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■8試合で10失策

 開幕戦で3失策。続く第2戦で4失策。開幕早々、阪神タイガースの守備が乱れている。開幕8試合時点での失策数は10を数え、守備率はリーグワーストの.968(表1)。開幕2試合で計18得点を記録するなど好調な打線の陰に隠れがちだが、シーズンの戦いを見据える上でエラーの多さは不安な要素だ。

 また、気になるのはエラーの多さだけではない。本塁打を除き、フィールド内に飛んだ打球がアウトになる割合を示すDERでもリーグワーストの.637(表2)。DERの計算式は非常にシンプルだが、チームとして「打球をアウトとして処理できるかどうか」を表しているため、守備率よりもチームの守備力を評価する上で適切であるとされている。DERの結果に従うと阪神の守備陣はエラーの多さのみならず、純粋に打球をアウトとして処理する確率が低い事実を示唆している。

 守備の評価については主に捕球ゾーンをベースとした守備指標であるUZR(Ultimate Zone Rating)の発展や、野手の動きをレーダーでトラッキングしてデータ化したStatcastの登場など、分析の高度化が現在進行形で進んでいる分野だ。DERは野手個人の詳細な守備力の評価には不向きだが、チームとしての打球処理能力の傾向をつかむ上では十分に機能する。算出が容易なことに加え一定以上の母数を確保できるメリットもあり、現在でも守備力の評価を行う上で説得力を持った指標となっている。

 DERは本塁打を除く全打球を対象としているが、もう少し対象を絞ってゴロによる打球処理の実態を見てみたい。今季の阪神投手陣が打たせたゴロ(ファウルを除く)の数は102で、うち70を凡打として処理。割合は68.6%のリーグ5位で、トップの巨人(82.5%)と10%以上の差をつけられた(表3)。ゴロの打球に対して責任を負うのは基本的に内野陣であり、鳥谷敬(三塁手)、北條史也(遊撃手)、上本博紀(二塁手)、原口文仁(一塁手)らのゴロに対する対処のまずさがチームのDERの低さの一因と言える。

■天然芝がエラーの呼び水?

 ここで今季の阪神の開幕からの試合結果一覧を参照すると、あることに気付く(表4)。10のエラーのうち8つが天然芝のマツダスタジアムで行われた開幕3連戦に集中していて、そのうち投手を含む内野の選手のエラーが6つを占める。一方で人工芝の京セラドーム大阪で行われた次カードのヤクルト3連戦では、エラーを1つ(遊撃手・北條のファンブル)にとどめている。これは偶然だろうか?

 天然芝の球場は打球が不規則に変化したり雨風など天候の影響を受けるため、守るのが難しいという認識が一般的だ。例えば甲子園の内野はすべて土のグラウンドで、イレギュラーバウンドなどに手間取るプロの選手や高校球児の姿を脳裏に浮かべるのはそう難しくもない。マツダスタジアムの内野も土と天然芝の混合で、特に内野の守備位置付近は土で覆われたフィールドとなっている。もし阪神の開幕3連戦の守備の乱れが環境に関係するものであるとすれば、その点を割り引いて評価を行う必要がある。

 ただし、天然芝球場におけるプレーに対して本当に割り引きを行うべきなのか、議論の余地がある。阪神の過去4年分の球場別ゴロ打球処理割合を当たると、甲子園やマツダスタジアムでの数字は極端に低いものではなかった(表5)。人工芝のナゴヤドームや東京ドームの数字との差は最大で2.5%程度にとどまっていて、同じく人工芝の神宮の数字は甲子園やマツダスタジアムよりもむしろ低い。

■ゴロを処理する難しさにほとんど差はない

 阪神の守備陣のデータだけではスタジアム間の適切な比較はできないため、パークファクターという球場の特性を測る指標の手法を借りることにする(表6)。パークファクターとはある球場での特定の数値が他の球場よりもどの程度偏っているかを見積もる指標で、チーム単位ではなく球場単位で数値を算出するためにホームチームの特性に大きな影響を受けにくい。

 甲子園を例にとると、阪神主催の甲子園の試合の敵味方合わせたゴロ処理割合を「Home」として計算。さらに阪神がビジターとして行った他の本拠地球場での試合の、敵味方のゴロ処理割合を「Visitor」として計算し、これを「Home」で割った数字がパークファクターとなる。1を超えれば本拠地のゴロ処理割合が高くなる傾向を示し、1を下回ればその反対となる。端的に数字が大きいほどゴロの打球に対して守りやすい球場であると言える。

 甲子園のパークファクターの値は0.99。環境による影響は少なく、ほとんど無視してもいいと考えられるレベルだった。最も低い値のマツダスタジアムでも0.97と差は小さく、仮に影響があったとしてもほんのわずかな違いにとどまるものと見られる。天然芝球場特有の処理の難しい打球の発生確率は、他の人工芝球場でも起こりうる“内野手にとっての不運な当たり”の発生確率に吸収できてしまう程度の小さなもの、という解釈が妥当なのかもしれない。

 データによって導き出された結論として、天然芝球場でプレーするプロの選手たちは、少なくともゴロの処理に関してハンデを負うものではない。開幕戦での阪神内野陣によるエラーの連発も環境による過分な影響は考えづらく、開幕直後の緊張などによるメンタル面での影響や、ミスが偶然続いてしまったと考える方がもっともらしい。一方、表2で示したエラーによる影響だけではないDERの低さはやはり大きな懸念事項だ。開幕してまだ間もないため今後改善されていく可能性も十分に考えられるが、2年目の金本阪神の行く末を占う上で、引き続き注目していきたいポイントとなる。

※データは2017年4月10日現在

文:データスタジアム株式会社 佐々木 浩哉