激闘来たる!カタールW杯特集カタールW杯はいよいよ決勝を残すのみ。エムバペの勢いを利用し盤石の勝ち上がりを見せてきたフラ…

激闘来たる!カタールW杯特集

カタールW杯はいよいよ決勝を残すのみ。エムバペの勢いを利用し盤石の勝ち上がりを見せてきたフランスに対し、アルゼンチンもメッシを中心に強い結束で調子は右肩上がり。激戦の大会を制するのはどちらか。5人の識者に決勝スコアと共に優勝チームを予想してもらった。

◆ ◆ ◆



決勝での対決が楽しみなエムバペ(左)とメッシ(右)

【フランスは堅守速攻型の最高傑作】

小宮良之(スポーツライター)

<決勝スコア予想>
フランス1-0アルゼンチン

 総合力が高いフランスが、メッシ擁するアルゼンチンを僅差で上回るか。

 前回王者のフランスは試合巧者で、とにかく守備がソリッド。準決勝では、モロッコの死に物狂いの攻撃にも最後まで崩れなかった。バックラインも堅いが、中盤でアントワーヌ・グリーズマンが献身的に攻守に貢献し、オーレリアン・チュアメニが立ちはだかる。

 押し込まれた時には、キリアン・エムバペの爆発力で反撃し、老練オリビエ・ジルーの一発がある。堅守速攻型の最高傑作と言える。終盤にインテンシティを高められる選手も多く、ポール・ポグバ、エンゴロ・カンテ、カリム・ベンゼマの不在も感じさせない選手層だ。

 アルゼンチンは、勝ち上がるたびに強くなってきた。初戦でサウジアラビアに敗れるなどチームとしては未成熟で、早期敗退もありえた。しかしメッシを中心に固まると、神がかった進撃を見せている。会場では、アルゼンチンサポーターの熱がモロッコサポーターと並んで強烈で、それに支えられた選手たちの闘争心は、オランダ戦のように時に行きすぎるほどだ。

 歴史的英雄リオネル・メッシがW杯トロフィーを掲げる、というのは祝福すべきフィナーレだろう。一方、1990年イタリアW杯でディエゴ・マラドーナを中心に、劇的に決勝へ進んだチームとも姿が重なる。その場合、メッシが決勝で涙する姿も永遠に語り継がれるはずで......。

 いずれにせよ、ビッグマッチになるはずだ。

【メッシもエムバペの勢いには及ばない】

原山裕平(サッカーライター)

<決勝スコア予想>
フランス3-1アルゼンチン

 4-3の撃ち合いとなった前回大会での対戦がそうであったように、今回の対戦でも多くのゴールが生まれる可能性が高い。フランスにはエムバペ、アルゼンチンにはメッシと、組織を破壊する圧倒的な個の力があるからだ。

 ただし、唯一手にしていないワールドカップのタイトル獲得に向け気力漲るメッシをもってしても、エムバペの勢いには及ばないだろう。今大会随一の堅守を誇っていたモロッコの守備網を単騎でこじ開けるあのパフォーマンスを見るにつけ、決して盤石とは言えないアルゼンチンの守備陣がこの怪物を食い止められるイメージがわかないのだ。

 またメッシの状態に左右されがちなアルゼンチンとは対照的に、フランスにはグリーズマン、ウスマン・デンベレ、ジルーとエムバペ以外にも起点となれる選手が多く、ベンチにもチームに勢いをもたらすタレントが控える。総合力の高さでフランスに分があると見る。

 懸案事項は試合間隔か。中4日のアルゼンチンに対し、フランスは中3日。この1日のインターバルの差が決勝のパフォーマンスに影響を与えることは否定できない。ただし、そのハンデをもってしてもフランス優位は変わらないだろう。

 先手を奪い、出てきた相手の裏を突きカウンターで得点を重ねる。終盤にメッシが意地を見せるも、フランスが突き放す。そんなシナリオが思い浮かぶ。

【アルゼンチンがサイドの戦いを制するか】

中山 淳(サッカージャーナリスト)

<決勝スコア予想>
アルゼンチン2-1(延長)フランス

 両チームのここまでの戦いぶりを振り返っても、Bチームで戦ったチュニジア戦以外、危なげなく勝ち進んできたフランスが優位と見ていい。ただし、勢いに乗るアルゼンチンが勝つ可能性も十分にあり、どちらに転んでも、紙一重の戦いになるはずだ。

