東京五輪本大会に臨むU-24日本代表18人のメンバーが発表された。フィールドプレーヤー16人の顔ぶれを眺めてあらためて…

 東京五輪本大会に臨むU-24日本代表18人のメンバーが発表された。フィールドプレーヤー16人の顔ぶれを眺めてあらためて思うことは、複数のポジションをこなすことができる多機能型の選手が多くを占めることだ。



東京五輪のメンバー18人に選ばれた旗手怜央

▽GK
1 大迫敬介(サンフレッチェ広島)
12 谷晃生(湘南ベルマーレ)
▽DF
5 吉田麻也(サンプドリア)
2 酒井宏樹(浦和レッズ)
4 板倉滉(フローニンゲン)
3 中山雄太(ズヴォレ)
13 旗手怜央(川崎フロンターレ)
14 冨安健洋(ボローニャ)
15 橋岡大樹(シント・トロイデン)
▽MF
6 遠藤航(シュツットガルト)
16 相馬勇紀(名古屋グランパス)
8 三好康児(ロイヤル・アントワープ)
11 三笘薫(川崎フロンターレ)
10 堂安律(PSV)
17 田中碧(川崎フロンターレ)
7 久保建英(レアル・マドリード)
▽FW
9 前田大然(横浜F・マリノス)
18 上田綺世(鹿島アントラーズ)

 日本の男子サッカーは、1968年メキシコ五輪以来28年ぶりに1996年アトランタ五輪への出場を果たして以来、五輪に連続出場を続けている。

 最高位は2012年ロンドン五輪のベスト4。2000年のシドニー五輪は準々決勝に進出。そこでアメリカにPK負けする惜しい結果を残しているが、他の4大会はすべてグループリーグ落ち。グループリーグ突破の確率は33%ということになるが、目標を毎度、メダル獲得に据えて戦ってきた。

 オールドファンの頭には、五輪サッカーと言えば、銅メダルを獲得した1968年メキシコ五輪が焼きついて離れずにいる。日本サッカーが五輪に必要以上に熱を注ごうとする理由でもある。

 2012年ロンドン五輪。日本は準決勝、3位決定戦と、息切れした。通算5試合目以降を戦える準備ができていなかった。森保監督が西野朗監督のもとでコーチとして帯同した2018年ロシアW杯も同様だった。決勝トーナメントを戦う余力が日本には残っていなかった。

 これまでの日本は、五輪やW杯のような短期集中トーナメントに、何試合戦うつもりで臨むのかという目標の設定が曖昧だった。理由をひと言でいえば弱かったからだが、森保監督は今回、開催国の利を最大限に捉えたのだろう。金メダルという目標を打ち立てた。

 そしてそれが単なる夢ではないことが、多機能型選手を多く登用した今回のメンバー発表から見て取れる。決勝戦を戦うなら試合数は6を数える。それを中2日(決勝は中3日)という強行軍で戦おうとした時に不可欠になるのが、多機能型選手の存在だ。

 決勝戦(6試合目)から逆算したメンバー構成であることが、多機能型選手の存在を通して鮮明になる。多機能型でないフィールドプレーヤーの方が圧倒的に少ない。

 非多機能型はトップしかできない上田綺世。左ウイングしかできない三笘薫。センターバックしかできない(守備的MFもできるかもしれないが)吉田麻也ぐらいだろう。

 その他の選手は、4-2-3-1、4-3-3、3-4-2-1という森保監督が使いそうな布陣の、複数のポジションに落とし込むことができる。どれほど多機能的かは、当落を分けたひとつの大きなポイントだ。

 共同記者会見で代表質問した記者は「東京五輪が1年前に行なわれていれば、この中には選ばれていなかった選手もいた。昨季のJリーグでブレイクした三笘はその代表的な選手ではないか」と、森保監督に迫った。

 三笘はもともと森保監督率いる五輪のチームにいた選手。五輪チームでパッとしなかったのは、起用法に問題あったからだと考えるが、それはともかく、攻撃陣の看板は、その三笘と久保建英だろう。この2人のアタッカーがどれほど活躍するか。日本の浮沈のカギを握る選手であることは間違いない。

 だが、1年前なら選ばれていなかった選手の話に、多機能型選手の話題を加えた時、浮上するのは旗手怜央だ。昨季、大卒ルーキーとして三笘とともに川崎入りしたこの選手も、1年前なら外れていただろう。今回の五輪チームに、発足当時から加わっていたが、三笘同様、森保監督から高い評価を得ていたわけではない。

 川崎でもスタメンの座に届いていない選手だった。ブレイクしたのは昨年の天皇杯以降。ケガで離脱した登里享平の代役として、鬼木達監督から左サイドバック(SB)に抜擢されたことが契機になっている。

 U-24日本代表でも、今年3月に行なわれたアルゼンチン戦で、左SBとしてスタメン出場を果たす。森保監督は鬼木監督のアイデアを拝借したわけだが、五輪チームでもこれがはまり役となった。

 もともとは4-3-3のウイング、あるいはインサイドハーフだ。先述のアルゼンチン戦(第2戦)では、短い時間ではあったが4-2-3-1の1トップ下でもプレーしている。左SBに加え、CF以外ならアタッカーとしてどこでもこなす万能型。守備的MFも行けそうな、まさに"カメレオン・プレーヤー"である。

 三笘も欠かせない選手だが、左ウイングの専門性が高そうな彼より、旗手こそが、中2日で6試合を戦うつもりでいる今回の五輪チーム(U-24日本代表)を象徴する、コンセプトに適合した看板選手と言えるのではないか。彼が試合の流れの中で、ピッチ上をどう推移するか。それが意外性に富むほど日本の成績は上がると見る。

 多機能型選手の重要性を最初に説いたのは、1998年フランスW杯でオランダをベスト4に導いたフース・ヒディンクだ。1998年大会といえば、選手交代枠が2人から3人に増えた最初のW杯として知られるが、それが今回の東京五輪では5人制で行なわれる。五輪ではもちろん初めての体験となるが、1年5カ月後に迫った2022年カタールW杯本大会でも、この5人制は採用される。

 選手にはいっそう多機能性が求められることになった。他方、監督には彼らをやりくりするセンスが求められている。今回のメンバー選考で多機能性を重視した森保監督に、彼らを使いこなす力、センスはどれほどあるか。

 金メダルという結果も重要だが、2022年11月を見据えれば、成績とともに采配力も問われる。五輪とW杯とで、選手は大幅に入れ替わるだろうが、監督が代わらないとなれば、選手より監督に対するチェックは厳しくする必要がある。でないと、落選した選手は浮かばれない。