女子部門の中で、今回の日本学生選手権(インカレ)で早大水泳部をさるのは4人。その中でも特に斎藤千紘(商4=東京・早実)…
女子部門の中で、今回の日本学生選手権(インカレ)で早大水泳部をさるのは4人。その中でも特に斎藤千紘(商4=東京・早実)と松浦優美奈(人4=沖縄・開邦)はともに平泳ぎを専門に切磋琢磨(せっさたくま)してきた。今回はこの2人に4年間を振り返っていただきながら、今回のインカレについて話していただいた。
※この取材は8月23日に行われたものです。
水泳に対しての視野が広がった(斎藤)

「早大・斎藤千紘」のラストレースはどのような結果となるか
――他己紹介をお願いします
斎藤 去年もこれやってちょっと難しいんですよね(笑)。私と松浦選手は普段の練習拠点が異なるので、普段の様子は詳しくはわからないのですが、私 の印象としては毎年ベストを更新している選手で、試合のたびに成長しているなと思います。すごい上から目線みたいになっているのですが、そんなことはなくて、大学生で毎年ベストを出すのはとても難しいことなので、それを実現しているのは本当に凄いですし、陸トレや練習でストイックに取り組む姿が印象に残っています。あとはいろんな後輩から慕われていて、母親的な存在で皆を包み込んでくれているような選手だと思います。
松浦 まず競技面に関しては皆さんご存知の通りユニバ代表(ユニバーシアード代表)にも選出されるように凄い選手です。50では学生新も出していますし。私と斎藤選手はどちらも平泳ぎなのですが、結構タイプの違う泳ぎ方だと思って、斎藤選手はスプリンターですけど私は短距離が全然早くないので、そういった面で凄いなと1年生の時から思っていました。さっき私がベストを出し続けていると言ってくれたのですが、斎藤選手も3年生4年生になってからもベストを更新し続けていて凄いなと思います。競技面以外でもすごく明るくてコミュニケーションがとっても上手くて。基本的には学外練習なのですが、学内で合同練習を行う際も本当にいろんな後輩や同期、スタッフの方と喋っている姿を見て何て言うんだろうな・・・。それこそみんなに慕われているなと思います。真似したみたいになっちゃったのですが(笑)。
――普段オフの時間は何をされていますか
斎藤 月曜日がオフなのですけど、月曜日にゼミがあるのでオフらしいオフは過ごしていないんですけど、大学のゼミ生とご飯に行くなど人と過ごすことが多いなと思います。あとは最近またハムスターを飼い始めて、そのハムスターと一緒に遊ぶというのもオフの過ごし方の一つです(笑)。ハムちゃんは実家にいるので普段は会えないんですが、母親に写真とか動画を送ってもらっていつもお癒してもらっています。
松浦 結構疲れが溜まっちゃうのでオフの日は一日中寝て過ごすこともあるんですけど、外に行く元気がある日はドライブに行ったりします。一人でドライブすることもあるし、友達や後輩を誘ってご飯がてら行くっていうこともあります。寝ているかドライブに行くかって感じです(笑)。
――遠出されたりはしないのですか
松浦 コロナでなかなか遠出っていうのはできていないんですが、落ち着いたら海とか行きたいなと思います。
――試合前に聞く音楽はありますか
斎藤 私本当ミーハーで一つの音楽をずっと聴くっていうのはないんですけど、友人からよく進められるKPOPはノリノリな曲が多いので、試合前に聴いて気分をあげています。
松浦 私は試合の前日ダメだった時は、当日はちょっと穏やかな曲を聴くんですけど、数時間前とか直前になるとアップテンポな曲を聴いて気分をあげるようにしています。
――競技の話に入っていきたいと思います。まず夏の練習を振り返るといかがですか
斎藤 夏の練習を振り返ると、結構自分で納得がいったと思える練習が数回しかなくて、ここ最近でも泳ぎに悩んでいるというかしっくりきていない部分がありました。結構気持ちの浮き沈みとかそういうのがあったんですけど、今は一周回ってどうしてできないんだろう、何で上手くいかないんだろうとか、できないことに対してどうやってアプローチをかけていくのかというのを、いろいろな人に頼りながら楽しんでできるようになってきています。
