4年連続決勝進出で3年ぶりの選手権制覇、驚異的な強さを考察 100回目の全国高校サッカー選手権が10日に決勝を迎え、4年…
4年連続決勝進出で3年ぶりの選手権制覇、驚異的な強さを考察
100回目の全国高校サッカー選手権が10日に決勝を迎え、4年連続ファイナリストとなった青森山田が3年ぶり3度目の頂点に輝く形で閉幕となった。
大会前から断トツの評価を受けていた青森山田だが、その点は準優勝に終わった昨年、一昨年と同じこと。ただ、大会前から黒田剛監督が「過去2大会とは手応えが違う。今年のチームには自信がある」と語っていたとおり、ワンランク上のパフォーマンスを披露。絶対的な優勝候補として「選手たちは相当大きなプレッシャーを感じていたと思う」という状況で、心身両面の強さを見せ切って栄冠を勝ち取った。
2016年度の初優勝以降、高校サッカー選手権には「青森山田時代」が到来していると言っていいだろう。今回で4大会連続の決勝進出となったが、この4大会で連続して4強に残ったチームは青森山田以外に存在せず、帝京長岡と矢板中央が2回ずつ残っているのみ。毎年選手が入れ替わる高校スポーツであり、偶発的要素も多いサッカーのトーナメント戦で2回4強に残っているだけでも驚異的であるにもかかわらず、常に決勝まで勝ち残っているのだから明らかにイレギュラーだ。
私立校だから施設に恵まれている? 確かに一面の事実である。公式戦開催可能な規格の人工芝グラウンドを中学校と共用ながら持っているし、ウエイトトレーニングなどの器具も充実している。しかし現代でこうした高校は別に珍しくもない。決勝の相手となったのは熊本県立の大津だが、こちらも人工芝グラウンドで常時練習や試合を可能。近年、各地で人工芝グラウンドの整備が進んでおり、施設面で青森山田に特段のアドバンテージはない。
選手に関しても、いわゆる「選手集め」にはむしろ苦労している印象のほうが強い。雪の中でのハードトレーニングや厳格な寮生活が有名になっている青森山田は敬遠される部分もあり、中学年代の有力選手との競合では敗れることが多いのだ。今回の優勝メンバーも、中学年代から日の丸を付けた経験を持つMF松木玖生やMF小原由敬のような選手もいるが、むしろ中学時代は控えに回っていたり無名だった選手が少なくない。
その意味で言えば、「中等部」の存在が大きいのは間違いない。日本代表MF柴崎岳(レガネス)という出世株を生み出して以降、「青森山田中学校→青森山田高校」の6年間というスパンでの育成は、この高校の大きな武器となっている。決勝の先発メンバーには、松木とJ2のFC町田ゼルビア内定のMF宇野禅斗の二枚看板を筆頭に、中学校から育った選手がズラリと並ぶ。セットプレーの仕掛け人としてアシストを量産したMF藤森颯太、中学時代は控えだったところから這い上がったMF田澤夢積の両翼は共に青森県の出身、そして群馬のクラブチームのセレクションを落ちた後、たまたま青森に単身赴任していた父親の勧めで青森山田中を受験したDF三輪椋平も6年間の切磋琢磨で大きく力を伸ばした選手だ。
黒田監督が考える「良いバランス」を今年度のチームが実現
以前、黒田監督は「(中等部出身者が)多すぎてもダメだし、少なすぎてもダメだと思っている」と語っている。下から上がってくる選手だけで構成するようではチームがマンネリ化し、高校で外からスカウトしてくる選手だけではチームに骨がなくなる。その時「良いバランスは半々くらい」とも言っていたのだが、今年のチームは図らずもそのさじ加減に落ち着いた。黒田監督自身が中学校の指導にもあたって6年スパンの育成を機能させつつ、高校から入ってきた選手たちとタフな競争をさせてお互いを伸ばしていく。この流れが機能している。
中高一貫での指導を謳うチームは増加傾向だが、このバランスが良くないチームが少なくないようにも感じる。また松木が中学生でいち早く高校の練習に混ざり、試合出場も経験していたことから分かるように、中高の風通しの良さもポジティブな要素だろう。
青森山田高校の試合を青森まで観に行くと、必ず目をキラキラさせながら先輩たちの姿を食い入るように見つめる中学生たちに出会うのだが、松木の背中を追う選手から第2の松木が出てくるのも、そう遠い日ではないと確信させられる。また、高校の選手たちにとっても、「自分たちは憧れられている存在である」というのは己を律する意識を高めるので、自ずと相乗効果があるのも見逃せないと感じている。
年度ごとに大きく勢力図が変わるのが高校サッカーの常。そのなかで地力を維持しつつ、今年最大級のブレイクスルーを遂げた青森山田には敬意を抱くほかない。もっとも、この「青森山田時代」を良しとしない学校は全国に数多い。またガラリと選手が入れ替わる来季の勢力図がどうなるかは、まだ見えてきてはいない。(川端 暁彦 / Akihiko Kawabata)