ゲーム配信者としての生活や収入、キャリアを語るみしぇる氏 バトルロイヤルゲーム『PUBG MOBILE(PUBGモバイル)』を中心に配信者として活動する「みしぇる」。会社員として働きながら、2021年1月には田中将大主催のPUBGモバイル大…



ゲーム配信者としての生活や収入、キャリアを語るみしぇる氏

 バトルロイヤルゲーム『PUBG MOBILE(PUBGモバイル)』を中心に配信者として活動する「みしぇる」。会社員として働きながら、2021年1月には田中将大主催のPUBGモバイル大会「マー君杯2021」をプロデュースし、コミュニティーに空前の盛り上がりをもたらした。

 配信の他にも選手やキャスターとしても活躍中のみしぇるだが、現在に至るまでさまざまな苦悩があったという。成功までのプロセスや配信者としての収入、そしてみしぇるが実践し続けている「二足のわらじ」のメリットについて聞いた。

―― 配信で一時は10人程度まで視聴者数が落ち込みましたが、PUBGモバイルに移行して好転したということでした。どんな理由があったんですか。

 2018年10月のPUBGモバイルのアジア大会に出場できたことが転機でした。実は日本代表の最後の1人に選ばれての出場だったんです。PUBGモバイルの日本有数のインフルエンサー3人の出場が決まっていたんですが、「あと1人メンバーを募集している」というツイートを見て「これだ」と思って迷わず応募したんです。

 僕はその頃、何万人ものプレーヤーが参加するPUBGモバイルのアジアサーバーで20位以内にランクインしていたこともあり、アピールできるポイントはあったと思います。そうしたら応募から数分後に「あなたに決めました」と連絡があり、アジア大会に出場することになったんです。

――相当プレッシャーを感じる状況ですよね。

 実はあまり引け目を感じることはなくて、他のメンバーの期待に応えることで頭がいっぱいでした。僕はIGL(インゲームリーダー=ゲームプレーにおける司令塔)を任せられていたんですが、みんなが一丸となって動けたことで、結果的にアジア大会で4位という好成績を残せました。

 この結果が国内のコミュニティーにとっては異常事態だったようで、帰国すると「時の人」のように迎えられたんです。アジア大会の直前は配信で10人集まればいいほうだったのですが、大会直後は瞬間的に2000人あまりの方に集まっていただけるようになりました。あまりにも状況が変わって唖然としましたね。

――すさまじい反響ですね。

 ただ僕は会社員として仕事をしていたこと、ストリーマーとしての限界を感じていたことで、このアジア大会を卒業イベントと捉えていました。視聴者のみなさんには「今後はプレー時間が減ると思う」と伝えていましたが、僕の中では、時間に余裕のある会社に転職すればうまく両立できるかもしれないと考えていたんです。

 そんなときに当時の視聴者でもあり、現在の広告代理店の社長から、「広告の勉強をしながら配信もして、配信から仕事につながるような活動ができるか挑戦してみたら」と声をかけていただきました。それがきっかけでその広告代理店へ転職しました。

――普段はどのようなスケジュールで活動されているのですか。

 配信は1日に2回行なっていて、1回目は10~13時あたり。14時頃に出社して21時頃まで仕事。帰宅してから22~深夜2時くらいまで2回目の配信をします。そして投稿用の動画を1時間半ほど撮影し、次の日の仕事を準備しつつ日記を書いて......。寝るのは4時くらい。平日はだいたいこのルーチンですね。

――配信するためには、さまざまな機材が必要になりますが、みしぇるさんはどのくらい投資したのでしょうか。

 今ではスマホ1台でも配信はできますが、高品質な配信となると、いろいろと必要になりますね。僕が最初に買ったPCは20~30万円。ゲーミングマウスやキーボードが数万円。マイクなどもそろえたくなってまた数万円。デスク上が一段落すると、机や椅子が気になってきます。まさに雪だるま式ですね。全体で40~50万円ほどでしょうか。

 ただこれは初期投資の話で、今はスポンサー契約によって提供いただいているデバイスで、ゲーム環境を整えています。

――音響機器メーカーの「SHURE(シュア)」と契約されていますが、同社がゲーム関連でスポンサーをしているケースは珍しいですよね。

 ミュージシャン以外では世界初の専属契約だそうです。僕はかなり前からSHUREのイヤホンを使っていて、アジア大会直後の配信で「SHUREがいい」と薦めたことがあったんです。すると視聴者さんもTwitterで購入報告をしてくれるなど、かなり大きな反響がありました。

 また、2019年の世界大会でも大会直後の配信で改めてSHUREさんを薦めました。そうしたら、また爆売れしたみたいなんです。当時複数のメーカーさんから御一緒できないかというお話もありましたが、SHUREさんに専属契約を結んでいただきました。

――現時点で「配信者」としての収入はどれくらいですか。

 配信による広告収入が新卒1年目くらい。スポンサー契約がSHUREさんとゲーミングPC「OMEN by HP(オーメン・バイ・エイチピー)」さんの2つで、合わせると一般的な会社の中間管理職くらい。

 イベント出演や講演会等は変動が大きく、今年は大小合わせて40本は出演しています。また、「1ヶ月ほどこれを使ってほしい」という短期的な契約をいただくこともあり、おおよそ半年くらいは何らかのスポット契約を結んでいます。

――そういったお仕事をする上でさまざまな交渉が発生すると思いますが、心掛けていることはありますか。

 能動的に提案することですね。お仕事のお話が来たとしても、ご提案をそのまま受け入れると単発で終わってしまったり、ステマのようになってしまう場合もあります。あくまで私の主観ですが、ファンの方々は「これは明らかな案件だな」とか、「仕事として言わされているな」というのをかなり敏感に感じ取ります。その時点で、そのお仕事って失敗になってしまうと思います。

 これでは企業さんも視聴者さんも幸せになれないですよね。紹介した製品等を実際に手に取りお金を出すのはファンの方々です。そんな方々の期待を裏切らないことを、常に意識しています。

 なかには、短期間で一生分の生計を立てられるほどの成果を出せる方がいると思います。それはご自身が引き寄せた運や縁が大きく関係すると思います。私自身も、今の生活ができているのは、運が大きく関係していると思っていて、刹那的に稼ぐセンスが自分にないことも自覚しています。

 一方で、現在のeスポーツ業界は刹那的な活動にすべてを懸けてしまう傾向にあると感じていて、そのために学校や仕事を辞める人も多い。多くのプロゲーマー、配信者にとってのピークは20~40代で、それ以降のことも考えて、長い目でキャリアを考えておかないと、将来後悔することになるかもしれません。

 プロゲーマーやゲームクリエイターになりたいという子を持つ親御様にとっても、長期的に生きていける業界だと感じなければ、安心して送り出せないと思います。

 私は仕事を続けながら世界大会に3度出場しましたし、アジア4位、世界9位、今年は個人戦で世界2位でした。忙しさは年々増していますが、成績はキープし続けたいと思っています。学業や本業との両立に悩んでいる、もしくはゲーム1本に絞ることに不安を感じている、そんな人たちのロールモデルになりたいですね。

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【Profile】
みしぇる
1989年生まれ、北海道出身。PUBGモバイルを中心にモバイルゲームの配信、初心者から中級者向けに解説動画を投稿中。またPUBGモバイルの選手活動も行ないつつ、大会・イベントなどでキャスターも務める。普段は広告代理店に勤務し、イベント企画、eスポーツ事業の総合プロデュースなどを担当する。
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