その長い歴史の中で様々な世代から愛されてきたライオンズは今、社会貢献プロジェクト「L-FRIENDS」の取り組みにより、地域から“信頼”される球団へと進化している。今回は同プロジェクトグループのマネージャーを務める松本有さんに、その活動内容と、関わるスタッフとしての思いを伺った。

――ライオンズといえば、2012年に設立された「ライオンズこども基金」がメディアでもよく取り上げられました。この基金はどんなきっかけで設立されたのですか。

松本 2011年の東日本大震災を機に、「プロ野球選手として、球団として何ができるのか」と自分たちの存在意義を模索した結果、震災の影響を受けたこどもたちのためにアクションを起こそうということで、この基金が始まりました。設立当時の柱は3つ、「地域社会」「教育」「被災地支援」です。最初は物資の寄贈がおもな活動でした。

――こども基金の設立を経て、球団の社会貢献活動に変化はありましたか。

松本 選手による社会貢献活動は90年代ごろから活発に行われるようになり、球団としても前向きに取り組んでいる事例は古くからありましたが、それを積極的に発信するまでには至っていませんでした。それが、こども基金ができたことにより、活動の幅が広がるのと同時に、その内容が世の中により伝わりやすくなったのではないかと思います。とはいえ、やはり昔からの活動の積み重ねがあったからこその基金であることは間違いありません。

自治体とタッグを組むことにより、地域活性を強化。地元に根づいたチームとしての役割を果たしている。©SEIBU Lions

――その後、地域との連携を機にさらに活動が成長を遂げていますね。

松本 2015年から埼玉県や県内の自治体と連携するようになったのを機に、学校を訪問しての野球教室など基金設立以前からやっていたことも含め、活動が多岐に渡るようになりました。その際、やはり活動を一つのプロジェクトとしてまとめていくことが必要だということで、2018年に「L-FRIENDS」を発足しました。当初、L-FRIENDSは①こども支援、②地域活性、③野球振興の3つの柱でスタートしましたが、2020年4月からは④環境支援も加わって、現在は4つの柱で活動しています。③野球振興には、こども向けの野球教室だけではなく、車椅子ソフトボール大会の開催や女子野球チームである埼玉西武ライオンズ・レディースへの支援なども含まれます。

毎年9月(2020年はコロナ禍により中止)に開催される「ライオンズカップ車椅子ソフトボール大会」では、障がい者と健常者が一緒にプレー。プロ野球OBが選手として出場することも。©SEIBU Lions

――最近では、オレンジリボン運動(児童虐待防止)の啓発でauじぶん銀行とパートナーシップを組まれました。企業との素敵なコラボレーションでしたね。

松本 球団としてオレンジリボン運動の啓発をしたいと考えていたところ、auじぶん銀行様のコーポレートカラーがオレンジ色だったこともあり、こちらから一緒にやりませんかとお声がけさせていただきました。同社も野球を通じたこども虐待防止・子育て支援の啓発活動に強く共感してくださいました。以前はスポーツそのものに価値があり、そこに投資してくださる企業さんも多かったのですが、コロナ禍のような不測の事態になるとそれがなかなか難しい。今の世の中の状況を鑑みると、SDGs的な取り組みを一緒に行うことが、スポーツに投資する新たな価値を生むのではないかとも感じます。

――この活動では、選手たちも手書きのメッセージで呼びかけるなど協力的でした。

松本 このような取り組みへの協力要請に対し、選手は快く引き受けてくれます。個人的に支援活動を行っている選手もたくさんいて、引退や移籍をしても代々受け継がれていく文化も生まれています。そばで見ていても、社会貢献に興味を持つ選手は年々増えています。

オレンジリボン運動の支援では、選手たちが啓発メッセージを書き込んだプラカードを披露。ユニフォームの文字もオレンジ色に。©SEIBU Lions

――最近はメットライフドーム周辺が整備され、雰囲気も一新されました。それがL-FRIENDSの活動を促進する要素はありますか。

松本 現在の活動の中でいうと、特に④環境支援ですね。正直なところ分別がまだ甘いので、これを機にリサイクルなどエコの取り組みもしっかりやっていければと思っています。それ以外にもいろいろと考えていきたいですが、アイデアはこれからです。当社は非営利団体というわけではないので、できることには限界があるのかもしれないですが、その限界をできるだけ広げられる作業を今後も継続していきたいと考えています。

――L-FRIENDSが抱えている課題や、実現したいことはありますか。

松本 やはり資金的なところですね。現状、自前でお金を出す、スポンサーに支援していただく、国から補助金をいただく、チャリティーオークションを実施する、この4つの方法がありますが、やりたいこともまだたくさんあるので、資金調達の座組は今後の課題です。また、支援規模を大きくするためにも、12球団合同で何かやるとか、もしくはJリーグの浦和レッズさんや大宮アルディージャさんなど地域のチームと組むとか、横の連携もできたら理想的です。

――このような活動に関わるスタッフとして、どんな思いで取り組まれていますか。

松本 プロ野球の最大の武器はPR力ですから、我々がやるべきことは、世の中にはこういう社会課題があり、それに取り組む素晴らしい活動がある、ということを伝えていくことです。オレンジリボン運動も、来場者のファンの方にヒヤリングしてみると、我々の活動後は9割近くの方がその存在を知ってくださっています。球場という狭い空間ではありますが、そこで発信することで野球ファンには確実にメッセージを届けることができるので、まだ日の目を見ていない素晴らしい活動をどんどん伝えていきたいという思いで日々取り組んでいます。

――活動の中で特に印象に残っていること、嬉しかったことを教えてください。

松本 やはり支援先の方々に喜んでいただけた時は嬉しいですね。昨年、農林水産省から補助金をいただき、コロナ禍による飲食店の営業自粛の影響を受け困窮している畜産農家などから食材(農林水産省が指定)を購入し、埼玉県内104か所のこども食堂に寄贈したのですが、本来であれば高級店が仕入れるような質のいい食材、中には鰻などちょっと贅沢な食材もあって、普段なかなか食べられないものを食べられたとこどもたちがとても喜んでくれたんです。大がかりなプロジェクトで大変なこともありましたが、やってよかったと思えました。

――最後に、これからの活動への意気込みを聞かせてください。

松本 西武沿線、埼玉県内における地域の課題を解決すること、それによって地域の方々に喜んでいただくこと。それが我々のミッションです。その形をしっかりつくることが、ライオンズを応援してくださる方が増えていくこと、そして長い目で見れば球場に足を運んでいただくことにも繋がると思いますので、今後もそのミッションの遂行に力を尽くしたいです。

<お話を伺った人>
埼玉西武ライオンズ 経営企画部L-FRIENDSグループ マネージャー 松本有さん
カニシャス大学大学院を経て、2005年楽天野球団入社し、スタジアム運営、地方興行、動員企画、ファンクラブ運営、施設改修などを担当。2019年西武ライオンズ入社し、以降現職