3月25日、日本代表は韓国を相手に、3-0というスコア以上の完勝を収めた。ビルドアップもろくに許していない。球際でも、…
3月25日、日本代表は韓国を相手に、3-0というスコア以上の完勝を収めた。ビルドアップもろくに許していない。球際でも、付け入る隙さえ与えなかった。韓国戦としては、史上まれに見るイージーなゲームだったと言えるだろう。
一方でその翌日、東京五輪を戦うU-24日本代表は、U-24アルゼンチン代表と激突している。0-1での最少失点差の負けだったが、まさに完敗だった。試合の流れに順次、適応できるアルゼンチンを相手に、日本はボールを持てても、ペースを握れず、相手にゴールをこじ開けられた。
世界における日本サッカーの現在地とは??―。

アルゼンチンとの第1戦はフル出場、第2戦は後半30分まで出場した久保建英
<勝って兜の緒を締めよ>
それは勝負の鉄則である。勝利の味は甘い。誰もがおぼれそうになる。それは驕りにつながり、そうなったら勝利はもはや転落の第一歩だ。
誤解を恐れずに言えば、韓国戦の大勝は、喜びに沸き立つような種類のものではない。相手が弱すぎた。選手の格からして違い、勝って当たり前の敵だった。
韓国は日本のプレスに苦しみ、自陣からまともに抜け出すこともできなかった。1対1になった時、技術、戦術と総合的に明らかな劣勢が出た。パスひとつとっても、質が悪かった。パウロ・ベント監督は韓国の劣勢を受け止めたうえで、"ロングボールをサイドに蹴り込み、空中戦で勝負し、マンマークに近い形で走り回る"という、日本が嫌がる泥臭い戦いにシフトするべきだったが、真っ向から渡り合おうとした。
日本は、それを完膚なきまでに叩いている。
大迫勇也(ブレーメン)、鎌田大地(フランクフルト)、遠藤航(シュツットガルト)、吉田麻也(サンプドリア)、冨安健洋(ボローニャ)などの欧州組は、韓国の選手をはるかに凌駕していた。欧州の最前線の戦いで身につけた技術は荒々しいもので、力任せの気合を頼りに突っ込む相手をものともしなかった。VAR判定があったら、退場になるようなひじ打ち行為も受けていたが、それは絶対的優勢の証左だろう。中盤のラインをほぼ越えさせず、一方で相手のラインを破って蹂躙した。
しかし世界基準で考えた場合、この勝利には少しも満足できない。それが図らずも証明されたのが、翌日に行なわれたU-24アルゼンチン代表戦だった。
日本は得意とする細かい技術を見せ、少しも怯んでいない。コンビネーションを使った攻撃は脅威を与えていた。
とりわけ、リーガ・エスパニョーラでプレーする久保建英(ヘタフェ)は堂々としたプレーを見せている。ドリブルの推進力を見せ、老獪にファウルを誘い、1対1で優位に立ち、鋭い反応からボレーを狙った。日本で彼だけは、アルゼンチンの選手に容易に飛び込ませない間合いがあり(止めるにはファウル同然のプレーが必要だった)、相手に挑発するような言葉も吐かせず、ひとりだけ敬意を払われている様子だった。
しかし、チーム全体としては完敗だった。
アルゼンチンは"密度の高いプレー"をした。プレッシングの激しさだけでなく、奪われた後の反応が鋭く、粘り強く、まとわりつくようで、奪い返すと、どう猛にゴールに迫る。その連続性は瞠目に値したが、それだけではない。試合の流れ次第で戦いを柔軟に変化させ、日本を翻弄した。死力を振り絞る相手には、あえて攻めさせ、網の目で狭めながら圧し潰したのだ。
チーム戦術もあるが、個人の試合巧者ぶりが出た。そして決勝点のシーンで、日本は小さくて大きな差を思い知らされる。
相手FWへの長いボールに対し、板倉滉(フローニンゲン)が対応した。しかし寄せが甘く、前にもっていかれてしまう。並走して対応したが、ゴールライン手前のギリギリのところで、ボールが出ると油断したのか、確実に中へ折り返される。そしてあろうことか、エリア内では相手FW1人を3人がフリーにする体たらくで、力のないボールを上半身の力だけで、ヘディングを叩き込まれた。
同じようなシーンは、他にいくつもあった。一度目にバーを叩いたシュートの崩しも、やはり対応の甘さでクロスを楽に折り返されていた。二度目のバーへのシュートの時も、ディフェンスが易々と釣り出され、潰し切れずに裏を抜かれている。アルゼンチンの選手たちが、際のところで自由を許さなかったのとは真逆の軽さだった。
Jリーグでスーパースターとなりつつある三笘薫(川崎フロンターレ)も、いつものドリブルが肝心なところで何度も引っかかった。「川崎でプレーしているときとコンビネーションが違う」という意見もあるが、高いレベルでは、試合の中でいかにプレーに適応できるかが問われる。三笘のリズムはアルゼンチンには終始、読まれていた。久保がしたたかに敵の裏を取っていたのとは対照的だった。
もっとも、三笘は幸運と言える。自分のプレーを図る相手と対峙することができた。それは必ず成長につながるだろう。
「この借りは返す」
久保は言う。その姿勢が、サッカーの世界では力を与える。日本サッカーはまだまだ強くなる途上だ。
そして中二日で行なわれたアルゼンチンとのリターンマッチ、日本はその激しさに適応していた。
序盤から相手を苛つかせるほど、日本は高い技術と闘志でペースを握った。先発に起用されたMF田中碧(川崎)がプレーに緩急をつけつつ、絶対的なキープ力も見せ、チームにリズムを与えていた。そして瀬古歩夢(セレッソ大阪)の縦パス1本、林大地(サガン鳥栖)が抜け出して先制に成功。後半も、久保のCKを板倉が2度にわたって豪快なヘディングシュートを叩き込んだ。
「この借りは返す」
第1戦後に久保は語っていたが、3-0という快勝で、その言葉を実行した。
世界における日本サッカーの現在地をこの試合だけで判断するのは早計だろう。ただ、日本がまたひとつ強くなったのは確かだ。