松浦 7月の頭に早慶戦があって、それまでは比較的順調にトレーンニングをつめていたんですが、ちょっとその後は体調を崩してしまうこともあって夏前に思い描いていた理想の練習ができたかと言われたら、「はい」と自信をもっていうことはできないです。でもその日の日にできることは全力でやってきたと思っていて。なので最近はちょっとずつ調子も上がってきていますし、インカレもあと5日で始まりますが、自信をもってインカレに臨めるような練習はできたかなと思います。
――ここから斎藤選手にいくつか質問をお聞きしたいと思います。まず今シーズンをここまで振り返っていかがですか
斎藤 昨年のインカレでずっと目標としていた決勝に残ることができて、そのまま結構小さい試合も大きい試合もクラブチームでは出てきていて、小さい試合ではあまりいいタイムを残すことができなかったんですが、大きい試合にちゃんと標準を合わせることはできたかなと思います。今シーズン初めて総合代表に選んでいただけで、また新たな選手やコーチに出会ったりして、それぞれの人が持っている水泳論にみたいなものを聞いたりして、水泳に対しての視野が広がったなと思います。それで早く自分もこの練習を取り入れたいという気持ちは大きくなっていたんですが、その反面今シーズンの後半は思ったように泳げずに苦しい時期が続いたなと思います。ここ最近で三か月くらい自分の泳ぎができなかったということがなかななかなくて、原因も探ってはいるのですが、いまだにこれっていうものはなくて。でもこういう経験も今後につながるのかなと前向きにはとらえられるようになりました。
――昨年の秋には短水路の日本選手権で3位になられましたが、この時のことを聞かせてください
斎藤 そうですね。インカレで100の前半のタイムが良かったので、そのまま日本短水路でも記録を狙おうともって、いつもインカレの後に少しシーズンオフがあっていつも暴飲暴食してしまうのですが、それをなるべく控えて(笑)。インカレのいいコンディションのまま日本短水路に向かえるようにはしていて、3位という結果で嬉しかったですけど、タッチで刺されて3番だったというのと、学生新まであと0.1なくて、なので嬉しさ半分悔しさも残る試合だったなと思います。
――今年は4年生としてチームを引っ張る役割を担ったと思うのですが、大変だったことはありあましたか
斎藤 女子は基本外で練習していて学内と学外の壁があると言われていたんですが、今年主将の浅羽選手(栞女子主将、スポ4=東京・h八王子)も学外から学内に途中で練習拠点を変えて、浅羽選手が凄い学外との壁をなくそうという取り組みをいろいろなところでしてくれて、今までよりは学内の選手だったり後輩との関わりを持つ機会は増えたかなと思います。
――期待の後輩はいますか
斎藤 今一番注目しているのは3年の須田悠介(スポ3=神奈川・湘南工大)くんですね。彼も1年生の時にはインカレに出られていなくて、でもその中でも今は学生ランキング1番まで上がってきていて、ここ最近でもずっとベストを連発しているので、今後の活躍に期待したいなと思います。
今までやってきたことや自分自身を信じて(松浦)

松浦も得点を獲得し、チームに貢献する
――続いて松浦選手にお聞きしていきたいと思います。松浦選手も今年は4年生としてチームを率いる立場だったと思いますが、大変なことはありましたか
松浦 そうですね。大変なことをあげればきりがないんですけど、去年のインカレが終わって最上級生になって、それまでチーム運営やチーム全体のことについて考える機会が少なかったのですが、上の学年になってからはそれを真剣に考える時間が増えると同時に悩む時間も増えました。普段練習や休養の時も部員と過ごす時間は多くて、部員同士で話す中でそれぞれがどんな状況にあるのか、どんな悩みを抱えているのかというのかを理解しようという姿勢を持てるようになったと思います。大変ではあったけれど、そういうチームへの携わり方をできるようになったのは良かったなと思います。
――今シーズンをここまで振り返るといかがでしょうか
松浦 最初の方は短水路の試合が多くて、100メートルも200メートルもベストを割と頻繁に更新できていて、短水路で日本選手権の標準記録を突破するというのを目標にやっていて結局それは届かなかったのですが、4月の春季六大学対抗戦で私は初めてジャパンオープンの標準記録を突破できましたし、比較的順調に取り組めていました。4月、5月はコロナ関係で試合に出られなくなることが結構あったのですが、その中でもインカレに向けて淡々と練習は出来ていました。でも7月、8月で体調などが上手くいかないことが増えて、完全な練習というのは出来なかった部分もあるのですが、8月頭の関カレ(関東学生選手権)が終わって以降はインカレまで残された期間を「自分ができる状況でできることをやろう」というスタンスで前向きに取り組めていました。
