小さな体から投じられた1球に、球場は温かな拍手に包まれた。28日に神宮球場で行われた東京六大学野球春季リーグの早大-慶…

 小さな体から投じられた1球に、球場は温かな拍手に包まれた。28日に神宮球場で行われた東京六大学野球春季リーグの早大-慶大戦で、試合前に13歳の慶大野球部員・國久想仁(くにひさ・そうと)さんが始球式を務めた。ノーバウンドでのストライク投球に、球場内には大きな拍手が沸き起こった。始球式後に國久さんは「うれしい気持ちでいっぱいです」と振り返った。

 入場規制が緩和され、伝統の一戦が行われる球場には2万2000人が詰めかけた。國久さんはマウンドに上がると帽子をとって周囲に丁寧に一礼。場内も緊張感に包まれる中、ゆっくりと足を上げて投じた一球は、山なりの軌道を描いて、アウトローに構える捕手のミットに収まった。観客席はもちろん、ベンチに前に整列して見つめる両チームのナインからも大きな拍手が送られた。両手を上げて喜んだ國久さんは、慶大ナインが作った花道をハイタッチしながら、笑顔でベンチへ戻った。

始球式後、慶大ナインに迎えられる國久さん【写真:伊藤賢汰】

 國久さんの“1球”に応えるかのように、チームは7得点で快勝。初回に逆転の2ランを放った萩尾匡也外野手(4年)は「自分自身も勇気をもらいましたし、チームも勢いに乗っていく始球式だった。想仁くんがチームにいい流れを持ってきてくれました」と、感謝の言葉を述べた。

 中学2年生の國久さんは、「軟骨無形成症(成長軟骨に異常がある骨の病気)」で、NPO法人「BeingALIVEJapan」が企画、運営する長期療養を必要とするこどもの自立支援・コミュニティ創出事業「TEAMMATES事業」を通じて、昨年8月に野球部に迎えられ、数週間に1回、練習参加や試合会場でのスタッフサポート等の活動を行ってきた。慶大野球部のホームページの「部員一覧」のページにも学生と並んで写真と名前が掲載されている。

試合前にベンチ前で投球練習を行う國久さん(右)と、それを見つめる慶大・堀井哲也監督【写真:伊藤賢汰】

 この活動による慶大野球部への入団は國久さんで4人目となる。昨年春の早慶戦でも、石岡直歩(なおむ)さんが始球式に登場。股関節に負荷をかけないための補装具を付けながら自らマウンドへ歩き、見事なストライク投球を披露していた。

 堀井哲也監督も、成長ぶりに驚く。「彼も直歩君も、コロナ禍の中、土日を使って練習に来ていた。成長を見ていると、頑張っているなと。相乗効果というか『想仁もここまでやっているんだから、我々も頑張ろう』と」。チームの刺激になっていることを明かした。“13歳の野球部員”に負けじと、選手たちは伝統の一戦に臨む。

(Full-Count 上野明洸)