五輪サッカーのライバルたち~アメリカ大陸編 欧州編はこちら>> アメリカ大陸からは、北中米カリブ代表としてメキシコとホン…
五輪サッカーのライバルたち~アメリカ大陸編 欧州編はこちら>>
アメリカ大陸からは、北中米カリブ代表としてメキシコとホンジュラスの2カ国が、南米代表としてはブラジルとアルゼンチンの2カ国が、それぞれ東京五輪に参加する。ここでは7月12日行なわれた親善試合で日本に3-1と敗れたホンジュラスを除く3カ国のチームを紹介したい。
日本の皆さんが一番気になるのはやはりメキシコだろう。メキシコは日本と同じAグループで、第2戦で日本と対戦する。
メキシコは2012年、金メダルを持ち帰ったロンドン五輪の再来を望んでいる。そのためには、金も努力も惜しまない。彼らは東京五輪に向けて綿密に計画を練り、すべてにおいてプロフェッショナルな準備をしている。
この計画を任されたのは南米サッカー界の重鎮ヘラルド・"タタ"・マルティーノだ。元アルゼンチン代表監督であり、ヨーロッパの強豪バルセロナのベンチを任されたこともある。
マルティーノは現在、メキシコA代表の監督であるが、U-23代表のジャイメ・ロサーノ監督とともに五輪チームの準備を託された。彼らの施す練習はハードでハイレベル。なによりA代表とまったく同じ戦術、テクニック、フィジカルづくりを行なっている。

U-24メキシコ代表のエース、ディエゴ・ライネス photo by AP/AFLO
今回、OA枠を一番ドラマチックに使ってきたのはメキシコかもしれない。彼らはA代表の正GK、ギジェルモ・オチョア(クラブ・アメリカ)をゴールマウスに立たせるつもりだ。7月13日に36歳となるオチョアは、百戦錬磨の経験とマリーシア、落ち着きをチームにもたらしてくれるはずだ。
他の2人も、経験豊かでフィジカルが強く、若きチームに何かを与えてくれる選手が選ばれている。彼らこそが勝敗のカギを握る存在だとロサーノ監督は確信している。中盤に26歳のルイス・ロモ(クルス・アスル)、トップにはメキシコリーグを代表する28歳のストライカー、エンリ・マルティン(クラブ・アメリカ)を配した。
これらの準備が功を奏し、メキシコは強いチームを作り上げた。それはこれまでの戦いぶりからもよくわかる。
今回の五輪に出場するチームの中で、メキシコは唯一、全勝で予選を突破している。北中米カリブ海予選では、グループリーグでドミニカ戦4-1、コスタリカ戦3-0、アメリカ戦1-0と3連勝。準決勝ではカナダを2-0で下した。一番厳しかったのは決勝のホンジュラス戦で、120分戦って1-1。PK戦を制して1位突破を決めた。
システムはボールを持っている時は4-2-3-1だが、守る時は4-4-2に変化する。スピードのある中盤と相まって、このフォーメーションがいい結果をもたらしている。
6月にルーマニアで3試合の親善試合を行なった。同じく東京五輪に出場する強力なチーム、ルーマニアには0-1で敗れたが、五輪世代ではアジア最強といわれるサウジアラビアとは引き分け、オーストラリアには3-2で勝利した。
チームのスターはまぎれもなく、ベティスに所属する21歳のディエゴ・ライネスだ。「ここ50年間で最も優秀なメキシコ人ストライカー」との呼び声が高い。ライネスはスピードがあるだけでなく、ボールを持った時のインテリジェンスが光る。先日行なわれたパナマとのA代表の試合でも、先制ゴールを挙げ、3-0の完勝をもたらした。
ブラジルについては、OAでネイマールが参加すると思っていた人も多いだろう。ネイマール自身もそれを望んでいたが、パリ・サンジェルマンが許さなかった。だが、ネイマールはいなくても、ブラジルが日本に送り込むチームはなかなか興味深い。ブラジルの入ったグループはドイツ、サウジアラビア。コートジボワール。一筋縄ではいかない相手だが、ブラジルは金メダル候補と言っていいだろう。
