スポーツクライミングのW杯は25日、インドのナビムンバイでボルダリング第6戦の決勝が行われ、女子は、野中生萌(TEAM au)が2位、野口啓代(TEAM au)が3位に入った。

 また男子では、杉本怜が今季初の表彰台となる2位。藤井快(TEAM au)は4位、楢崎智亜(TEAM au)は6位に終わっている。

 6人で争われた女子決勝。ここ2戦連続で2位と好調だった野口は第1課題を危なげなく完登。しかし、続く第2課題で苦戦をしいられる。スタート直後、向かって右に飛び移って掴まなければいけないホールドが掴めない。何度もチャレンジしたがタイムアップとなった。

 それでも4つの課題のうち2つを完登し、見事3位に入った野口。W杯3戦連続で表彰台に上がった。

 

■プライベート・クライミングジムが野口を育てた

 野口牧場…、野口の実家は牧場を経営していた。小学5年生のころ、家族で行ったグアム旅行でクライミングを知った。そこから父親と妹もクライミングにはまり、クライミング一家となった。

中学校へ進学した13歳のある日、「学校帰りではなかなかジムにも通えないだろう、大会に向けてここで練習しろ」と、父・健司さんが古い牛舎の片隅に、手作りのプライベート・クライミングウォールを作った。

「最初は本当に傾斜がなくて、ただの四角い箱みたいな壁だった。どんどん傾斜が強くなったり、広さも倍くらいになって私の成長に合わせて壁も成長していきましたね」

今では約60畳、高さ4メートルと経営が出来るほどの広さに。父・健司さんが作った壁は野口の成長とともに進化していったという。

 

 現在、都内を中心に活動している野口。実は今でも大事な大会の前になると、茨城の実家に帰省し、父が作った壁でトレーニングを行っている。

「実家のプライベートウォールで練習すると原点に戻れるというか、気持ちが落ち着きます。父の作ってくれた壁を登って、母の手料理(コロッケ)を食べてから(大会に)出発するのが私の最強のルーティンです」

野口自身も「自慢のプライベートウォール」と語るその場所は、自分を見つめ直す大切な場所となっている。

 

 今から3年前の2014年シーズン、表彰台にこそ上がるものの、なかなか優勝出来ず思い悩んでいたとき、父からメールでこんなメッセージが届いたという。

    『take it easy』 〜もっと気楽にいこうよ!〜

 「すっごい涙が溢れちゃって、肩の荷が下りたのかホッとしたんですよね。父はメッセージをくれるタイミングとかセリフとかを会っていないはずなのに分かってくれているんですよね」

父の一言をきっかけに野口はその年、4年ぶりとなる“W杯年間女王”に返り咲いた。

「小学校、中学校時代にクライミングを続けてこられたのは、父のサポートがあったからだと思いますし、W杯で初めて優勝することも2人の夢でした。今はその頃とだいぶ関係性も変わり、お互い少し違う形でクライミングに関わりながら支え合っていると感じています」

 野口のクライミング人生を語る上で欠かせない父・健司さんの存在。父がいたからこそ、トップクライマー・野口啓代の今があるのだ。

「自分が今、取り組んでいることが徐々に身になってきていると感じています。どの課題に対しても自信をもって臨めるようにしっかり準備をしていきたいです」

今季のW杯も残り一戦。過去4度、年間チャンピオンに輝いた絶対女王が今季初の頂を目指す。

 

■野口啓代(のぐち・あきよ)

1989年5月30日生 身長165cm 体重49kg

茨城県龍ケ崎市出身 TEAM au所属
W杯2017 重慶大会3位、八王子大会2位、ヴェイル大会2位、ナビムンバイ大会3位

2009年、2010年、2014年、2015年 W杯年間総合優勝

 

■TEAM au

TEAM au は、日本におけるスポーツクライミングを、子どもから大人まで多くの人が楽しめるメジャーなスポーツとして発展・普及させるべく結成されました。チームメンバーは、すでに国内外の大会で輝かしい実績を残し、世界の頂点をねらう実力派クライマーで構成されています。2016年8月、TEAM auは、文字通り“壁を越える”為の最初の一歩を踏み出しました。今後は、クライミングを愛する全ての人とともに、様々な活動を通じて日本のスポーツクライミングシーンを牽引し、盛り上げていきます。