セ・リーグは広島が、パ・リーグは楽天が好スタートを切りました。特に楽天は4月後半の時点で二ケタの貯金を積み上げるなど、昨季5位に沈んだチームとは思えない好調ぶりで春の戦国パ・リーグを盛り上げています。さて、今回はデータ分析というよりも統計…

 セ・リーグは広島が、パ・リーグは楽天が好スタートを切りました。特に楽天は4月後半の時点で二ケタの貯金を積み上げるなど、昨季5位に沈んだチームとは思えない好調ぶりで春の戦国パ・リーグを盛り上げています。さて、今回はデータ分析というよりも統計、集計にカテゴリーされるテーマです。すなわち、25試合を終えた時点で勝率トップのチームが、どれくらいの割合でリーグ優勝までたどり着けたのか。2007年からの過去10年の両リーグのデータを用いて集計しました。

 結論はすでに本稿のタイトルとなっていますが、逃げ切る確率は31.8%。これを低いと見るか高いと見るかは難しいところですが、おおむねシーズン折り返しの地点である75試合終了時点の勝率トップチームでも優勝確率57.1%(!)という結果を見ると、それなりに妥当な数字であるのかもしれません。付け加えると25試合時点での勝率の高さは、シーズンの結果とそれほど関係が無いようです。その時点で勝率7割越えのチームは4チームありましたが、結果的に優勝できたのは2009年の巨人ただ1チームだけでした。

■独走で逃げ切った“ウサギさんチーム”

 この10年間で、25試合終了時点で勝率トップかつ、シーズンを制したチームは7チーム。中でも巨人は3回この記録を達成していて、チームのマスコットよろしく“ウサギさんチーム”と呼ぶのにぴったりでした。先に挙がった2009年のシーズンでは、25試合終了時点で16勝7敗2分の勝率.696。その後シーズン中盤にかけて徐々に勝率を下げていき一時は中日の接近を許しましたが、最後は振りきって12ゲーム差をつけてのペナント制覇でした。この年の巨人はクライマックスシリーズで中日を退けて日本シリーズに進出すると、日本ハムを4勝2敗で下して7年ぶりに日本一となりました。2015年のヤクルトのように一時は5位(55試合終了時点、勝率.463)まで順位を落としながらV字回復したケースもありますが、こうした例はまれで、おおむね序盤のアドバンテージを生かして優勝まで駆け抜けていました。

■じわじわ追い上げる“亀さんチーム”

 25試合時点での勝率が4位以下で、かつリーグ優勝を達成したのは4チーム。さすがに逃げ切りチームよりも少ないですが、「意外とあるじゃないか」と思われる方も少なくないかもしれません。やはり目立っているのが勝率.364の6位から逆転優勝を飾った2007年の日本ハム。一時は6連敗を記録するなど苦しいスタートを余儀なくされたものの、5月から6月にかけて怒涛の14連勝(当時チーム記録)を飾るなど持ち直しに成功。55試合時点で3位、75試合時点では1位に躍り出てそのままペナントレースを制しました。同年の25試合時点首位だった西武は早々に貯金を吐き出し、55試合時点で借金生活に転落。その後も春先の調子を取り戻すことはかなわず、結局Bクラスでシーズンを終えています。

 大逆転Vの2007年日本ハムは、前年日本一となりながら春先に借金を重ねた点で今季の日本ハムに通じるところがあります。大型連敗で苦しい現状ですが、いちるの望みが残されていることはデータが示しているだけでなく、当時の記憶としてファンの心にもいまだ鮮明に残されているのではないでしょうか。

※データは2017年4月26日現在

文:データスタジアム株式会社
グラフィックデザイン:相河俊介