 本来の主軸の半数を欠くフランスのアキレス腱は守備にある。イングランド戦を乗りきったことで自信をつけてはいるが、本来的に守備能力の高い選手がピッチに少なく、フィールド10人のうち攻撃的な選手が6人(ジルー、エムバペ、デンベレ、グリーズマン、アドリアン・ラビオ、テオ・エルナンデス)もいる。左サイドバック(SB)のテオ・エルナンデスも、本来4バックのSBではなく、MFかウイングバックが適性の選手で、現在はグリーズマンが守備の補完役に回っているのが実情だ。

 フランスは守備時に4-4-2に可変して、グリーズマンが中盤に組み込まれるが、中央のメッシを意識しすぎると、ここまでよく守備に戻っている右のデンベレと、守備に雑さが目立つテオ・エルナンデスのカバーリングがおろそかになり、最大の武器である両ウイングの威力も半減する。

 つまりアルゼンチンは、フランスが4-4-2になる時間帯を増やすために、両サイドが高い位置をとりやすい3バックを採用する可能性があり、実際、リオネル・スカローニ監督はオランダ戦でそれを採用した。サイドを制することができれば、メッシが有終の美を飾る可能性は十分にあるだろう。

 個人的な希望を言えば、メッシが優勝トロフィーを掲げ、エムバペがゴールデンシューズを手にするイメージか。パリ・サンジェルマンにとっても、それが最も円満な結末だ。

【アルゼンチンの状態は右肩上がり】

浅田真樹(スポーツライター)

<決勝スコア予想>
アルゼンチン2-1フランス

 予想スコアは2-1。3-2にしようか迷ったが、いずれにしても互いに点を取り合った末のアルゼンチン勝利と予想する。

 せっかく大会屈指の決定力を備えたチーム同士なのだから、決勝戦ならではの手堅い試合にはなってほしくない。そんな希望も、もちろんそこには含まれている。

 アルゼンチンは初戦でサウジアラビアに大金星を献上する最悪のスタートを切ったものの、その後のチーム状態は右肩上がりにある。

 エースのメッシも、好調を維持。今大会ではよくも悪くも仕事量が激減しているが、試合の流れに応じてボールをキープして時間を作ったり、決定的なラストパスを放ったりと、得点以外のプレーでも質の高さは群を抜く。最低限の仕事しかしないが、それを極上レベルでこなすイメージだ。

 そんな背番号10を中心に、アルゼンチンは試合を重ねるごとにチームとしてうまく回るようになり、ラッキーボーイのフリアン・アルバレスも出現。大会のなかで徐々に戦い方の最適解に近づく様子は、いかにも"短期決戦で勝てるチーム"の雰囲気を漂わせる。

 しかも、今大会のアルゼンチンは、アラブ系の国(モロッコ、チュニジア、サウジアラビアなど)を除けば、サポーターの数で他を圧倒する。決勝戦の会場も"ほぼホーム"と化すはずで、そのアドバンテージは見逃せない。

 優勝するのはアルゼンチン。36年ぶりの戴冠だ。

【エムバペ+グリーズマンがいるフランス】

杉山茂樹(スポーツライター)

<決勝スコア予想>
フランス3-1アルゼンチン

 エムバペ(フランス)とメッシ(アルゼンチン)。両軍のスーパースターがどれほど活躍するか。現地では、メッシ人気が断然上だ。

 母方が同じアラビア語圏であるアルジェリアの血を引くにもかかわらず、エムバペ人気はイマイチ。というか、フランスファンの絶対数が不足している。約9万人収容のルサイル・スタジアムで行なわれる決勝戦の、そのスタンド風景はアルゼンチンカラーで占められるだろう。これが結果にどう反映するか。

 しかし力で勝るのはフランスだ。安定感抜群。自在力もある。ピッチを広く使う正統派の攻撃的サッカーだ。対するアルゼンチンはゴチャゴチャっとしたサッカーで、相手の混乱に乗じ、狡賢く、欺くようにゴールを奪う。そこにアクセント役としてメッシが絡むわけだが、フランスの強みは慌てないことだ。パニックに陥りにくい気質がある。

 フランス有利と見る大きな理由の一つだが、もう一つ推したくなる理由は、背番号7をつける事実上の10番、グリーズマンの存在だ。今大会、1トップ下に綺麗に収まり、フランスの攻撃をリードする。

 メッシがすべてのアルゼンチンと、エムバペに加えグリーズマンがいるフランス。55対45の関係でフランスが上回ると見る。