ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」 僕が現役時、カルストンライトオでGIスプリンターズS(中山・芝120…

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 僕が現役時、カルストンライトオでGIスプリンターズS(中山・芝1200m)を勝ったのは2004年。もう17年も前のことになります。時が経つのは本当に早いものです。もしかすると、そのことを覚えているファンの方々も少なくなってきているのかもしれませんね。

 でも、僕自身は当時のことを今なお、鮮明に覚えています。その前日の昼間は晴れていて良馬場だったのですが、夜から雨となってレース当日の芝コースは朝から重馬場。雨はそのまま降り続いて、昼には不良馬場となっていました。

 その日の僕の騎乗は、このGIレースのみ。いわゆる"1頭入魂"でした。そのため、事前に馬場を確認することは当然できません。しかし、騎乗馬であるカルストンライトオは馬場がどんな状況であっても"戦法"はただひとつ。この馬の競馬である逃げに徹するだけでした。

 それが、好結果につながったひとつの要因であることは間違いありません。もし差しタイプの馬だったら、コースのどの辺りが伸びやすいのかとか、いろいろと気にする必要があったのでしょうからね。

 さて、今年のスプリンターズS(10月3日)。台風が直撃しなかったことは幸いですが、その影響がどの程度あるのか、考慮しておくことは必要でしょう。コンマ1秒を争うスプリント戦。速い馬場となるのか、多少時計のかかる馬場になるのか、予想をするうえでは重要なファクターになりますから。

 また、このレースにおいては自分の経験上、どうしても逃げ馬と、その馬に乗る騎手に目がいってしまいます。

 まずはモズスーパーフレア(牝6歳)。ここまでずっと逃げを貫いてきているので、いきなり別の乗り方をすることは考えられません。今年もおそらく逃げることになるでしょう。ただ、ビアンフェ(せん4歳)もできればハナをきりたい馬。そうなると、昨年同様、熾烈な逃げ争いが展開されることになりそうですね。

 そうしたなか、気になるのはメイケイエール(牝3歳)の存在。今回はテン乗りで池添謙一騎手が手綱をとることになりますが、誰が乗っても抑えが利かずに持っていかれてしまいます。つまり、今回はこの馬も先手争いに加わってくる可能性が高いです。とすると、前の争いは一段と激しさを増して、逃げ馬にとっては相当苦しい展開が予想されます。

 そんな苛烈な逃げ争いを尻目に、クリストフ・ルメール騎手が騎乗するレシステンシア(牝4歳)は、そこから少し離れた2列目の先頭あたりで、虎視眈々と抜け出すタイミングを図る感じになるのでしょうか。そして、それをマークするような形でピクシーナイト(牡3歳)、ダノンスマッシュ(牡6歳)、クリノガウディー(牡5歳)ら有力馬が続いていく形になっていくのでしょう。

 僕は、この第2集団の馬たちが上位争いを演じるのではないか、と踏んでいます。なかでも、最も惹かれるのはクリノガウディーです。3走前に岩田康誠騎手とコンビを組んでから、かなり復調してきました。

 前走のGIIセントウルS(3着。9月12日/中京・芝1200m)では道中、勝ったレシステンシアの真後ろで同馬をマークするように追走。最後までその差は詰まらなかったものの、岩田騎手はあの乗り方で「逆転するには何が必要か」を感じ取ったはず。今回、先に動くレシステンシアに対して、追い出しをワンテンポ遅らせれば、うまくハマるのではないかと見ています。

 2018年のGI天皇賞・春(レインボーライン)を最後に、GI勝利から遠ざかっている岩田騎手。久しぶりのチャンスを迎えて、何か期するものが膨らんでいても不思議ではありません。楽しみです。



昨年に続いて大駆けが見込まれているアウィルアウェイ

"大穴"なら、その第2集団よりもさらに後方に控えて、一発を狙っている面々でしょう。昨年3着のアウィルアウェイ(牝5歳)などは"もう一丁"があってもおかしくありません。

 今年で5歳となりましたが、2走前のGIIICBC賞(7月4日/小倉・芝1200m)では3着と奮闘。その走りからは、ここでも有力馬に挙げられるピクシーナイト(2着)との差を感じませんでしたし、今回は腹をくくった騎乗ができる戸崎圭太騎手に乗り替わるのも魅力です。

 昨年同様、いやそれ以上の急流が予想される今年の一戦。無欲の追い込み馬が再び波乱を演出する可能性は大いにあります。

 後方一気のタイプではシヴァージ(牡6歳)も面白いと思いましたが、中山コースが初めての馬よりは、一度実績を残している馬のほうが信頼度は高いと見ました。よって、今回はアウィルアウェイを「ヒモ穴馬」に指名したいと思います。ただ、余力があれば、シヴァージも押さえておきたいところです。