約10カ月先のドラフト戦線を予想するのは至難の業だ。

 2021年ドラフト会議で4球団から重複1位指名を受けた隅田知一郎(西日本工業大→西武1位)にしても、昨秋時点ではドラフト上位候補のひとりにすぎなかった。一方、秋の段階でスカウト陣の評価が高い選手でも、春になって大きく評価を落とすケースも珍しくない。

 わずかな期間で評価が乱高下する。それがアマチュア野球ならではの不安定さであり、醍醐味でもある。

 現時点では、2022年のドラフト会議の目玉になる大看板は見当たらない。それでも、今後ドラフト1位候補になりうる逸材をカテゴリー別に紹介していこう。




昨年夏の甲子園に出場し、投打で活躍した近江の山田陽翔

 

【近畿地方に有望選手が集結】

 高校生では、野球どころ・近畿地方に今年も有望選手が目立つ。なかでも森下瑠大(京都国際)、山田陽翔(近江)はひと冬越えての進化が期待できる選手だ。

 森下は2021年に2年生エースとして甲子園春夏連続出場を経験。とくに夏はベスト4進出の立役者になった。ストレートの球速は最速143キロながら、重力に逆らうように捕手のミットを突き上げる好球質。カットボール、スローカーブ、チェンジアップなどの変化球の精度、コントロールもよく、先発タイプの左腕という希少性もある。平均球速が上がってくれば、ドラフト1位候補に浮上する可能性は高い。

 山田も2021年夏の甲子園で中心投手としてベスト4を経験。だが、投手としては右ヒジ疲労骨折を負うなど、派手なアピールができたわけではない。むしろ夏の甲子園や秋の近畿大会で本塁打を放った打撃力が目を引いた。打席で悠然と構える姿は中田翔(巨人)を彷彿とさせる。右の強打者はプロでも希少だけに、スカウト陣の徹底マークは続くだろう。ただし、本人は強烈な投手志向を秘めている。ヒジの癒えた今春以降に見違えるような姿で、評価を一変させられるだろうか。

 京都国際も近江も昨秋の近畿大会ベスト8で敗退しており、今春の選抜高校野球大会(センバツ)への出場は約束された立場ではない。とはいえ、大阪桐蔭が明治神宮大会で優勝して神宮枠がもたらされ、近畿地区の出場枠は7に拡大された。両校とも出場となれば、センバツの目玉選手になりそうだ。



昨年夏の甲子園で本塁打を放った高松商のスラッガー・浅野翔吾

 投打に豊かな才能を秘める選手では、田中晴也(日本文理)も要注意だ。2年夏の甲子園では初戦で敦賀気比に打ち込まれて敗れたものの、自己最速の147キロをマーク。185センチ82キロの恵まれた肉体に、しなやかな腕の振りと爆発力のあるリリース。夏の新潟大会で2本塁打を放った柔らかいスイングにも将来性が感じられる。今春の仕上がり次第ではドラフトの主役になりうる好素材だ。

 野手なら山田とともに右のスラッガーである浅野翔吾(高松商)が見逃せない。2021年夏の甲子園で本塁打を放った長打力が魅力で、高校通算44本塁打。身長171センチ、体重86キロと上背はないものの、飛距離を伸ばすセンスは高校生レベルを超えている。最近はスイッチヒッターにも挑戦しており、左打席でも3本塁打を放っている。2021年12月にはイチローから指導を受ける機会があり、今後の野球人生での大きな糧になりそうだ。

【東京六大学0勝の大型右腕】

 大学生の筆頭格は投打に高い能力を示す二刀流・矢澤宏太(日本体育大)だ。身長173センチ、体重70キロと体格的に際立つものはないものの、とにかく身体能力が図抜けている。投手としては最速150キロをマークし、2種類のスライダーを武器にする。野手としては打球にパワーを伝えられる打撃に、走守もプロで武器にできるほどハイレベル。2021年12月の大学日本代表候補合宿では、50メートル走(光電管計測機を使用)で候補選手トップの5秒80のタイムを叩き出した。

 現時点では野手として評価するスカウトが目立つが、投手としても着実に成長している。大谷翔平(エンゼルス)に続く本格的な二刀流誕生も夢ではない。

 右投手では1年時から存在感を見せてきた加藤泰靖(上武大)に期待したい。馬力のある最速153キロの本格派右腕で、カーブ、スライダー、フォーク、ツーシーム、カットボールと多彩な変化球も操れる。2021年6月の大学選手権では隅田に投げ勝ち、完封勝利を挙げた。最終学年にもうひと化けできれば、ドラフト1位指名も現実味を帯びてくる。



立教大の大型右腕・荘司康誠

 大穴のドラフト1位候補として名前を挙げたいのは荘司康誠(立教大)だ。3年秋まで東京六大学リーグ通算0勝と実績は乏しいものの、モノのよさは大学屈指。身長188センチ、体重90キロの大型右腕で、最速151キロの快速球に高速帯で横滑りするスライダーが光る。今秋のリーグ戦は好投しながらも、勝ち星に恵まれない試合が目立った。今後は完投できるだけの精度とベンチからの信頼を勝ち取れれば、自然とスカウト陣の評価も急騰するはずだ。

 大学生野手は楽しみな逸材がひしめく。とくに需要の高い右打者は山田健太(立教大)、森下翔太(中央大)が双璧になりそうだ。

 山田は大阪桐蔭高で根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)と同期で甲子園春夏連覇を経験。立教大では3年秋まで通算62安打、7本塁打、打率.301を記録している。ツボにはまれば一発長打があるだけでなく、2ストライクに追い込まれたあとのコンタクト能力も高く、簡単にアウトにならない。二塁守備が徐々に向上している点も、高評価につながりそうだ。

 森下は大学1年時から大学日本代表に選ばれるなど注目されたが、2年以降はやや足踏みが続く。走攻守にエンジンの大きさを感じる外野手で、能力的には大学球界の顔になってもらわなくては困る。大学の偉大な先輩・牧秀悟(DeNA)に続く右打者として、来季は一皮剥けてほしい。

 左打ちの強打者なら蛭間拓哉(早稲田大)が筆頭格。インパクトの爆発力があり、打球音がひとりだけ違う。2年秋の早慶戦で放った逆転2ラン本塁打は、今後も語り継がれるであろう伝説的な一打だった。東京六大学リーグ通算10本塁打をマークしており、低く鋭い軌道のスローイングも隠れた武器だ。

【都市対抗の好投で評価急上昇】

 社会人では高卒2年目にして社会人ベストナインを受賞した河野佳(大阪ガス)が頭ひとつ抜けた存在だ。20歳とは思えない落ち着いたマウンドさばきで、コントロール、1球ごとの精度ともプロ即戦力に近い。長所をキープしつつもう一段スケールアップできれば、ドラフト1位指名は堅いだろう。



大学4年秋から台頭してきた遅咲き左腕のHonda・片山皓心

 最後に名前を挙げたいのは、片山皓心(Honda)だ。大学4年秋から台頭してきた遅咲きの左腕で、打者のバットを押し込む強いストレートに右打者の外角へ落ちていくチェンジアップを武器にする。日本選手権以降に状態を落としたものの、能力は高いだけに来季は年間通してコンスタントなパフォーマンスが求められる。

 現時点での状況から12名の名前を挙げたが、あくまで途中経過にすぎない。当然ながら、春以降にドラフト上位戦線に急浮上する存在が現れるはずだ。今回名前を挙げた12選手の進化と新鋭の出現を心待ちにしながら、2022年の球春を待とう。