「はえぬき」的存在で、過去には、タイムトライアルとヒルクライムの総合連覇も果たしている。ただし、今年は一般就職し、トレーニングのスケジュールが変わったこともあり、「万全のコンディションではない」との前情報も。



精鋭が集まるエキスパートクラスがスタート。独特の緊張感が漂う



富岡賢治高崎市長も来場し、最後の一人がスタートするまで拍手で見送った

富岡賢治高崎市長も見守る中、エキスパートクラスがスタート。この日も、早朝にも関わらず、近隣の方々が集まり、温かい拍手で送り出した。ここからは、集合場所から移動してきた参加者が、数分おきに参加していくウェーブスタート。覚悟した雨も降らず、にこやかなスタートとなった。仮装系の参加者も復活し、楽しみながらヒルクライムに臨む参加者の姿が、春の榛名山を華やかに彩った。



続々とスタート



勾配が上がると霧が濃くなってくる。古来、山岳信仰を受けて来た榛名山のパワーを感じる

フルの登坂に臨む「榛名湖コース」の参加者がスタートした後は、「榛名神社コース」と「初心者コース」のスタートだ。「初心者コース」は、家族での参加も多く、少し緊張した面持ちのお子さんたちを見送った。スポーツバイクに限らず、今年も「高チャリ」で参加する方も複数おり、「来訪者だけでなく、地元市民も楽しめるイベント」であることを再確認した。



榛名神社でゴールを迎える榛名神社コース。比較的勾配がゆるく走りやすい

スタート時の接触も1件もなく、全参加者がスムースに出発。雨はぱらつき始めたが、気持ちのよいスタートになった。

今年も激戦となったエキスパートクラスでは、国内屈指のヒルクライマー加藤大貴選手が優勝。コースレコードには及ばなかったが、37分30秒というすばらしいタイムでのフィニッシュとなった。



霧の中、独走で優勝を決めた加藤大貴

2位には17秒差で金子宗平、3位に36秒差で昨年の「Mt富士ヒルクライム」の覇者、真鍋晃(EMU/往来)が入っている。序盤はお互いの状況を見合ったのか、非常に穏やかなペースで進み、勾配が上がる榛名神社前から、激しい競り合いになり、勾配のきつい登坂で脚力を見せた加藤が、全員を振り切って、単独でフィニッシュしたという。



続々とフィニッシュ。それぞれの目標も走り方も異なるが、完走した達成感は大きい



ゴール後の待機エリアでフードメニューを楽しむ

参加者はゴール後、榛名湖畔の待機エリアに移動して、ゆったりと過ごし、全参加者のゴール後に順次、下山する。ゴール地点にはふるまいが出て、フードなどのブースも並んだ。今年も参加者には、会場や市内店舗で使用できる金券が配られており、飲食に使えるのも嬉しいところ。当然、迎えた参加者の分だけ、きっちりと地元にお金が落ちるシステムも重要だ。

ヒルクライム時には事故は起きにくいが、レース終了後の下山時には、ついつい速度を上げて走りたくなってしまい、ゴール後の疲労や緊張感から解放されたこともあり、接触や転倒などのトラブルが起きやすい。ハルヒルでは、下山時には、ボランティアの下山リーダーがグループの先頭に立ち、安全に下れるペースで先導しつつ、アドバイスをしながら降ってくれるため、下山に自信がないビギナーでも安心して下れる。
今年は、4年ぶりに表彰式が復活し、各カテゴリーのトップ3名が表彰台に上がった。小学生、中学生の最優秀のそれぞれ男女各1名に漫画「弱虫ペダル」の作家である渡辺航先生が描き下ろしたイラストボードが贈られる「弱虫ペダル杯」が設定されており、表彰された子供たちの、はにかみながらも、喜びに満ちた誇らしげな表情は、特に胸に来るものがある。ここまでの健闘を称える表彰式は、やはり価値があると最認識させられた。



表彰式が4年ぶりに開催された。笑顔でコメントするエキスパート優勝の加藤大貴と、2位の金子宗平(左)、3位の真鍋晃(右)

最高齢のカテゴリーは男子70歳以上。46名が出走し、全員が完走したこともすごいことなのだが、優勝した高山信行選手のタイムは、76歳にして、なんと50分13秒。表彰式でタイムが読み上げられると、会場からどよめきが上がった。女子であれば、もっとも若い29歳以下のカテゴリーでも表彰台に上がれるタイムである。ちなみに、第1回から参加されており、10年経って、タイムは3分半の差。時が止まっているかのようだ。年齢を決めるのは、結局、自分自身なのかもしれないと思わされる。

下山した参加者は、ふるまいの温かい「なめこ汁」を味わい、メイン会場の榛名総合体育館へ。ここでは、ミネラルウォーターや、ハルヒルようかんが配られていた。完走証を受け取って、ヒルクライム終了だ。



下山後ふるまいを受け取る初心者コースのキッズライダー





ミネラルウォーターとオリジナルようかんを受け取る参加者

リザルトには、皆が一喜一憂しているようだったが、結果はさておき、今年も参加者は、達成感に満ちた表情を浮かべていた。



体育館の外には地元グルメのブースが並ぶ



自転車のアクセサリーやアパレル、ラックなどの自転車関連ブースも並んだ



高崎名物のだるまも、ハルヒル会場定番の人気アイテム。カラー、サイズ、コンセプトもさまざまで、毎年購入するという方も少なくないとか

会場内のグルメやサイクル関係のブースで買い物を楽しんだ後、それぞれのタイミングで、家路についていく。
毎回、1000名以上の地元ボランティアが参加し、おもてなしをしてくれるのだが、今年は地元の中学生もサポートに加わり、参加者のために全力で動いていた。今年も、高崎の皆さんの温かさは、参加者の胸にしみたようだ。



大きな声でテキパキと参加者を誘導し、完走証を発行する有能なボランティアスタッフ。よく見ると隣の中学校のジャージを着た生徒たちだった!



1000人を超える地元ボランティアスタッフが参加し、もてなしてくれるのもハルヒルの大きな魅力であり、特徴のひとつ。全力で応援してくれる姿に感動し、リピート参加する方が多い

参加しやすく、居心地もよく、でも、達成感は満点と言われる「榛名山ヒルクライムin高崎」。今年の完走率も98.39%と、かなり高かった。今年走った参加者の多くは、来年また榛名に戻ってくるだろう。
おそらく次回は、前日イベントやタイムトライアルなども復活し、フルスペックでの開催となる可能性が高い。来年5月、新緑の榛名山に集おう!

画像提供:高崎市 編集部