チーム事情から見るドラフト戦略2021~オリックス編 今シーズンのオリックスの戦いぶりは、見事というしかない。10月5日現在、64勝49敗16分でパ・リーグ首位の成績はもちろんなのだが、それ以上に「戦い方」だ。 これまでファームでくすぶって…

チーム事情から見るドラフト戦略2021~オリックス編

 今シーズンのオリックスの戦いぶりは、見事というしかない。10月5日現在、64勝49敗16分でパ・リーグ首位の成績はもちろんなのだが、それ以上に「戦い方」だ。

 これまでファームでくすぶっていた選手たちを一軍のゲームでレギュラーとして起用し、しかも辛抱強く使い続ける。今やチームにとって欠くことのできない存在となった杉本裕太郎や宗佑磨がまさにその筆頭である。彼らの働きがチームのエネルギーとなり、ペナントレースを戦う原動力となった。もちろん、山本由伸と吉田正尚という投打の軸はいたが、今までの常識を覆すような斬新な戦術は、ほかのチームも大いに勉強になったはずだ。

 また、若手の抜擢も同様である。入団2年目の宮城大弥を先発ローテーションで起用し、ここまで12勝をマーク。左のエース格と呼ばれるまで成長を遂げた。

 同じく2年目の紅林弘太郎もショートのレギュラーとして起用し、ここまで123試合に出場している。

 これまでは、高卒選手は2、3年ファームでしっかり鍛えて......という球界の常識のようなものがあったが、使えそうと思った選手は迷わず使ってみて、そこからどう育てるかを考えればいい。そんな発想に見事にハマったのが宮城であり、紅林であり、ルーキーの来田涼斗も同様の路線で、一軍での"成功体験"を積んだ。

 今季のオリックスを見ていると、一軍と二軍の境を感じない。昔から、一軍と二軍の間には高い壁があって、そこをクリアするのは難しいことだと聞かされ、信じてきたが、今シーズンのオリックスを見ていると、「じつは壁なんて存在しないのではないか......」と思ってしまうほどだ。

 指揮官である中嶋聡監督は、昨シーズン途中で二軍監督から一軍監督に転じた。そうした経緯もあって、二軍でプレーしていた能力ある選手たちを積極的に起用できたのだろう。

 案外、一軍監督というのは二軍のことをわかっていないのではないか。当然、報告は上がってくるが、とくにシーズン中は忙しく、二軍選手の詳細まで手が回らないのが実情だろう。



将来はメジャーリーガーになってサイ・ヤング賞を獲るのが目標と語る天理の達孝太

 ドラフトでも、近年のオリックスは「今までと違うぞ!」という姿勢を見せていた。即戦力に飛びつきたくなるような選手がいるにもかかわらず、将来性を見込んで、有望な高校生を積極的に指名。その新鋭たちが着々と力をつけ、今季の台頭となった。

 その路線は今年も継続するはずだ。

 とくに今年の高校生は、好投手が目白押しだ。市和歌山の小園健太(右投右打)を指名するのもいいし、天理の大型右腕・達孝太(右投右打)の一本釣りを狙うのもありだろう。

 現時点での総合力では小園が上だろうが、たとえば5年後の姿を想像した時、とんでもない"怪物"になっているのは達かもしれない。

 さらに大阪桐蔭の松浦慶斗(左投左打)、関東一高・市川祐(右投右打)、九州国際大付の山本大揮(右投右打)......彼らはすでに150キロ前後のボールを投げ、スライダー、カットボール、スプリットなど、変化球も操れる実戦力を持った投手だ。将来性という部分では大いに期待できる逸材である。

 野手は、吉田の活躍はもちろん、貴重な長距離砲であるT−岡田が復活の兆しを見せているが、将来の主軸候補は指名しておきたい。

 愛工大名電の田村俊介(左投左打)は、「吉田正尚の後継者」になれる可能性を秘めた選手だ。夏の甲子園で放った一発は記憶に新しいが、とにかくスイングに力がある。先述した来田もそうだが、振れる選手というのは成長が早いように思う。

 また、この夏の甲子園でグッと評価を上げたのが、智辯学園の前川右京(左投左打)だ。ツボにハマれば甲子園の中段まで軽々と運ぶパワーを持ち、タイミングを外されても軸は崩さず、バットコントロールのうまさでヒットゾーンに運んでしまう器用さも兼ね備える強打者だ。将来のクリーンアップの期待がかかる。

 今年もブレずに有望な高校生を積極的に指名できるか。本当の意味での"復活"はそこにかかっている。