昨シーズン、「超変革」をスローガンに掲げながら4位に終わった阪神タイガースは、FAで糸井嘉男が加入したことで打線に…
昨シーズン、「超変革」をスローガンに掲げながら4位に終わった阪神タイガースは、FAで糸井嘉男が加入したことで打線に厚みが増した。リーグトップの7勝を挙げているメッセンジャー、リーグ最多の20セーブをマークしているドリスなど好調な投手陣が12球団トップとなるチーム防御率をキープし、首位のカープを追いかけている。
しかし、よくよく見ると、好調タイガースを支えるのはベテラン、外国人ばかりじゃない。昨年までの実績からすれば、「想定以上」の活躍を見せている選手たちがたくさんいる。そんな”上げ潮”プレーヤーたちの魅力と課題を、阪神OBの藪恵壹氏に聞いてみた。

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──開幕から不調が続く藤浪晋太郎に代わってローテーションを支えているのが、プロ8年目の秋山拓巳です。交流戦で3勝を挙げ、今シーズンはすでに6勝をマークしています。秋山のブレイクは予想していましたか。
藪 彼は期待通りの活躍ですね。昨年は1勝でしたが、二軍ではいいピッチングをしていました。ですから、このくらい投げても驚きません。秋山がよくなったのは、踏み出した左足にグッと体重が乗るようになったところ。スピード表示は140キロそこそこですが、バッターはみんな差し込まれています。初球からストライクが取れて、ピッチャー優位の投球ができるのが彼の強みです。今年はピンチでバタつくことなく、落ち着いたピッチングができています。
──では、藪さんの「想定以上」の活躍をしているピッチャーは誰ですか。
藪 やっぱり、セットアッパーの桑原謙太朗でしょうね。首脳陣が采配に迷ったところを彼が救ってくれています。たとえば、ランナーを残してピッチャーが降板する場面。先発投手からすると、「傷が浅いうちに代えてほしかった」となるものです。私が現役のころは、よくそう思いました。でも、今季はそんな難しい場面で桑原が出てきて、ピシッと抑えています。
──結果的に先発投手の心理的な負担を軽くしているわけですね。そんな桑原投手は昨シーズン、一軍での登板はありませんでしたが……。
藪 力自体はあったのですが、なかなかチャンスに恵まれませんでした。今年は交流戦終了までに、31試合で投げて3勝1敗16ホールド、防御率は0.91。もともとボールに力のあるピッチャーですが、勝ちパターンの6回、7回に出てきて、本当にいい仕事をしています。少しだけ曲がるカットボールに相手バッターは手を焼いています。
プロ10年目で今年32歳になるピッチャーですが、いまは投げるのが楽しくて仕方がないという感じでしょう。本人も「いけるところまでいこう!」と思っているはず。経験が多くない分、怖いもの知らずで、最後まで攻め続けることができるかもしれません。30イニング近く投げて37三振を奪っていますから、1イニングにひとつ以上三振を取っている計算になります。立派なものですね。
──課題を挙げるとすれば何でしょうか。
藪 打たれたときにどうリカバーするか、そこが心配ですね。失敗したあとでも、いいときと同じように投げることができるかどうか。まだシーズンは半分程度しか終わっていません。そこを注目して見ていきます。
今シーズンのタイガースは、先発投手とセットアッパーの組み合わせがうまくいっています。適材適所の起用によって、選手が力を発揮することができています。実績のある藤川球児でさえ、なかなか出番がないくらい。終盤にはマテオとドリスがいるので、安心して見ていることができますね。
──昨年、不調だった鳥谷敬が三塁手として完全復活しました。糸井の加入によって、打線に厚みも増しています。そのなかで、上本博紀が1番、2番打者として難しい役割を果たしていますね。
藪 彼にはどうしてもケガがつきまとってきました。それさえなければ、レギュラーとして十分な実力を備えています。
──その上本が欠場したときに二塁を守り、打撃不調の北條史也に代わってショートで先発出場することも多いのが糸原健斗です。
藪 期待された北條がなかなか打てずに苦しんでいますが、糸原はそこをカバーしています。糸原のいいところは真っ直ぐに強いところ。ランナーが一塁や二塁にいる場面でライト方向に引っ張ることができるし、カウントによってはレフトに流すバッティングもします。試合状況に応じたバッティングが彼の持ち味。凡打でもランナーを進めることができるので、2割前半という打率以上に重宝されています。サードもショートもセカンドも守れるから、首脳陣からすれば、使い勝手がいい。
──外野手では、プロ7年目の中谷将大選手が7本塁打を放っています。
藪 福留や糸井が活躍しているうちに、彼らを脅かす若手が出てこないと困ります。中谷は入団したときから、ストレートを待ちながら変化球に対応することができていました。緩急をつけられると、まだまだもろい部分はありますが、成長の跡が見えますね。
──藪さんから見て、ほかに気になる選手は誰でしょうか。
藪 アキレス腱断裂からの復帰を目指す西岡剛でしょう。ずいぶんと体を絞り、またショートを守れるくらい、コンディションがいいですね。千葉ロッテマリーンズにいたころのキレを取り戻しているので、夏場すぎには一軍に上がってくるのではないかと思います。
──タイガースが優勝するうえで大事なことは何でしょうか。
藪 甲子園を本拠地にするタイガースにとって、点を取るということが最重要課題です。結果的には、チームの順位はたいてい投手の防御率順に決まるものなのですが、ピッチャーは「打ってくれる」と思えば踏ん張れるけど、「1点もやれない」という状況は厳しい。その点、いまのタイガース打線には反発力がありますから、この状態を続けることができれば、ピッチャーは安心して投げることができます。あとは、藤浪の完全復活です。彼抜きで優勝することは絶対にできませんから。
(次回、藤浪復活編につづく)