全日本三冠の早田ひなと2連覇の戸上隼輔。早田はすぐさまTリーグ、戸上も海外ツアー出場へ一週間にわたる熱戦に沸いた卓球の全日本選手権(1月23~29日/東京体育館)は今年も劇的な幕切れだった。女子は早田ひな(日本生命)が単複・混合を制して史上…

全日本三冠の早田ひなと2連覇の戸上隼輔。早田はすぐさまTリーグ、戸上も海外ツアー出場へ

一週間にわたる熱戦に沸いた卓球の全日本選手権(1月23~29日/東京体育館)は今年も劇的な幕切れだった。

女子は早田ひな(日本生命)が単複・混合を制して史上4人目の三冠女王に輝いた。男子も張本智和(IMG)が史上2人目の三冠に王手をかけたがシングルス決勝で敗れ、前回王者の戸上隼輔(明治大学)が2連覇を果たした。

女子世界ランク5位で日本人1位。パリ2024オリンピック代表選考レースでも首位をひた走る早田は大会前から優勝候補の筆頭だった。しかし、その強さは期待値を超えていた。

何しろ安定感がケタ違いだ。張本とペアを組んだ混合ダブルスで2連覇を達成すると、その2日後には伊藤美誠(スターツ)との女子ダブルスで史上初の5連覇。

そして、大会最終日の女子シングルス決勝では、立ち上がりから全力で攻めてきた18歳の木原美悠(JOCエリートアカデミー/星槎)に2ゲームを奪われるも冷静に対処し、見事な戦術転換で逆転に成功した。

男子も張本の三冠と5年ぶりの王座奪還を阻んだ戸上の復調は、男子日本の底上げにつながる結果だった。

日本がパリ2024オリンピックでメダル獲得を目指す上でエースの張本に次ぐ2番手、3番手の台頭は必須だからだ。

その役割を期待される戸上は昨年の全日本初優勝後、伸び悩び、今大会前も「自信はあまりなかった」という。

だが、あえて厳しい環境で心身を磨いたドイツ・ブンデスリーガ挑戦や、思うようにいかない時期も根気よく強化に取り組んだ日々の積み重ねが、本人の言う「根拠のない自信」となって、しばしば疑心暗鬼になる自身を支えた。

その戸上に負けた張本は試合後、「後悔がないわけではないが、決断はちゃんとしてプレーした。その決断がただただ間違っていただけ」と淡々と語った。

だが、人の何倍も勝利に執念を燃やす張本。今回の負けを糧にし、さらに強くなってコートに戻って来ることだろう。

今年も全日本選手権にはさまざまなドラマがあったが、例年と違ったのは優勝した早田にも戸上にも日本一のタイトルを手放しで喜ぶ様子は見られなかったことだ。

背景には、今年から全日本選手権がパリ2024オリンピック代表選考ポイントの対象大会になったことが影響している。

シングルス優勝の2人には60ポイントが加算され、早田は224ポイントで依然として首位を独走。

戸上は150ポイントで4位から3位に浮上したものの、オリンピック代表の座に近づけば近づくほど国際大会での競争力、とりわけ世界最強の中国に通用する実力が問われることを意識せざるを得ない。

その重圧と引っ切りなしに続く国際大会および国内大会の過密スケジュールで、目の前の成績に一喜一憂していられない状況だ。

実際、早田はTリーグ・日本生命レッドエルフのホームマッチ(2月4日/貝塚市コスモスシアター)に出場する見込み。戸上はWTTコンテンダー・アンマン(2月6~12日/ヨルダン)にエントリーしている。

ちなみに、全日本選手権を終えたパリ2024オリンピック代表選考ポイントは、男子1位が229ポイントの張本、2位は全日本ベスト4で153ポイントの篠塚大登(愛知工業大学)。

3位は戸上、4位は全日本ベスト4で111.5ポイントの及川瑞基(木下グループ)。5位は全日本ベスト8で105ポイントの吉村真晴(TEAM MAHARU)となっており、5月に開催される世界卓球2023南アフリカ(5月20日(土)~28日(日)ダーバン)の代表メンバーと同じ顔ぶれとなった。

一方、女子は1位が早田、2位は156ポイントの木原、3位は全日本ベスト8で134ポイントの平野、4位は全日本ベスト16で127.5ポイントの伊藤。

5位は全日本ベスト4で127ポイントの石川佳純(全農)となっており、3位の平野以下は僅差。

また、石川を除く4人が世界卓球2023南アフリカの代表メンバーで、もう1人のメンバーである長﨑美柚(木下グループ)は107ポイントで芝田沙季(ミキハウス)とタイの6位だが、世界卓球に出場できる長﨑には一気に順位を上げるチャンスがある。

ちなみに世界卓球2023のシングルスで付与されるポイントは次のとおり。

<世界卓球2023南アフリカのポイント>
1位:200ポイント(金メダル)
2位:160ポイント(銀メダル)
3、4位:120ポイント(銅メダル)
5~8位:80ポイント
ベスト16:40ポイント
ベスト32:20ポイント

また、世界卓球の直前には第4回パリオリンピック選考会(5月6~7日/トッケイセキュリティ平塚総合体育館)もあり、そこで上位に入れれば順位アップが見込める。付与されるポイントは次のとおりだ。

<パリ2024オリンピック代表選考会のポイント>
1位:100ポイント
2位:90ポイント
3位:80ポイント
4位:70ポイント
5位:60ポイント
6位:50ポイント
7位:40ポイント
8位:30ポイント
ベスト16:20
ベスト32:10

第4回パリオリンピック選考会からポイントは昨年の2倍になる。選手たちにかかる重圧は増すばかりだが、これをチャンスと捉えることができるか。

心身ともに厳しい代表選考レースは1年後の2024年全日本選手権まで続く。

■2024年パリ五輪 日本代表選考ポイント