『特集:球春到来! センバツ開幕』 3月19日、2年ぶりとなるセンバツ大会が開幕した。スポルティーバでは注目選手や話題の…

『特集:球春到来! センバツ開幕』

 3月19日、2年ぶりとなるセンバツ大会が開幕した。スポルティーバでは注目選手や話題のチームをはじめ、紫紺の優勝旗をかけた32校による甲子園での熱戦をリポート。スポルティーバ独自の視点で球児たちの活躍をお伝えする。

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 2年ぶりに開催されたセンバツ高校野球大会は、あと準決勝、決勝を残すのみとなった。優勝の行方が楽しみだが、NPB球団のスカウトたちが注目選手に対してどんな評価を下したのかも気になるところだ。そこで視察に訪れていたスカウト4人に、注目選手の印象について聞いてみた。まずは投手から。

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センバツ2回戦の健大高崎戦で完封勝利を挙げた天理・達孝太

達孝太(天理/193センチ・85キロ/右投右打)

「今大会ナンバーワンでしょう。ピッチングプランができているし、インコースのストレートで三振を取りにいくところにセンスを感じました。課題は投げ方。押し出すようなリリースなので、スライダーがボールからボールになる。あとは踏み出す左足が割れてしまうところですね。ここが改善されれば、さらに大きく成長するでしょう」(パ・リーグスカウトA氏)

「3月27日生まれで、先日17歳になったばかり。実質1年違うのにこのレベルなんだから、すばらしいですよね。昨年秋はストレートのアベレージが135キロだったけど、この春は145キロぐらいまで上がっていた。着実にステップアップしています。これに変化球の平均球速が上がってきたら、高校生は打てないでしょう。今大会の投手では、将来性はナンバーワンです」(セ・リーグスカウトB氏)

「上背があって、角度があるのが魅力。投げ方がよく、腕も振れるし、コントロールも悪くない。言うことなしです。球数の多さが気になるけど、変化球の精度が上がれば減らせると思います。この先どうなるのか、本当に楽しみな投手です」(パ・リーグスカウトC氏)



初戦の県岐阜商戦で4安打完封勝利を挙げた市和歌山の小園健太

小園健太(市和歌山/184センチ・89キロ/右投右打)

「現段階では高校生ナンバーワンの完成度。ドラフト1位候補です。カットボール、ツーシームなどの変化球の精度に加えて、打者を見ながら投げることができている。初戦の県岐阜商戦では、相手がスライダーに合わないと見抜き、途中からスライダーを多投して抑えた。教えられない感覚を持っている。変化球が多すぎるという意見もあるみたいだけど、それは智弁和歌山というライバルが県内にいるから。智弁和歌山打線はストレートを打ちますからね」(パ・リーグスカウトA氏)

「ダイナミックさや圧倒するものはないけど、バランスがいいし、無駄がなく、ゲームをつくれる。『点をやらなければいいんでしょ』というピッチングができる。初戦(県岐阜商)で完封しましたが、まだ余力がある感じがしました。昨年秋の時点では『変化球はいいけど、真っすぐはもうひとつ』という評価だったけど、ストレートに強さが出ていました。現時点で1位確定とは言えないけど、24人(2位以内)には入ってくるでしょう。カウント3−0からツーシームを投げる高校生はなかなかいないですから。欠点らしい欠点がない投手ですね」(セ・リーグスカウトD氏)



最速151キロを誇る中京大中京のエース・畔柳亨丞

畔柳亨丞(中京大中京/177センチ・83キロ/右投右打)

「スピードもさることながら、一番の魅力は球が強いこと。今大会で球の強さなら畔柳がトップでしょう。伸びしろに疑問はありますが、将来的なイメージは則本昂大(楽天)です。課題は投げる時に顔がふれてしまうこと。これが修正できれば、もっとよくなると思います」(セ・リーグスカウトB氏)

「馬力があることと、真っすぐの強さが最大の魅力です。あれだけ腕を振るのに制球力も悪くない。腰痛で冬場はほとんどピッチングができてない状況で、あれだけの投球ができるんですからたいしたもんですよ。たまに力でねじ伏せようとする場面があったので、もっと楽に投げてほしいですね」(パ・リーグスカウトC氏)



1年夏から甲子園のマウンドを経験している仙台育英・伊藤樹

伊藤樹(仙台育英/178センチ・78キロ/右投右打)

「ストレートはいいです。あれぐらい投げることができれば文句はないでしょう。ただ、身長が(登録の)178センチより低く見えるし、変化球の精度がもうひとつかなという印象です。同じ東北の速球派といえば吉田輝星(金足農→日本ハム)が思い浮かぶけど、彼も春の時点ではそこまで評価が高かったわけじゃなかった。伊藤くんもここから夏までの成長に期待したいですね」(パ・リーグスカウトA氏)

「昨年秋に見た時はスピードが出ていなかったけど、このセンバツでは出ていました(最速146キロ)。球質も秋よりはワンランク上がったと思います。これから追いかけていきたいと思わされた投手のひとりです」(セ・リーグスカウトB氏)



初戦で神戸国際大付に敗れたが、145キロをマークした北海・木村大成

木村大成(北海/180センチ・76キロ/左投左打)

「ストレートはしっかり両サイドに投げられるし、変化球もいい。とくにスライダーのキレはすばらしいです。あとはチェンジアップを投げられるようになれば、もっと投球に幅が出てくると思います。いいピッチャーであることは間違いないですが、クイックができないなど、まだまだ課題は多い。とはいえ、今後もしっかりチェックしたい投手です」(パ・リーグスカウトC氏)

