ウィンブルドンで「トーナグリップ使用者」が活躍2年ぶりの開催となったウィンブル…
ウィンブルドンで
「トーナグリップ使用者」が活躍
2年ぶりの開催となったウィンブルドン2021が幕を閉じた。結果はご存知のとおり、優勝は男子シングルスがノバク・ジョコビッチ(セルビア)、女子シングルスがアシュリー・バーティ(オーストラリア)と男女共に第1シード、世界ランク1位の選手が優勝という結末となった。その女子シングルス決勝に出場したカロリーナ・プリシコワ(チェコ/同7位)をはじめ、今大会も多くの選手が、「トーナグリップ(TOURNA GRIP)」を使用したという。
男子に目を向けると、キャリア2度目のグランドスラムベスト8を達成したカレン・カチャノフ(ロシア/同25位)、ストレートで敗れたがロジャー・フェデラー(スイス/同9位)との2回戦でバックハンドでの強烈なダウン・ザ・ラインを披露したリシャール・ガスケ(フランス/54位)、西岡良仁(ミキハウス/同55位)とフルセットに及ぶ激戦を展開したジョン・イズナー(アメリカ/同34位)といった選手たちも、トーナグリップを使用しウィンブルドンを戦った。
男子シングルスベスト8となったカチャノフもトーナグリップ使用者
女子シングルス決勝は、素晴らしい試合となった。試合開始からバーティが12ポイント連続奪取をした時は、どうなるかと思われたが、プリシコワは試合の中で立て直し。バーティがスライスを交えて、コートを広く使うテニスを展開したと思えば、プリシコワはサーブを軸に、フラット系の低く鋭いショットでバーティの動きの裏を狙っていくテニスで2012年以来となる決勝でのフルセットとなった。敗れはしたものの、プリシコワの強打を手元でしっかり支えたのは「トーナグリップ」であることを忘れてはならない。
女子準優勝のプリシコワもトーナグリップ
夏場に4割強の出荷数!
手汗に効果的なトーナグリップの“ドライ”
ウェットタイプもあるが、彼ら・彼女らが使用しているのはドライタイプの「トーナグリップ」。浅いブルーのグリップテープに、赤いフィニッシング・テープ。両端はテーパード仕様(次第に細くなる形状)になっていないため、ガスケのように最後はぐるぐると重ねて巻いてテープを巻く選手も少なくない。それほどハデなカラーではないのだが、やけに目立つと思わないだろうか?
その理由の一つは、製造元のユニーク(UNIQUE)社がカラーに特許を持っているからなのかもしれない(他社は同じ色を作ることができない)。1972年創業、アメリカ・ジョージア州に拠点を置く同社は、ユーゴスラビアで弾圧を受けてから移民で来たクロアチア人、ジン・ニクシッチ氏が立ち上げたブランド。現在では、息子であるマイク氏、ケビン氏と共に事業を行っている(ちなみに海外事業を担当するマイク氏は、日本のショップでストリング技術を学び、マイク氏の夫人も日本人という日本びいきの方なのだという)。
その「トーナグリップ」が日本で広く流通し、ファンが増えたのは1996年以降。テニックがアジアワースから権利譲渡を受けてからである。ドライタイプの利用率が特に増えるのは夏(実際年間出荷数の4割強が夏場だという)。日本の高温多湿な環境もフィットしていたということもあるだろう。ちなみに、8割強のユーザーはXLサイズをチョイスしているという。
“グリップが滑りにくい”
プロにも人気の理由は
徹底追求したドライ性能にあり
経験がある人が多いと思うが、ボールをスイートスポットの上下にずれて当たった場合、ラケットは回転しやすくなり、コントロールミスが生まれる。汗をしっかり吸い取ってくれる「トーナグリップ」ならば、よりしっかりグリップを握ることができるから、フェイスの回転が起きにくくなる。
プロが評価しているのも、その点が主たる部分になる。例えば、イズナーは「このオーバーグリップは、手にかいた汗を完璧に吸ってくれる。僕の手にはベストのフィーリングなんだ」と語っている。
製造側は、プロに受ける理由をどう捉えているのか? 今回、共同経営者のマイク氏に、理由を尋ねてみると「仮にベタベタするような湿度が高い場所だったり、ハードな運動で大量に汗をかくような状況だったりでも、手のひらの汗をテープがしっかり吸って、最適な状態にキープしてくれる。それこそが選手たちに受け入れられている理由だと理解している。そのために原反(材料となるシート)も、製造過程も、研究してきたからこそだけどね」と答えてくれた。使用したことがある方ならわかるだろうが、正直、耐久性に関しては良くはない。ただ、それはドライ性能にこだわった代償なのかもしれない。
人類が成長できた理由、それは手を使うようになったことが一つだと言われている。森の中、木の上から下りて2本足で歩き、両手で道具を使えるようになったことで、脳が大きくなっていった。歩くため、掴むためにあった手を使って、より複雑なことができるようになっていった。より複雑な動きができる手ではあるが、触覚的にも敏感であるため、繊細な仕事をすることもできる。
テニスで置き換えるなら、ラケットを握り、ボールを打つ。強く打ちながらも回転をかけるという複雑な動きをする一方で、ネットスレスレに落ちるようなドロップショットなど繊細なプレーも手を使って生み出す。だからこそ、手はいい状態にキープしなければならない。「トーナグリップ」がトッププロに人気となるのも理解できる気がする。
まだ使ったことがないという方、しばらくご無沙汰になっているという方、テニスの上達のために、その手で複雑な動作をするために、この夏、トッププロも使う「トーナグリップ」を試してみてはいかがだろうか?
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