サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マ…
サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、サッカーで最も重要なもののひとつ。
■「リーグ」が意味するもの
そもそも英語の「リーグLeague」は、本来、「同盟」や「連盟」を意味している。ラテン語の「リガーレ(結ぶ、つなぐ)」からイタリア語を経て派生した言葉で、フランス語の「リエゾン(連音)」や英語の「ラリー」も同じ言葉からの派生語だという。日本の私たちは、リーグと言えば、決められた10から20チームがシーズンを通じて対戦するシステムをイメージするが、「連盟」という意味から、協会名に「リーグ」がついているところもある(パラグアイ・サッカー協会は1998年に改称するまで「アソシエーション」ではなく「リーガ」だった)。
アメリカの野球リーグを意識していたのに、マグレガーが「リーグ」という言葉を避けようとしたのは、当時英国で目の敵にされていたアイルランドの自治運動を主導した政治組織「ホーム・ルール・リーグ(内政自治連盟)」が頭にあったからだと言われている。
つまり、「リーグ・システム」は、「リーグ」という言葉に重要な意味があったわけではない。マグレガーの提案どおりになっていれば、いまごろ世界中で「ユニオン・システム」が行われていたかもしれない。重要なのは、「定められた数のメンバー(クラブ)」が「ホームアンドアウェー」で、「シーズンを通じて」対戦し、しかもその試合日程がシーズンの始めにしっかりと決められていることなのだ。
■野球にはなかった発明品
ノックアウト方式の大会では、運不運が小さからぬ要素になる。そのシーズンで最も強いチームを決める最良の方法は、すべてのチーム同士が、それぞれの相手とそれぞれのホームで1試合ずつ対戦する形であるに違いない。その総合成績によってチャンピオンを決めるのは、最も公平で、文句のつけようがないシステムなのである。「リーグ・システム」が世界に広がり、「サッカーの基本」となったのは、何よりもその公平性にある。
「リーグ」と「ホームアンドアウェー」はマグレガーの発明ではなかった。しかし1888年9月8日に開幕した初年度の「フットボール・リーグ」は、アメリカの野球にはなかったまったく新しい順位決定方法を創り出した。「勝利に2、引き分けに1」の勝ち点制度である。といってもこれが決まったのは、各チームがすでに8試合ほど消化した後、11月21日になってからだった。この勝ち点制度は、イングランドでは1981年に「勝利に3、引き分けに1」に変えられるまで、100年近く続いた。
■世界的人気拡大への最後のひと押し
イングランドのフットボール・リーグは、また、「リーグ・システム」にアメリカの野球にはなかったもうひとつの重要な要素を付け加えた。昇格と降格である。リーグ創設から5シーズン目の1892/93シーズンに、12クラブからなる2部リーグを始めたのだ。
1888年にフットボール・リーグがスタートし、たちまち人気を独占した。毎シーズンのリーグ加盟チームは審査で決められることになっており、当初、その門は非常に狭かった。一日も早く「リーグ」システムでプレーしたいクラブは、自分たちで新しいグループをつくるしかないと判断した。それが1889年に誕生した「フットボール・アライアンス」である。「アライアンス」もまた、「リーグ」や「ユニオン」と同様、「連盟」を意味する言葉である。
だがマグレガーのような優れたリーダーを欠く「アライアンス」は運営が粗雑で、問題も多かった。1892年、マグレガーはこうした「分裂状態」を終了させようと、在来のクラブを説得、1部を前年の14クラブから16クラブに増やすとともに、12クラブによる2部をつくることにしたのである。そして「昇格と降格」のシステムもつくった。
「昇格と降格」は、やがてプロのトップリーグから地域、都市、地区など、ひとつの国のサッカーを網羅する大きな「ピラミッド」組織につながり、サッカーという競技の世界的普及に大きく寄与するもうひとつの偉大な発明となる。
プロ選手にしっかりとした給料を支払うために安定した試合日程が必要だった。そのために創出された「フットボール・リーグ」。先覚者たちは、そこに勝ち点システム、昇格と降格のシステムを付け加え、「リーグ」をサッカーという競技を世界の隅々まで行き渡らせる最も重要なシステムとした。サッカーに対するこれほどの貢献は、他にはあまり見当たらない。