世界のサッカー界は4年に一度のW杯を中心に回る。前回2018年W杯から3年目。次回2022年W杯まであと1年。2021…
世界のサッカー界は4年に一度のW杯を中心に回る。前回2018年W杯から3年目。次回2022年W杯まであと1年。2021年はトラック一周のレースにたとえれば、第4コーナーに差しかかった地点になる。次回カタール大会は通常より約半年遅い11月~12月開催なので、厳密には第3コーナーを回っている最中と言うべきかもしれないが、いずれにしても、時間軸をもとに話をすれば、レースは後半戦。これから佳境を迎えようとしている。
4年前(2017年)の3月といえば、ロシアW杯アジア最終予選の後半戦を迎えた局面だった。ホームで敗れたUAEにアウェーで勝利(3月23日)。アウェーで苦戦したタイにもホームで完勝した(3月29日)。まさにW杯本大会出場が見えてきた瞬間だったが、その一方で、監督はハリルホジッチで大丈夫なのか、選手選考はこれでいいのか、など、代表を取り巻くムードには緊張感が漲っていた。大いに波風が立っていたものだ。
それがいま、懐かしく感じられる。その4年後にあたる現在は、来る3月30日のモンゴル戦で、ようやくアジア2次予選の折り返しとなる5戦目だ。順当勝ちが予想される"緩い"試合はまだしばらく続く。
なにより代表戦そのものもが、昨年は4試合しか行なわれなかった。しかもそのすべてが、無観客試合のアウェー戦。4年周期で回る3年目に相応しい熱気を感じることはできない。このコロナ禍のご時世に、カタールW杯の話をされても正直、切実感は湧いてこないと言うべきだろう。
発表された韓国戦(3月25日)、モンゴル戦を戦うメンバーにも、その空気感は表われている。初招集の新顔8人。招集歴はあるが、試合には出場していない松原健(横浜F・マリノス)を加えると9人。出場歴のない選手が約4割を占める代表チームを見るのはいつ以来だろうか。

王者・川崎フロンターレの右サイドバックとしてブレイクした山根視来
U-24日本代表が24日と29日に、U-24アルゼンチン代表と対戦することもその大きな原因だろう。その中には、通常であればA代表に招集されても不思議ではない選手も、多く含まれているからだ。
ちなみに前回の代表戦(2020年11月)、オーストリアで戦ったメキシコ、パナマ戦に招集された選手で、今回外れた24歳以上の選手は、以下の10人だ。
川島永嗣(ストラスブール)、シュミット・ダニエル(シント・トロイデン)、酒井宏樹、長友佑都(ともにマルセイユ)、原口元気、室屋成(ともにハノーファー)、植田直通(セルクル・ブルージュ)、柴崎岳(レガネス)、橋本拳人(ロストフ)、鈴木武蔵(ベールホット)。
今回は彼らと、代表歴がない9人を含む国内組との関係が注目ポイントになる。それぞれの関係に逆転はあるのか。さらにU-24から昇進してきそうな若手との関係はどうなのか。
通常のサイクルで進行する4年間なら、メンバーは今ごろ、かなり固まっている。監督が「絶対に負けられない戦い」の呪縛にはまり、メンバーの固定化が促進。W杯本大会出場の可能性は膨らむ一方で、チームの総合的なマックス値が読めてしまうため、本番での期待値は逆に萎むというパターンに陥りがちだった。
今回の4年間は、幸いにもそれがない。五輪も開催が1年ずれ込み、いまだA代表と別行動を強いられている。年齢制限もU-23からU-24に変更。A代表との境界が鮮明ではなくなっている。代表のスタメン争いは混沌とした状態にある。代表歴のない選手が多くを占める今回のメンバーを眺めると、その混沌は深まるばかりという感じだ。
初招集の8人は以下のとおりだ。
前川黛也(ヴィッセル神戸)、山根視来(川崎フロンターレ)、中谷進之介(名古屋グランパス)、小川諒也(FC東京)、江坂任(柏レイソル)、原川力、坂元達裕(セレッソ大阪)、川辺駿(サンフレッチェ広島)。
