自分次第 「正直悔しい気持ちもあるが、そういった経験も含めて成長できた」。けがと新型コロナウイルスの影響に苦しんだ最後の…

自分次第

 「正直悔しい気持ちもあるが、そういった経験も含めて成長できた」。けがと新型コロナウイルスの影響に苦しんだ最後の1年を、二見颯騎(スポ=東京・足立新田)はこう振り返った。相撲を始めて16年。早大相撲部での4年間を中心に、これまで二見が歩んできた相撲人生を振り返る。

 相撲をしていた父の影響で、6歳から道場に通い始めた。「最初はつらいだけで、そんなに相撲が好きではなかった」が、次第に試合や練習で勝つことの楽しさと嬉しさに魅了されていった。転機は中学3年生時。「相撲がつらくて辞めようか悩んでいた」。そんな時、足立新田高校の監督から『相撲を楽しんでほしい』という声を受け、競技続行を決めた。高校3年時には、全国大会の団体戦で二見が出場した試合は全てベスト4以内に入るなど実績を積み重ね、早大相撲部の門をたたいた。入学を決めた理由は、「強制的に練習をやらされるという環境ではなく、自分で考えていろいろできることが魅力的だったから」。

 デビュー戦となった東日本学生新人選手権。二見は早大勢として4年ぶりにベスト8まで勝ち上がり、敢闘賞を獲得した。1カ月後の東日本学生選手権では、1年生ながら団体戦のメンバー入り。鮮烈なデビューを飾り、順調なスタートを切ったかと思われた。しかし、4年間で最も苦しかったのはこの1年だったという。「団体戦に出させてもらえても、重要な場面で一度も勝てなかった。」大将を任されることが多かった二見。そのため、二見の結果次第でチームの勝敗が決まるという場面が何度かあったが、白星を挙げることはできなかった。


激しく攻める二見

 「やるのもやらないのも自分次第。やらなかったらその分、練習にも試合にも結果が出てしまう」。『自主性を重んじる』早大相撲部。魅力だったその部分にこそ、落とし穴があったのだ。「1年生のときは甘い考えがあった。試合に出場して、高校と大学の差を突きつけられた」と当時を振り返る。ここ一番で勝つことができない、そんな経験が二見の意識を大きく変えていく。2年生からは積極的に自主トレを行うように。「自分を律する力が身についた」と力強く語った。そして、ついに歓喜の瞬間が訪れる。3年時の東日本学生選手権、団体Bクラス決勝戦。一進一退の攻防が続き、2-2に。運命は大将・二見に託された。そんな場面でも二見は落ち着いていた。相手の足がそろうと反応良くはたきこみ、白星をつかみ取った。優勝を決めたその瞬間、すぐさま後ろを振り向き、チームにガッツポーズを見せた。「1年生の時に大将で苦い経験があったからこそ、この勝利が嬉しかった」と語る。実に10年ぶりという快挙達成であった。

 迎えたラストイヤーは、個人としても、チームとしても数多くの困難に直面した。主将としてのあり方を模索する日々だったと二見は振り返る。「4年生1人ということもあって難しかった」というチームの雰囲気作りに意識的に取り組んだ。その成果は、取材時に後輩たちが口にしていた言葉に表れていた。『今の相撲部の良い雰囲気は、二見さんから優しさから』。

 4月からは社会人として、新たな一歩を踏み出す二見。持ち前の優しさと相撲で培った力を武器に、これからも道を切り開いていく。

(記事 渡邉里奈、写真 大貫潤太)