「右打者のインコースに食い込んでくるスライダーはキレ、コントロールとも一級品。久しぶりにああいう球を投げられる投手を見ました。もう少しまとまって、スタミナがついてくれば面白い。育ててみたい投手です」(セ・リーグスカウトB氏)



準々決勝の福岡大大濠戦で3安打完封、14奪三振の好投を見せた東海大相模・石田隼都

石田隼都(東海大相模/183センチ・73キロ/左投左打)

「大型左腕のわりに器用という印象です。コントロールがよく、(相手を)上から見下ろすようなマウンドさばきもいい。チェンジアップもうまく扱えているし、ほしいと思う球団はあるでしょうね。リリーフ登板した初戦(東海大甲府戦)で146キロを記録したみたいだけど、こんなにスピードが出るんだと思いました。もっと体ができて、常時140キロ中盤を投げられるようになれば、面白い投手になると思います」(パ・リーグスカウトA氏)

「好投手であることは間違いないですが、スピードとコントロールの精度をもうワンランク上がればいいかなと思います。高めの速い真っすぐは高校生なら振ってくれますが、上の世界に行けばしっかり見逃してくるので、苦しい投球を強いられると思います。育成選手として育ててみたいですけど......大学に行ってどれだけ伸びるか見てみたいですね」(セ・リーグスカウトD氏)



世代ナンバーワン左腕の呼び声高い大阪桐蔭の松浦慶斗

松浦慶斗(大阪桐蔭/185センチ・94キロ/左投左打)

「左であのサイズがあるのは魅力ですけど、甲子園でのピッチングは『おいおい、どうしたんだ』という感じでした。速球派を目指すのか、技巧派を目指すのか、まだ決めかねている印象を受けました。スピードも思ったほど出ていなかったし、現状では厳しいかもしれないですね。素材は申し分ないので、そこに期待して獲得する球団はあるかもしれませんが......」(パ・リーグスカウトA氏)

「去年の夏はいいボールを投げていたんですがね。大阪桐蔭という名門にいると、やっぱり負けられないですから、中途半端にまとまってしまうことがあるのですが、今回の松浦くんはまさにそれ。荒削りな部分がないのはいいことのように思うかもしれないけど、逆に言えば個性がなくなっている。ちょっと物足りなさを感じました。夏までに大きく育ってほしいですね」(セ・リーグスカウトD氏)



昨年夏に154キロをマークした大阪桐蔭・関戸康介

関戸康介(大阪桐蔭/178センチ・81キロ/右投右打)

「10球に1球ぐらいしか指にかかったボールがなかった。バックネット直撃の暴投が何球もあったけど、中学時代から騒がれて、プレッシャーもあったんじゃないかな。見ていてちょっとかわいそうでした。すごいポテンシャルはあるのに、このまま終わってほしくないですね」(パ・リーグスカウトA氏)

「ブルペンで投げている球を見ましたけど、ものすごかった。それだけに甲子園でのピッチングはちょっと信じられませんでした。足は速いし、身体能力も高いので、下位で指名して野手で育てるというのもありかな」(セ・リーグスカウトD氏)



初戦の上田西戦は投打にわたる活躍で勝利に貢献した広島新庄の花田侑樹

花田侑樹(広島新庄/182センチ・75キロ/右投左打)

「こんな投手がいたんだとビックリしました。体のバランスがよく、カットボールも◎。質のいいボールを投げられる投手ですね。あとは再現性を高めてほしいと思います。現時点ではおそらく下位指名が妥当だと思いますので、進学して実戦力を上げるほうが得策ではないでしょうか」(パ・リーグスカウトA氏)

「入学してから右肩上がりで成長を続けています。ひと冬越えてボールに強さが出てきました。カットボールを多投していますが、タテのスライダーもいい。まだまだ伸びる投手だと思います」(セ・リーグスカウトD氏)



市和歌山戦に先発し、6回無失点と好投した県岐阜商の野崎慎裕

野崎慎裕(県岐阜商/172センチ・71キロ/左投左打)

「ストレートにキレがあって、カットボールも有効に使えるし、実戦力の高い投手です。こういうタイプは大学、社会人でしっかりと体をつくって、即戦力としてプロに入ったほうがいいと思います」(パ・リーグスカウトC氏)



背番号10ながら最速147キロを誇る常総学院の大川慈英

大川慈英(常総学院/176センチ・70キロ/右投左打)

「身長はまだ伸びているみたいだし、両親の血筋(父は格闘家、母はバレーボール五輪代表)もいいから、今後の成長に期待したい選手のひとりです。ただ、ボールにスピードはあるけど、キレがない印象を受けました。力の入れ具合も"強"だけで"弱"がない。そのあたりの実戦力を身につけることができれば、大化けする可能性はあると思います」(セ・リーグスカウトD氏)



敗れはしたが中京大中京打線を3安打に抑えた専大松戸・深沢鳳介

深沢鳳介(専大松戸/175センチ・73キロ/右投右打)

「一度浮き上がるような軌道のカーブがすばらしい。打者にとっては厄介なボールだと思います。残念なのは、抜くボールがないこと。いますぐプロという感じではないけど、大学に行って抜くボールを覚えたら、面白い存在になるでしょうね」(パ・リーグスカウトA氏)