前田三夫(帝京名誉監督)の明治神宮野球大会観戦記【高校・投手編】各地区の優勝チームが集い、全国ナンバー1を決める明治神宮…
前田三夫(帝京名誉監督)の明治神宮野球大会観戦記【高校・投手編】
各地区の優勝チームが集い、全国ナンバー1を決める明治神宮野球大会。11月に第53回大会が開かれ、高校の部は2年連続で大阪桐蔭(大阪)が大会を制した。この大会を全試合初めて観戦したというのが、帝京(東京)の前田三夫・名誉監督。半世紀にわたり高校球児を指導してきたその目に、印象深く映った選手は誰なのか。まずは投手編として、ピックアップしてもらった6投手を紹介。

帝京の前田三夫・名誉監督
撮影/村上庄吾
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【前田悠伍(大阪桐蔭・2年)】

前田三夫(以下、同) 今大会、全体的に投手はみなよかった。大黒柱といえるエースが必ずいて、そこに2枚、3枚と複数の投手を擁したチームが上位にいったという印象だ。
そのなかでも筆頭として挙げたいのは、やはり大阪桐蔭の前田悠伍だろう。キャッチャーミットにズバッと投げ込む直球のコントロールは抜群で、内と外を使い分け、右打者へのインコースは特に有効だ。
スライダー、チェンジアップなど球種は多いと聞いていたが、外への変化球も鋭い。ストレートにこだわりながらも変化球を有効に使っていた。
準決勝の仙台育英(宮城)戦では全体的に球が高めに浮き、コントロールもいまひとつながら、私が見る限りストライクともとれる微妙なコースをついていた。本人も戸惑ったかもしれないが、そんな状況でも大崩れはしていない。終盤も140キロ台の速球を投げておりスタミナも十分。悪くても悪いなりにまとめる投球は見事だ。
現時点で高校球界屈指の投手であることは間違いなく、あれだけのキレのあるボールを投げる投手は少ない。将来が楽しみである。
【高尾 響(広陵・1年)】

広陵(広島)の高尾響は1年生とは思えない、堂々たるピッチング。入学早々エース番号をもらい、明治神宮大会ではケガもあって背番号11になったそうだが、マウンド度胸よく、自信を持って投げている姿にはとても好感が持てた。
特に準決勝の北陸(福井)戦では、コーナーにきっちり決める抜群のコントロール。ボールの質のよさを感じさせ、変化球にもキレがある。体はそれほど大きくないが可能性を秘め、この先も順調に伸びていってくれたらと思う。
【仁田陽翔(仙台育英・2年)】

140キロ台を投げる投手を複数擁する仙台育英。ここまで選手がそろうというのは、私の監督時代を振り返っても一度もなく、うらやましい限りである。
全員が速球だけでなくスライダーを中心とした変化球にも磨きがかかっていて、こうした投手がライバルとしてチーム内に存在すれば否が応でもテンションは上がる。ハイレベルなエース争いも注目に値するところだ。
その複数の投手陣のなかで今回ひとり選ぶとするなら、私は仁田陽翔の名を挙げる。ボールのキレは一番よかったように思う。キレに加え、落差のある鋭い変化球。投手陣においてはもっとも小柄だが、運動能力の高さを感じさせた。
あの体であれだけのボールを投げるのだから存在感は大きく、彼の成長が今後のチームの勝敗を左右するのではないだろうか。他の投手と刺激し合いながら、一層のレベルアップに期待したい。
【下村健太郎(英明・2年)】

力みのない投球で、粘りあるピッチングを見せた英明(香川)の下村健太郎。サイドスローで球威はそれほどないが、打ち崩せそうで打ち崩せないのは、彼特有の球質にあるようだ。ナチュラルに変化するいわゆるクセ球を持ち、タイミングがとりづらい印象。
聞けば中学までは内野手で、高校入学後にショートから転向したという。指導者が送球の様子から投手の才能を見抜き、下村はその期待に見事に応えている。派手さはないが、大崩れせず安定感がある。ライバル校にとっては脅威の存在になるだろう。
【新岡歩輝(クラーク記念国際・2年)】

2021年の明治神宮大会、そして今春のセンバツにも出場しているクラーク記念国際(北海道)。新岡歩輝はいずれの大会も野手としてプレーしていたが、この秋は球速も増し、主戦投手としてチームを牽引している。
大阪桐蔭とのゲームでは味方のエラーなど不運な一面もあったが、点差(2−12)ほど打たれた印象はない。むしろ5回に見せた三者連続三振は圧巻で、球のキレも非常によかった。
横手投げで、スリークォーターから投げたかと思えばアンダースローでの投球もあり、腕の位置、つまり球の出どころが変わるというのは打者にとってタイミングの取り方が難しくなる。
球種も多く、インコースをうまく攻めている。この冬、体幹を鍛えて体力アップを図れば、さらに投球の幅が広がるのではないだろうか。
【友廣 陸(北陸・2年)】

北陸の大黒柱である友廣陸。恵まれた体格だが、体が大きいわりにはフォームに無理がなく、柔軟性がある。それはコントロールのよさにもあらわれ、淡々と我慢強く投げるあたりも好印象だった。
バッターとしても非凡なものを持っているようだ。4番打者でもあり二刀流を目指すというが、目標は高くあっていい。将来性豊かな選手だと感じた。
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この他、東海大菅生(東京)の190センチの大型投手・日當直喜(2年)や、東邦(愛知)の宮國凌空(2年)など、本領発揮とまではいかなかったが素材のよさは十分に感じ取れた。
投手が安定していたので試合そのものが接戦となり、好ゲームが多かった。ひと冬越してさらに成長した姿を来春のセンバツ大会で見せてもらいたい。
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【プロフィール】
前田三夫 まえだ・みつお
1949年、千葉県生まれ。木更津中央高(現・木更津総合高)卒業後、帝京大に進学。卒業を前にした1972年、帝京高野球部監督に就任。1978年、第50回センバツで甲子園初出場を果たし、以降、甲子園に春14回、夏12回出場。うち優勝は夏2回、春1回。準優勝は春2回。帝京高を全国レベルの強豪校に育て、プロに送り出した教え子も多数。2021年夏を最後に勇退。現在は同校名誉監督。