――7月に行われた早慶戦では100メートル平泳ぎで自己新記録を更新しましたが、振り返られるといかがですか
松浦 もちろん自己ベストを出したことも嬉しかったですし、あの試合で長水路のインカレ標準も初めて突破して、9月にある国体の方の標準記録も突破できたので、本当にうれしかったです。
――期待の後輩はずばり誰でしょうか
松浦 一人に絞るのはすごく難しいんですけど、練習拠点が学内なので学内の選手になってしまうのですが、普段から2年生とよく関わることもあって、2年生みんなに期待しています。練習グループが同じになることが多かった金(直輝、スポ2=群馬・高崎)と山本(拓武、スポ2=千葉・成田)のバタフライの二人には特に期待していますし、上手く行ってほしいなと思います。
――ここからはインカレについてお二人に聞いていきたいと思います。まずインカレの出場種目と具体的な目標を教えてください、
斎藤 100メートル平泳ぎと200メートル平泳ぎに出場します。目標は100メートルでは決勝に残ること、200目メートルは一点でも多く点数を稼ぐことです。
松浦 100メートル平泳ぎと200メートル平泳ぎに出場します。100目メートルは自己ベストを更新する、200メートルも自己ベストを更新したうえで得点をとってチームに貢献したいと思います。
――お二人は4年生ということで最後のインカレになります。チームごとに戦うインカレの魅力を教えてください
斎藤 やっぱり自分の持っている以上の力を出せるというところが魅力の一つかなと思います。自分のために泳ぐだけではなくて、両親のためだったりコーチのためだったりもありますが、大学を背負ってチームの代表として戦っているので、大学やチームのために戦うというのが大きいのかなと思います。実際振り返ってみると、インカレでベストが出たということが多いので、自分の持っている以上の力を出せる、自分を超えられるというのが魅力かなと思います。
松浦 インカレの会場の雰囲気ってやっぱり普通の試合とは違くて、会場にいる全員が大学のために頑張ろうという熱い感情を持っていて、そういった雰囲気の中で何が起こるかわからないというのが魅力かなと思います。今まで早稲田の選手も他の大学の選手もすごいベストを更新するなど、考えられないレースをしている選手も見てきましたし、私も2年生の時にインカレでベストを更新したという経験があるので、そういう意味で何が起こるかわからないというのが魅力かなと思います。
――最後のインカレにかけてきた思いはどのようなものがありますか
斎藤 私は今後も競技を続けるという選択をとったので、水泳人生の中でインカレっていうのは通過点ではあるんですが、私は高校の時から早稲田という名前を背負って出ていて7年目になるんですが、「早稲田大学 斎藤千紘」と言ってもらえるのが最後になると思うので、7年間の集大成を見せられたらと思います。
松浦 私は9月の大会が最後の試合になるのですが、自分の得意な200メートルを泳ぐのはインカレが最後ですし、大学水泳として出る最後の試合ということで今までの20年間くらいの水泳人生の集大成という気持ちで臨みたいと思います。競技面でも競技以外の面でも、残すことなくやり切りたいと思います。
――少しインカレから離れますが、これまでの4年間を振り返って一番の思い出はなんでしょうか
斎藤 本当に一つに絞るのが難しくていっぱい出てくるんですけど、二つ言ってもいいですか(笑)。一つは昨年のインカレで決勝に残れたという思いです。中学生の時から学校の試合で決勝に残って名前をコールされて入場するということに非常に憧れがあって、今までも得意種目の50メートルで名前をコールされてとうことはあったんですが、やっぱり得意種目じゃなくて100目メートルでもしっかり結果を出したいという気持ちがありました。なので昨年のインカレで決勝の入場で初めて「W」のポーズをやった時は長年の夢がかなったなと思いました。もう一つは学生新を出したことで、今までもメダルをとったことはあっても自分の上には大学生(他の学生?ちょっと聞き取れなかった)がいて、なので学生の一番をとれたのは結構思い出に残りました。
