ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」 いよいよ今週は優駿牝馬、GIオークス(5月23日/東京・芝2400m…

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 いよいよ今週は優駿牝馬、GIオークス(5月23日/東京・芝2400m)が行なわれます。次週の東京優駿、GI日本ダービー(5月30日/東京・芝2400m)とともに、現在26あるJRAのGIの中でも、より格式の高い一戦と言えるでしょう。競走馬にとっては3歳時に、一生に一度だけ巡ってくる舞台であり、競馬関係者であれば、誰もが目標とするレースですからね。

 その特別な一戦が、今年は限られた人数とはいえ、有観客で行なわれることになりました。ファンあっての競馬ですから、たとえ少ない人数ではあっても、人馬が目指してきたレースを見届けていただけるのは、とてもうれしく思います。

 そういう意味でも、関係者にとっては晴れの舞台となるオークス。今年も昨年と同様、無敗の桜花賞馬が挑んできました。

 ここまで5戦無敗の白毛馬ソダシ(牝3歳)です。GI桜花賞(4月11日/阪神・芝1600m)の際にも高い評価をさせていただきましたが、同レースではスタートを決めて、道中ソツなく運べたことが勝因でしょう。

 この白毛の一族につきまとうゲートの不安や折り合い、そして気性の難しさといったものをソダシも抱えているようですが、そういったナーバスな面をレースで露呈させず、常に好結果につなげてきた陣営とジョッキーの尽力も称賛に値します。

 今回は2400mという距離に対して、不安が囁かれるかもしれません。ただ、例年オークスでは2400m戦未経験という馬がほとんどです。

 そうした長丁場となれば、騎手の心理としてそっと乗りたくなるもの。それゆえ、折り合いさえこなせれば、同世代同士の戦いであれば、距離適性が問われることはさほどありません。それが、桜花賞組がオークスでも好走できる要因のひとつでしょう。

 そもそも、世代のトップクラスが集結する桜花賞は必然的にレベルの高いレースとなります。そこで結果を残してきた実力馬であれば、オークスでも上位争いに加わってくるのは当然と言えるでしょう。

 ソダシも本質的には中距離タイプではないかもしれませんが、GIII札幌2歳S(2020年9月5日/札幌・芝1800m)ではコーナー4つのコースでタフな争いを制しています。スタミナも持ち合わせているようなので、軸馬としての安定度は高いでしょう。

 ひとつ課題を挙げるとすれば、位置取りでしょうか。

 ご存知の方も多いかもしれませんが、東京・芝2400mというコースは内枠が有利で、最も重要視されるのは1コーナーへの入り方です。かつて、フルゲート28頭でレースを行なっていた頃は、「ダービーポジション」とも称され、いかにいい位置で1コーナーを迎えられるかどうかで、勝敗が決まるとも言われていました。

 その当時と比べれば、フルゲート18頭となった現在、「ダービーポジション」といった考えは古いかもしれませんが、オークスやダービーにおいては、今なお1コーナーへの争いは熾烈です。普通の平場のレースであれば、誰かが「オレが(先に1コーナーへ)入るよ」と言えば、騎手同士で声を掛け合って、皆がセーフティーなレース運びに努めるところを、非常にピリピリとした雰囲気のなか、誰もがお構いなしに内へ絞って進路を取りにいきますからね。

 つまり、これまでどんなコース、どんなレースでもソツのない競馬を見せてきたソダシにとっても、こと今回に関しては、1コーナーへの入り方が重要なポイントになります。それさえクリアできれば、勝機は近づいてくるでしょう。

 実際のところ、ソダシは競馬が上手。鞍上の吉田隼人騎手が腹を決めて、持ち前のスピードとセンスを生かすことができれば、自然と好位置でレースを進められるのではないでしょうか。

 相手選びは、まずは桜花賞組から。有力候補は、4着アカイトリノムスメ(牝3歳)、3着ファインルージュ(牝3歳)です。

 正直、アカイトリノムスメについては、すでに桜花賞でソダシとの力差を感じました。しかしながら、乗り易さやレースセンスはソダシ以上と見ています。小柄な牝馬でもあり、桜花賞では長距離輸送も少なからずマイナスになったのではないでしょうか。今回、馬体重が増えてくれば、なおさら有望視できます。

 ファインルージュはここまで底を見せていませんからね、楽しみな存在です。スタートに課題があって、道中の反応は少々スブいだけに、好位での立ち回りが求められた桜花賞より、今回のほうが条件的には好転すると思っています。

 ただ、今年の3歳世代はGI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月13日/阪神・芝1600m)、そして桜花賞と、ソダシが勝って、サトノレイナスが惜敗する結果が続いています。その点を踏まえれば、レース条件が替わるとはいえ、桜花賞組とは勝負づけが済んでいる、と言えます。



忘れな草賞を快勝し、オークスに挑むステラリア

 ならば、相手探しは別路線組に目を向けたほうがいいかもしれません。なかでも注目は、リステッド競走の忘れな草賞(4月11日/阪神・芝2000m)を勝ったステラリア(牝3歳)です。

 ここまで6戦して、重賞への出走は2走前のGIIIクイーンC(2月13日/東京・芝1600m)のみ。そこでは、6着に敗れました。

 しかし、続く前走の忘れな草賞では初の2000m戦に臨んで快勝。距離が延びたことによるアドバンテージを強く感じました。オークスでは距離適性が問われないと先に触れましたが、この点はやはり距離が延びるオークスに向けては好材料になるでしょう。

 昨秋には、のちにGII青葉賞で2着となったキングストンボーイと僅差の勝負を演じています。今回は、そんなステラリアをオークスの「ヒモ穴馬」として指名。同馬の奮闘を期待したいと思います。