ブラジルは自国開催の前回大会で、50年以上求め続けてきた悲願の金メダルを手にしたが、今回はその誇りをもって日本に向かう。唯一の目標は、金メダルをもう一度手にすることだ。選ばれた22人はU-24といえども有名かつ優秀な選手が多く、見ていて楽しいテクニックを持っている。監督のアンドレ・ジャルディネはチッチA代表監督から直々に指名された人物だ。
◆メッシとネイマールの涙で終わったコパ・アメリカ。その舞台裏にあったまさかのドタバタ劇
プレミア勢ではアストン・ビラのMFドゥグラス・ルイス、アーセナルのストライカー、ガブリエウ・マルティネッリが招集された。しかし、何より注目されるのは、最後に呼ばれたリシャルリソンだ。エバートンのストライカーですでにA代表のレギュラーでもある彼は、必ずや何かをしてくれることだろう。
ブンデスリーガからは、FWのマテウス・クーニャ(ヘルタ・ベルリン)とパウリーニョ(レバークーゼン)、MFヘイニエール(ドルトムント)を招集。またオランダで活躍するストライカー、アントニー(アヤックス)も東京五輪のスター候補のひとりだろう。
OA枠の3人にも注目が集まる。アトレティコ・パラナエンセのGKサントス、セビージャのCBジエゴ・カルロス、そして一番のサプライズが現在サンパウロでプレーする38歳のダニエウ・アウベスだ。
アウベスを選んだのは、1994年アメリカW杯で世界チャンピオンに輝いたブランコだ。ブランコは現在CBF(ブラジルサッカー連盟)の一員で、U-17とU-23代表の責任者を務めている。
アウベスを選んだ理由は、パリ・サンジェルマン、バルセロナといったヨーロッパの強豪を渡り歩いた経験を持っていることだ。ヨーロッパのビッグクラブの多くが所属選手のオリンピック参加を禁止する中で、彼の経験は非常に貴重なものとなるだろう。すでに代表は引退しているものの、フィジカルコンディションも万端だ。彼がこのチームのリーダーになることは明らかだ。
国内勢ではブラガンチーノ・レッドブルでプレーするMFクラウジーニョに注目だ。ブラガンチーノは今、彼のおかげでブラジル全国リーグの首位にある。
すでに東京に到着しているブラジルは17日から練習を開始する予定だ。
最後はアルゼンチンだ。2004年アテネ、2008年北京と、連続して金メダルを取ったアルゼンチンだが、その後の2大会はメダルに手が届いていない。そのため彼らもまた金メダルを取り戻すために東京に来るはずだ。しかし、ふたを開けてみると、メンバーに24歳以下の有名選手の名前は、残念ながらほとんど見あたらない。3月に日本と対戦した時とは若干変わっているが、それでもU-24の二軍というイメージは否めない。
まず、中心選手だったリバープレートのエンソ・ペレスとボカ・ジュニアーズのカルロス・イスキエルドが外れた。今この2チームはリベルタドーレス杯を争っており、大事なスター選手を五輪用に貸し出したくなかったのだ。また、A代表としてコパ・アメリカを戦ったフリアン・アルバレスも、リバープレートに五輪参加を拒否された。
また、アルゼンチンはOAの選手を1人しか入れなかった。カディスのGKレミアス・レデスマだ。コパ・アメリカでA代表が優勝したこともあるが、フェルナンド・バティスタ監督の、若い選手でまとめたチームを作りたいという意図もうかがえる。そんな若手の注目株は、イングランドのブライトンでプレーする22歳のMFアレクシス・マック・アリスターだろう。
アルゼンチンはオーストラリア、エジプト、スペインと同じグループ。もしスペインを差し置いて首位通過でもすれば驚きものだ。東京五輪の優勝候補と言うのは難しいだろう。