松浦 本当に一つに絞るのは難しいのですが、毎年6月ごろに県選で地元に帰るんですが、いい結果を出せたときも悪い結果だった時も、帰った時にお世話になった先生や後輩と会う中で「大学でも水泳頑張ってるね」という風に言ってもらえたり、大学での頑張りを泳ぎで見せることで「沖縄の水泳をやっているみんなの力になっているんだよ」って当時のコーチに言っていただいたときは大学で水泳を続けてよかったなと思って、それが非常に印象に残っています。
――同学年の選手との印象的な思い出はありますか
斎藤 また去年のインカレの話になってしまうんですけど、決勝で浅羽選手の隣で泳いだ時に、浅羽選手も私も自己ベストを更新することができてレース直後に隣で喜びを分かちあえたというのはうれしかったですし、中学の頃から知っていてずっ尊敬していて今も尊敬している浅羽選手と一緒にそういうことができたのは、非常に印象に残っています。
松浦 競技の話ではないんですけど、同期とご飯に行って話したりする中で、今まであまり人に対して弱音を吐いたりしてこなかった人生だったのが、なんでも言っていいんだと思える存在ができたのがうれしかったです。
――またインカレに話を戻しますが、現在の調子、課題を改めて教えてください
斎藤 現在の調子としては正直あまり良くないです。課題としては自分はテンポで泳ぐタイプかつパワーで泳ぐタイプで、手と足のタイミングというのを大事にしていて泳いでいて、そのタイミングが今はうまくはまっていないかなと思います。それは4月からずっと悩んでいてどうやって改善しようか考えて試行錯誤してきたんですけど、まだこれだという解決方法は見つけられていない状態です。
松浦 今の調子はたぶん悪くなくて、調子は良いと信じています。課題は「抵抗を小さく推進力を大きくする」ために細かく考えていることはもちろんあるんですけど、インカレまでは新しいことをしようとは思っていなくて、今まで練習でやってきたことを継続してレースまで持っていくという風に考えています。あとはメンタル面で良い状態をつくって、最大限の力を発揮できる状態をつくるというのが今からできることかなと思います。
――チーム全体で注目してほしい選手はいますか
斎藤 今年主将の浅羽選手に注目というか期待というか応援というかいろんな感情があるんですけど、彼女は今回のインカレで引退するというのを決めていて、その覚悟を決めているからこそ練習の姿勢やタイムに気持ちの強さが現れているなというのを最近感じています。本当にここぞという時に強い選手だと思うので期待しています。同じ種目出るのにあれですけど、最後は栞ちゃんのかわいい笑顔が見られたらなと思います。松浦選手と浅羽選手と一緒にいい結果を残せたらいいなと思います。
松浦 本当に全員に注目してほしいんですが、最近の試合や結果から見ると、1年生の背泳ぎの村上(汰晟、スポ1=兵庫・明石南)かなと思います。最近関カレでもベストを更新していたりして練習でも頑張っています。背泳ぎが男子は3人いて、3年米山(毅、スポ3=東京・早実)、2年村上(賢之慎、スポ2=熊本西)、1年村上なのですが3人で切磋琢磨しながら練習している姿を見ていますし、1年生なので「やってやろう」というやる気に満ち溢れている感じがして、やってくれそうだなと思います。
――最後にインカレへの意気込みをお願いします!
斎藤 散々調子が悪い悪いと言ってはいたんですけど、ここまで来たら気持ちでコンディションを整えていきたいと思います。インカレは久しぶりに有観客ということで両親も来るので、生で見てくれているところで結果を残したいなと思います。
松浦 今までやれることは全てやってきたので後は体力を維持して調子を整えて、今までやってきたことや自分自身を信じて最後までやり遂げたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 玉置理沙子・藤田珠江)
◆斎藤千紘(さいとう・ちひろ)
2000(平12)年10月30日生まれ。165センチ。東京・早実高出身。商学部4年。専門は平泳ぎ。最近ハムスターを買い始めたという斎藤選手。寮にいるためなかなか会えませんが、写真を送ってもらって癒されているそうです!
◆松浦優美奈(まつうら・ゆみな)
2000(平12)年6月19日生まれ。162センチ。沖縄・海邦出身。人間科学部4年。専門は平泳ぎ。沖縄の高校に通っていた松浦選手。本当は神奈川県出身ですが、「沖縄の血は流れている」と語っています!