宮崎商の主将・中村碧人は高校通算26本塁打 下も上もユニホームは真っ黒。手をやるたびに顔が黒くペイントされていく。宮崎商の主将・中村碧人内野手は文字通り「土の似合う男」だ。プロ野球のキャンプ地でもある野球が盛んな宮崎市で生まれ育った。小学1…

宮崎商の主将・中村碧人は高校通算26本塁打

 下も上もユニホームは真っ黒。手をやるたびに顔が黒くペイントされていく。宮崎商の主将・中村碧人内野手は文字通り「土の似合う男」だ。プロ野球のキャンプ地でもある野球が盛んな宮崎市で生まれ育った。小学1年生で始めたのはソフトボールだったが、キャンプには何度も足を運ぶ野球ファンの少年だったという。【市川いずみ】

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「全部がかっこいいんです(笑)」

 まるで好きなアイドルについて話すように少し照れながら語ったのは、憧れの巨人・坂本勇人についてだ。ソフトボールを始めたころからの大ファン。キャンプ見学はもちろん、自室にはサインボールもある。

 ポジションも同じ遊撃手で捕球の際のタイミングの取り方は坂本をお手本にしているという。昨秋の九州大会準々決勝・東明館戦では2打席連続本塁打を放ち、高校通算26本塁打と長打力は十分に持っている中村は、もちろん「坂本選手のようなプロ野球選手になりたい」と夢を語る。

 しかし、プロの世界に行くには圧倒的に足りないものがあるという自覚がある。「プロに行くには走力が課題なんです」50メートルは6秒5。この日の試合でも、走塁・守備ともに特別な遅さは感じなかったが、決して速いとも言えない。橋口光朗監督は東洋大時代、同級生に乾真大(元日本ハム)、後輩には鈴木大地(楽天)や小田裕也(オリックス)ら、後にプロ野球選手として活躍する仲間を間近で見てきた。「中村は足がまだもうちょっと」走力を指摘した上で、プロの世界へ進んだ選手との共通点もあると話す。

「彼ら(プロに行った東洋大の仲間)はとにかく練習してましたね。大学生なので夜に外で食事をすることもありますが、必ず帰ってきて夜10時からでも練習していました。中村も本当によく練習します。そこはプロに行ける素質の一つだと思います」

初戦で好投手・達を擁する天理と対戦「ストレートを打ってみたい」

 中村の朝は早い。朝5時に起床し、6時には家を出る。「教員より早く学校に来るんですよ」と指揮官が笑うように、学校に到着するのは教員、生徒含めて一番乗りだ。授業が始まるまでの朝練習でこの冬に強化したのが、課題の走力だった。30メートルほど続く上り坂を一気に駆け上がる坂道ダッシュ。それを全力で毎朝15本走り続けた。

 たった一人で、全体練習が終わる午後8時以降はコーチと共に10メートルの距離を5回ほどを切り返して走るメニューを繰り返した。午後9時過ぎまで練習し、帰宅するのは10時すぎ。就寝時刻は10時半~11時の間といい「帰ったら風呂入ってご飯食べてすぐに寝ます。テレビをみたり、スマホを触ったりもしないし、周りの友達が遊んでいても気になりません。練習が一番好きなので」。まさに練習の虫である。

 初戦の相手は天理。プロ注目右腕・達孝太投手と相対することを心待ちにしているといい、「ワクワクしていますね~楽しみです。あのストレートを打ってみたいです」チームを引っ張る立場としても「全国の強いチームは試合中や試合前にどんな取り組みをしているのか見てみたいです」と、出場して勝利にこだわるのはもちろん、たくさんの学びを得たいと意気込んでいる。

「市立和歌山の小園(健太)君と大阪桐蔭の松浦(慶斗)君、関戸(康介)君。プロ注目選手のレベルを感じてみたいし、自分もプロにいくならそのレベルの投手を打たないといけない」。中村にとって夢へ近づく大会がいよいよ始まる。(市川いずみ / Izumi Ichikawa)

市川いずみ(いちかわ・いずみ) 京都府出身のフリーアナウンサー、関西大学卒。元山口朝日放送アナウンサー時代には高校野球の実況も担当し、最優秀新人賞を受賞。NHKワースポ×MLBの土日キャスター。学生時代はソフトボールで全国大会出場の経歴を持つ。