前回に引き続き、2000年のシドニー五輪から5大会連続で体操日本男子代表コーチを務め、多くの金メダリストを育ててきた森泉貴博コーチのコーチング法をクローズアップする。そこには私たちが日頃の生活を送る上でも大事なヒントが隠されていた。・今す…

 前回に引き続き、2000年のシドニー五輪から5大会連続で体操日本男子代表コーチを務め、多くの金メダリストを育ててきた森泉貴博コーチのコーチング法をクローズアップする。そこには私たちが日頃の生活を送る上でも大事なヒントが隠されていた。

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【前編】金メダルへのコーチング、体操ニッポンを支えたあるコーチの挑戦 https://cocokara-next.com/athlete_celeb/takahiromoriizumi-coaching-01/

大舞台で結果を残すためのコーチング

 

 4年に1度の五輪で結果を残すことは並大抵ではない。森泉コーチはどのような言葉がけで選手たちを金メダルに導いたのだろうか。

 「練習中に100を出すのはいい。ただ試合のときは80でいい。これはこれまで選手や教えた子供たちに必ず言ってきた言葉です。なぜかといえば、なかなか本番で100パーセントの成功は難しい。80パーセントの力で試合を進め、残りの20パーセントは、失敗しそうになったときに失敗に見せないようにしなければいけないので、残りの2割は取っておきなさいということ」

 

 大本番で力を出そうとすると誰もが100パーセントの力を出そうと力むもの。ただそうなるといざ本番で失敗したときに余力が残っておらず、リカバリーが不能になってしまう。ある程度の余裕を持って臨むことで、巻き返しが可能になるというのだ。さらに同コーチは国際大会において、大事なポイントについても言及した。

審判団とのコミュニケーション術

 

 

 「採点競技なので、選手がいくら有名でもコーチが無名だと何も交渉ができなくなってしまう。私はアトランタ五輪翌年の世界選手権から代表コーチということになりました。そこは1つの練習会場で8か国ぐらいが練習しており、さらにいくつかの練習会場を併設していました。その時に練習前にすべての練習会場を渡り歩いて、アンドリアノフさんが多数の国のコーチや審判を紹介してくれたんですよ」

 恩師であり、8年間にわたって師事を受けた元ソ連の金メダリスト、ニコライ・アンドリアノフ氏が最初の国際大会の会場において、旧知の審判たちを紹介してくれた。そこから人脈を広げることに力を注いだ。

 「よくロビー外交ともいいますが、私は英語ができないんですが、そこからは普段、国際大会に行ったときなどに身振りてぶりで交流していった。普段、夜見かけたらお酒を飲んだりなどもしました」

 草の根交流を続けたことで、大きな果実に結びつく。

 「そういった交流が実を結び始め、何度も審判へ質問をしてきたが、最終的に結果として発揮できたのが、ロンドン五輪でした。最終種目となった内村のあん馬が失敗して、一時は団体総合4位と速報された場面です。今でいう演技価値点に違和感があったので、国際連盟の技術委員一人ひとりに片言で説明しました」

 すると普段から交流を持っている各委員も真摯に耳を傾けてくれたというのだ。結果として、技の難度を正しく採点し直したことで団体銀メダルに輝いた。まさに日頃の交流が実を結んだ瞬間だった。一方でこれは日常生活に置き換えても同じことが言えるだろう。会社を含め、周囲の人々から理解を得るためには、日頃から気脈を通じておくこと。そういった姿勢が大事だというのだ。また長年、体操界に関わってきた同コーチは今後は恩返しもしたいと意気込む。多くのアスリートの活躍を支えてきた名伯楽の歩みは止まらない。

 

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

 

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