早大は5日、神宮球場で行われた東京六大学野球秋季リーグの慶大1回戦に5-4で9回逆転サヨナラ勝ちを収め先勝した。早大に…
早大は5日、神宮球場で行われた東京六大学野球秋季リーグの慶大1回戦に5-4で9回逆転サヨナラ勝ちを収め先勝した。早大には既に今季優勝の可能性がなく、一方の慶大はこのカードで勝ち点を挙げれば優勝が決まる。両チームのモチベーションの差は大きいかと思われたが、伝統のカードで早大が意地を見せた。
小宮山悟監督は「非常に素晴らしい試合ができました。(前週末に)優勝の可能性がなくなり、ややもすると気持ちが切れてしまいそうな1週間を過ごしたけれど、選手たちは本当に必死になって、慶応相手に意地を見せようと練習してきました。彼らを誇りに思います」と頬を紅潮させた。西武からドラフト1位指名を受けた蛭間拓哉外野手(4年)も「優勝の可能性はなくなりましたが、1年生の頃から、早稲田は慶応には絶対に負けてはいけないと言われてきました。他の試合より熱くなります」とうなずいた。
7回を終えた時点では3-0とリードした。試合前の時点で今季打率.143(28打数4安打)と不振を極めていた蛭間だが、6回に中堅バックスクリーンを直撃する今季1号2ラン。初回の左前打、8回の中越え三塁打を含め、4打数3安打2打点と爆発した。現役時代にNPB、MLBを股にかけて活躍した小宮山監督は「これまでも打撃の内容、打球は決して悪くなかった」と言いつつ、「打ってくれてホッとしました。打てないまま『ドラフト1位です』とプロへ送り出すのは、申し訳ないと思っていました。本当に良かった」と胸をなでおろしていた。
ところが、7回まで無失点に抑えていた先発の加藤孝太郎投手(3年)が、8回に乱れ一挙3点を奪われ同点に追いつかれる。続く9回には2番手の左腕・原功征投手(4年)が、途中出場の吉川海斗外野手(3年)に右翼席へ勝ち越しソロを浴び、一転して崖っぷちに追い込まれた。

それでも食い下がるのが“早稲田魂”である。その裏、DeNAからドラフト5位指名を受けた相手の2番手・橋本達弥投手(4年)を攻め、1死満塁とするも、初回に先頭打者本塁打を放っていた熊田任洋内野手(3年)は遊直に倒れた。敗戦まであと1アウトとなって左打席に入ったのは、松木大芽外野手(4年)だった。
初球、2球目は続けて橋本得意のフォークを空振り。1球ボールの後、カウント1-2から、インローのフォークに今度は食らいついた。打球は右前で跳ね、逆転2点タイムリーとなり宿敵・慶大を土俵際で“うっちゃり”。松木は「フォークがいい投手とわかっていて、練習もしてきたのですが、なかなか打てなかった。最後だけはなんとかバットに当てることができました」と表情を綻ばせ、小宮山監督は「執念のヒット」と評した。
早慶戦は毎シーズン、優勝争いとはまた別の次元で、双方の意地が激しくぶつかり合うが、この試合の持つ意味はそれだけではない。試合後の会見で小宮山監督は、来年プロの世界へ飛び込む蛭間、野球選手としては一線を退き企業に就職する松木を交互に見やりながら「競技を続ける者とそうでない者が、同じ熱量で最大の敵である慶応と戦うことができる幸せを感じている。卒業後5年、10年、もっと年を取ってから昔話に華が咲くような、思い出の1ページを自分たちで作り上げてほしい」と話した。歴史に彩られた大学球界最注目のカードは、すんなりとは終わらない。
(Full-Count 宮脇広久)