グループリーグ突破やベスト8ではない。メダル、しかも金メダルだ。東京五輪の目標を問われた森保一監督は、ハッキリそう口に…
グループリーグ突破やベスト8ではない。メダル、しかも金メダルだ。東京五輪の目標を問われた森保一監督は、ハッキリそう口にしている。U-21ホンジュラス代表戦の3-1という結果を、どう評価すべきか。U-24日本代表の目標がベスト8なら悪くない試合。「快勝!」となるが、金メダルとなると、あらためて兜の緒を締め直すべきだろう。金メダルから逆算して考えると、不足している要素は多々、目にとまる。評価は厳しくならざるを得ない。課題山積であることが露呈した一戦と言うべきだろう。
まず、センターフォワード(CF)。この日、先発したのは林大地(サガン鳥栖)で、前半40分、堂安律が決めた得点をアシストするなど、全体的に悪くなかった。しかし、ストライカーにチームの顔、中心選手としての存在感を求めるとすれば、物足りなく感じる。この日、4-2-3-1の3に並んだ左利きの小兵、三好康児(ロイヤル・アントワープ)、久保建英(レアル・マドリード)、堂安律(PSV)との絡みも円滑ではなかった。
CF候補は他に、林に代わって投入された前田大然(横浜F・マリノス)と、この日は出場しなかった上田綺世(鹿島アントラーズ)がいる。だが残念ながら、A代表の大迫勇也(ブレーメン)との差は大きい。前田は4-2-3-1の「3」の両サイドのほうが適任ではないかと思う。鎌田大地(フランクフルト)役もいないので、なによりボールの収まりが悪い。相手陣内で、可能性のあるパス回しを連続することができなかった理由である。

ホンジュラス戦で2得点を挙げた堂安律。2列目は日本のストロングポイントだが...
ストロングポイントであるかに見える、「3」の位置に並ぶ小兵の左利き3人にも、注文をつけたくなる。3人とも同じタイプに見えるのだ。ボール操作術に優れたテクニシャン。だが、アタッカーならではの爆発力、走力、突破の迫力、馬力、怖さに欠ける。サッカー選手というより、ボール操作術を披露し合う曲芸師に見えたほどだ。
後半、久保に代わって投入された相馬勇紀(名古屋グランパス)は右利きで、縦に行く力があるので毛色は異なるが、この選手も小兵という点で一致する。
もうひとり、ACLに出場した関係で合流が遅れている三笘薫(川崎フロンターレ)も右利きだ。右利き、左利きをこの「3」の列に、どう並べるか。左利き3人を並べた今回は、それをいい意味での特異性として表現することができなかった。組織力を働かせることができなかった。暴れたプレーというか、出たとこ勝負の即興芸に終わっていた。
さらに、その背後との関係も円滑ではなかった。守備的MFとサイドバック(SB)との関係だ。ここには、酒井宏樹(浦和レッズ)と遠藤航(シュツットガルト)というオーバーエイジの助っ人が控えている。2人とも、いまよく取り沙汰されるデュエル、インテンシティに優れた選手だが、テクニシャンではない。周囲との細やかな絡みは得意ではない。タイプが異なる三好、久保、堂安と絡むと、その硬質さが際立つことになる。
思わず、右SBは酒井より多彩さのある山根視来(川崎フロンターレ)のほうが適任に見えてしまう。そんな無い物ねだりをしたくなる。
ここ1年でグッと評価を高めた遠藤も、守備的MFとしてゲームを収める力はついていない。一本調子に陥りがちな「3」のプレーを、正しい方向に導き、組織的に整える力のことである。彼らのリズムに支配されがちな流れを、適正な方向に正すことが、ボランチ本来の役割になるが、そこまでのハンドル操作術に長けているかと言えば、疑問だ。オーバーエイジならではのベテランの味を、ホンジュラス戦で遠藤が発揮したとは言い難い。
同じことは、さらにもう1列下で構える吉田麻也(サンプドリア)についても言える。先制点をマークしたシーンでは貫禄のようなものを感じたが、90分間トータルでは、セリエAでプレーする32歳という看板通りの存在感を発揮できなかった。最後尾から前線へ向けて、メッセージ性のあるプレーを発信するエネルギーに欠けていた。ユーロ2020を制したイタリア代表で言うところの、ジョルジョ・キエッリーニ、あるいはレオナルド・ボヌッチ役になりきれなかった。
◆U-24日本代表メンバーの選考で見る金メダルへの本気度。キーマンは旗手怜央だ
日本が金メダルを目指そうとした時、ホンジュラス戦は、快勝とはいえ、不足している箇所が目立った試合であり、とりわけオーバーエイジという助っ人のレベルが物足りなく見えた試合だった。世界のトップクラブの味を知っている選手がいないという現実が露呈したと言ってもいいだろう。
巷ではオーバーエイジの3人を讃える報道が目立つが、筆者は逆にそこに不安を覚える。自分自身のプレーで精一杯ではないのか。金メダルを目指し、全軍をリードするには力不足、経験不足のように見えた。
五輪のレベルは、W杯やユーロに劣るとはいえ、これまで金メダルを獲得してきたチームに注目すれば、W杯級でありユーロ級だ。チャンピオンズリーグ(CL)に置き換えても決勝トーナメント級だ。欧州でプレーする選手は増えたものの、CLにコンスタントに出場する選手はいない日本の現実と、どう折り合いをつけるか。
金メダルから逆算して、この日、合格点を出せそうなプレーをしたのは田中碧(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)ぐらいだった。一方、実力上位の冨安健洋(ボローニャ)は、プレーに余裕があったにもかかわらず、その余裕をチーム全体に波及させることができなかった。
調整不足のホンジュラスの真の力がどれほどか、この一戦を通して鮮明にならなかった。日本に対しては、五輪という大会にある程度余裕を持って臨めるイメージが湧いてこなかった。本番前の最終戦は、格上とおぼしきU-スペイン代表戦(17日)だ。オーバーエイジの3人が、どこまでリーダーシップを発揮できるのか。注目したい。