川崎フロンターレの強さが、ここでも示された格好だ。 先日、日本代表(A代表)と五輪代表(U-24代表)のメンバーが発表…
川崎フロンターレの強さが、ここでも示された格好だ。
先日、日本代表(A代表)と五輪代表(U-24代表)のメンバーが発表され、川崎から日本代表にDF山根視来とMF脇坂泰斗が、五輪代表にMF三笘薫、MF旗手怜央、MF田中碧が、それぞれ選ばれた。
同一クラブから五輪代表に3人の選出はもちろん最多。日本代表と合わせて5人の選出もクラブ別の最多である。
加えて言えば、今回五輪代表に選ばれたDF板倉滉(フローニンゲン)、MF三好康児(ロイヤル・アントワープ)は、三笘や田中と同じく川崎のアカデミー(育成組織)出身。もともとは川崎でプロになった選手だ。単純に今強いというだけでなく、クラブとして川崎がいかに充実しているかを物語る、今回の代表選考ではなかっただろうか。
しかも、今回ふたつの代表に選ばれた5人のうち、脇坂と田中を除く3人に共通するのは、昨季川崎に加わった選手であるということ。つまり、新戦力ながら川崎のハイレベルなサッカーに適応し、タイトル奪還に貢献しただけでなく、日々質の高いプレーを要求されるなかで、自らも急速に力を伸ばしていったという点で相通じる。

レッズ戦でもゴールを決めて、存在をアピールしたフロンターレの旗手怜央(中央)
とはいえ、初選出の山根はもちろん、三笘や旗手にしても、代表チームにおける従前の序列は必ずしも高いものではなかった。ともに五輪代表メンバーの常連ではあったが、レギュラー格の位置につけていたとは言い難い。
例えば、日本が準優勝した2018年のアジア大会。三笘と旗手は五輪代表(当時のU-21代表)のメンバーとして、そろってこの大会に出場しているが、攻撃の軸だったのはFW前田大然(横浜F・マリノス)だった。旗手はスーパーサブ的な役割が多く、三笘に至ってはベンチを温める試合も少なくなかった。
実際、当時の三笘のプレーを振り返っても、現在のようなドリブラーのイメージはほとんどなく、チームとしてのパスのつなぎにうまく加われず、苦労していた姿のほうが印象に残っている。旗手にしても、スピードこそあったが、プレーが単調でボールコントロールにはミスも目立っていた。
まだ大学生だったから、と言ってしまえばそれまでだが、以降に行なわれた五輪代表の親善試合などでも、彼らが目立って評価を高めたことはなく、序列が変わることもなかった。
当然、自身が置かれている立場を認識していただろう。2019年12月に行なわれたジャマイカとの親善試合(9-0で勝利)のあと、旗手は焦燥感を漂わせ、こんなことを話している。
「現状、オリンピックに出られる保証はない。来年(2020年)フロンターレで日々練習できるので、残り半年で試合に出て、結果を残せるようになれば。開幕から試合に出て、結果を残すことが必要になる」
しかし、それからわずか2カ月足らずで、世の中の様子は一変した。
図らずも、東京五輪は開催が1年延期に。Jリーグも新型コロナウイルスの感染対策により厳しく難しいシーズンを過ごすことにはなったが、その間、飛躍的な変貌を遂げたのが、三笘であり、旗手だった。
スーパーなドリブル突破を武器に13ゴールを叩き出し、ベスト11にも選出された三笘は言うまでもないが、旗手の着実な成長も見逃せない。昨季開幕当初は短い時間の途中出場が多く、川崎のテンポに乗りきれない様子も見られたが、徐々にフィット。FW、MF、サイドバックとポジションを選ばない多様性も手伝って、チームに不可欠な存在となっていった。
今季からは主に左サイドバックに入っているが、今や単調なプレーどころか、自在に立ち位置を変えて周囲と連係することで、攻撃のバリエーションが増加。昨季同ポジションのレギュラーを務め、ベスト11にも選ばれたDF登里享平がいまだケガで不在だが、その穴を埋めて余りある活躍を見せている。
あいにく昨季は1月のアジアU-23選手権以降、コロナの影響で五輪代表の活動が実質的になかった。そのため、彼らが川崎で蓄えた力を国際舞台で発揮することもかなわなかった。
だが、およそ1年間のブランクは、間違いなくチーム内の序列を変えた。三笘にしろ、旗手にしろ、手の中にある自信の大きさは、1年前とは比較にならないものだろう。
同じことは、日本代表の山根にも言える。
昨季、湘南ベルマーレから川崎へと移籍してきた当時の山根は、日本代表候補としてメディアに名前が挙がるような存在ではなかった。湘南の主力としてすでに3シーズンを過ごしていたが、チーム自体がJ1とJ2を行ったり来たりしていたのだから、無理もない。
ところが、川崎移籍をきっかけに、超攻撃的右サイドバックの才能が開花。昨季はベスト11にも選ばれ、誰もが納得の日本代表初選出となった。チーム内の序列という言い方をするなら、まだ名前すら載っていなかった選手が、一気に圏外から上位へとランクを上げてきた。
特に今回の日本代表は、海外組の酒井宏樹(マルセイユ)と室屋成(ハノーファー)が招集されておらず、山根にとっては出場機会を得る絶好機。その出来次第では、代表定着にもつながる大きなチャンスを迎えていると言っていいだろう。
代表合流前、最後の試合となったJ1第6節の浦和レッズ戦。
敵地に乗り込んだ川崎は、前半こそ浦和の組織的な守備に苦しんだが、前半終了目前の42分に先制点を奪うと、後半はゴールラッシュ。大量4点を加え、5-0と圧勝した。
左サイドバックの位置から巧みに抜け出し、ダメ押しの3点目を決めた旗手が語る。
「今までこのチームでやってきたことを表現するだけ。自分がやれるプレーを100%出したい」
ふたつの代表チームが行なう4試合。それはJリーグ史上最強を支える新たな俊英が、自身の成長を証明する舞台である。