世界最高峰と言われてきたリーガ・エスパニョーラの権勢が、足元から揺らいでいる。「バルセロナのスター、リオネル・メッシが…
世界最高峰と言われてきたリーガ・エスパニョーラの権勢が、足元から揺らいでいる。
「バルセロナのスター、リオネル・メッシが無所属に」
その事実だけでも、リーガの新シーズンが混迷の中にあるのが伝わるだろう。
メッシはクラブの一選手には収まらない存在だ。リーガ全体の顔であり、その去就ひとつで、リーガ全体の放映権やスポンサー収入に天地を動かすほどの影響を与える。今後、国外への移籍が決まった場合、リーガは"冬の時代"に突入することもあり得るのだ。
来季に向け、そんなリーガの最新状況を探った。

コパ・アメリカに参加中のリオネル・メッシ。その去就に注目が集まっている
まず、アルゼンチンの英雄がバルサとの契約を更新できていない理由は明白だろう。
「(リーガ・エスパニョーラ会長のハビエル・)テバスには、メッシの存在意義を考慮してほしい」
バルサのジョアン・ラポルタ会長はそう言ってリーガとの交渉に取り組んでいるが、クラブがリーガの定めた約4億ユーロ(約520億円)のサラリーキャップ(年間給与上限)を倍以上も超過していることが問題になっているのだ。バルサは有力選手の売却も視野に入れているが、あまり活躍していないだけに買い手がつかない。放漫経営が生み出した赤字は自業自得と言えよう。
バルサは、今や"不良債権"と化したフィリペ・コウチーニョの獲得だけで180億円近くを投じ、10億円以上の年俸も払い続けている。アントワーヌ・グリーズマンも約150億円の移籍金の価値には見合っていない。そもそもスモールスペースを崩すチームスタイルに合っていない。そしてケガで稼働率の悪いウスマン・デンベレの移籍金はボーナスも含めて約200億円で、年俸は20億円×4シーズンと、合計で300億円近くを費やしてきた。
他にも、補強は場当たり的だった。DFジュニオール・フィルポ、MFミラレム・ピャニッチ、FWマルティン・ブライスワイトのような戦力にならない選手を、獲っては処遇に困っている有様だ。こうした例は枚挙にいとまがない。
新シーズンに向けて、リールのオランダ代表FWメンフィス・デパイを30億円以上もの移籍金で獲得したが、本当に必要な補強だったのか。バルサの特殊なプレーモデルにフィットするか、実力的にも微妙なところで、少なくとも時間はかかるだろう。
一方で、バルサBの主力になっていた同じポジションで19歳のアメリカ代表FWコンラッド・デ・ラ・フエンテをマルセイユへ、わずか4億円で売り渡した。
マンチェスター・シティからアルゼンチン代表FWセルヒオ・アグエロを獲得したのは、短期的には有益な補強だろう。しかしルイス・スアレス(アトレティコ・マドリード)を無料で手放し、33歳になるアグエロ獲得では先見の明がないと言われてもしかたない。シティでポジションを失い、全盛期の力はないアグエロが、適応に時間のかかるバルサでどこまで活躍できるのか、はなはだ疑問だ。
DFオスカル・ミンゲサ、ロナウド・アラウホ、MFペドリ、フレンキー・デ・ヨング、イライス・モリバ、リキ・プッチ、FWアンス・ファティは次世代の光明と言える。未成年選手の登録違反で手放さざるを得なかったMFケイズ・ルイスを18歳で取り返せたことも朗報だろう。バルサカラーを身に沁み込ませた選手だけに順応にも問題はない。
しかし、すべてはメッシと再契約ができるかどうかにかかっている。
一方、レアル・マドリードも、ひとつの時代が終わった。2020-21シーズン限りで、欧州三連覇を成し遂げたジネディーヌ・ジダン監督はクラブを去った。主将を務めてきたセルヒオ・ラモスもパリ・サンジェルマン(PSG)移籍が決定的、ラファエル・ヴァランも移籍が有力視される。
代わりにカルロ・アンチェロッティが監督に就任、バイエルンからダビド・アラバの獲得が決まった。噂されたクリスティアーノ・ロナウドの復帰はほぼ可能性がなくなった一方、33歳のマルセロと契約を延長し、ルカ・モドリッチ(35歳)、カリム・ベンゼマ(33歳)、トニ・クロース(31歳)など、中心選手の平均年齢は今も高い。世代交代は難儀しそうだ。
アーセナルから復帰予定のMFマルティン・ウーデゴールや下部組織出身の新鋭MFアントニオ・ブランコが台頭できるか。マルコ・アセンシオ、ダニ・セバージョスにも期待はかかるが、2人は東京五輪メンバーでプレシーズンに不参加の予定。これは大きなデメリットになる。
◆中田英寿を上回る天才に起きた悲劇。リーガに「ぶっとんだ自信」で挑んだ
新時代の象徴になり得るのは、PSGと交渉中のキリアン・エムバペか。爆発的な走力と得点力は、単純にスペクタクル。レアル・マドリード向きの選手だろう。今月、エムバペ本人があらためてPSGとの契約延長を拒否し、マドリード移籍の筋道ができたと言われる。フロレンティーノ・ペレス会長は、8月末の移籍マーケットが閉まる直前に有力選手との契約をまとめてきた剛腕。虎視眈々といったところか。
最後に、王者として新シーズンに挑むアトレティコ・マドリードの動きは緩やかだ。ディエゴ・シメオネ監督は昨シーズン、チームのアップデートに成功。マイナーチェンジはあるが、成熟のシーズンになるだろう。
ブラジルのフルミネンセに所属する20歳の元ポルトガルU-19代表アタッカー、マルコス・パウロの獲得が内定し、代わりにスペイン代表の攻撃的MFビトーロをヘタフェに放出している。また、ウディネーゼのアルゼンチン代表セカンドアタッカー、ロドリゴ・デ・パウルとの契約も決定的。あとはMFサウール・ニゲスを引き留められたら、言うことはないだろう。
コロナ禍もあって、市場の動きは総じて静かに映る。伏兵レアル・ソシエダはシャビ・アロンソが率いるBチームが2部に昇格し、トップチームにも選手を供給することになりそうだ。こうした育成型クラブが幅を利かせるシーズンになるかもしれない。
日本人選手は、例年になく苦戦を強いられている。久保は国内1部へのレンタルが有力だが、移籍先は決まっていない。岡崎慎司、乾貴士はクラブを退団し、武藤嘉紀もニューカッスルとの契約がどうなるかわからず、柴崎岳のレガネスは昇格できなかった。彼らが1部でプレーする可能性は低い。日本人にとっても、リーガの先行きは不透明と言える。