前川は、元日本代表GK前川和也を父に持つ親子鷹のGKだ。神戸にはキム・スンギュという名GKがいたが、彼が柏に移籍したことで、前川にチャンスが回ってきた。昨季の後半から出場機会を増やし、今季は開幕から5戦連続出場。安定した守備を見せている。
父親の和也も当時としては長身GK(身長188センチ)として知られたが、黛也も191センチと負けていない。
その長身はシュミット・ダニエル(197センチ)には及ばないが、今回招集された西川周作(浦和レッズ/183センチ)、権田修一(清水エスパルス/187センチ)、さらには東口順昭(ガンバ大阪/184センチ)、大迫敬介(広島/187センチ)、中村航輔(ポルティモネンセ/185センチ)など、他の候補にはない魅力。順調に成長してほしいGKだ。
山根は、一昨季まで所属した湘南ベルマーレでは3バックの一角としてプレーしたが、昨季、移籍した川崎で右サイドバック(SB)としてプレーするや大ブレイク。優勝の立役者になるとともに、ベスト11にも輝いた。今季は縦突破にキレも出て、個人で局面を打開するシーンも目立つ。27歳ながら今が旬。さらなる成長が期待できる。ベテラン酒井宏樹、同年代の室屋成を追い越し、国内級から国際級に羽ばたくことができるか。
中谷は、前回リオ五輪ではバックアップメンバー止まりだったが、その後、Jリーグでは順調に活躍。日本人CBとしては、昨年、一昨年と2年続けてフルタイム出場した唯一の選手。間もなく25歳を迎えるが、J1の出場数はすでに160に達している。もう少し早くチャンスが与えられるべき選手だった。
小川もしかり。これまでに1度や2度は、代表に呼ばれていてもおかしくない実力者だ。パンチ力に富む、Jリーグを代表する左SBである。
江坂は29歳。この中では一番の遅咲きだが、好選手であることは何年も前からわかっていた。国際舞台でどれほどやれるか。歴代の代表監督は、一度も試そうとしなかった。今回、南野拓実(サウサンプトン)、鎌田大地(フランクフルト)がいる中で、森保監督は江坂にどれほど出場機会を与えるか。その出場時間と、森保監督の評価は比例関係にあると言ってもいい。ただし、29歳の選手を呼んで使わないのは失礼。代表監督としての器に物足りなさを感じることになる。
原川は今季移籍したC大阪でハマっている。昨季、鳥栖でも目立っていたが、ここに来て存在感を上昇させている。さばきのいいパッサーだが、シュートセンスも上々。日本人らしい選手だ。
磐田から広島に復帰して4シーズン目。川辺も広島ではすっかり欠かせない選手となっている。原川、遠藤航(シュツットガルト)、守田英正(サンタクララ)とは、どんな力関係にあるのか。
そして昨季、モンテディオ山形からC大阪に移籍するや、大ブレイクを果たした坂元。新顔の中でもとりわけ異彩を放っている。左利きの右ウイング。ドリブルもできれば、パスセンスもある。必殺技は切り返し。これを止められる選手はJリーグにはいない。サイドに構えていながら、ゴールを見通すことができる能力も備えている。右SBなど、周囲と連係するプレーが得意で、坂元を経由すると、2、3プレー先には、シュートが望めそうな展開が待ち受ける。
ライバルは伊東純也(ゲンク)と堂安律(ビーレフェルト)だが、キャラが被るのは左利きの右ウイング、堂安だ。馬力はともかく、クレバーさ、パス能力という点では坂元が上回る。三笘薫(川崎)、坂元の両翼こそ、いま一番見てみたい組み合わせだ。
最後に触れるべきは、U-24に該当する選手の中で、今回、唯一A代表に選ばれた冨安健洋(ボローニャ)だろう。森保監督の期待の大きさを見せられた気がする。となれば、イタリア・セリエAの中位ではなく、所属クラブはチャンピオンズリーグ級で、と言いたくなる。
蛇足になるが、発表された名簿を見て思うことは、海外組が所属するクラブの、ネームバリューの貧弱さだ。少なくとも、「ベスト8を狙う」(森保監督)国としては物足りない。
日韓戦。勝利も重要だが、韓国のサッカーファンをも驚かせる選手個人の活躍も不可欠になる。敵も羨む好選手がどれだけ現れるか。森保采配ともども注目したい。