2013年に引退し、現在は現場監督という立場でプロレスリングWAVEを支えるGAMI。プロレス界を俯瞰して見る彼女は、なにを思い、なにを考えているのか。後編は今後の女子プロレス界について。   <中編はこちらから> --GAMIさんは…

2013年に引退し、現在は現場監督という立場でプロレスリングWAVEを支えるGAMI。プロレス界を俯瞰して見る彼女は、なにを思い、なにを考えているのか。後編は今後の女子プロレス界について。
 

<中編はこちらから>


--GAMIさんは、2013年に引退しプロデュース業に専念していますが、プロデューサーとして手腕を発揮した一つがCatch the WAVEの2016年大会だと思います。参加人数32名を4名ずつ8ブロックに分けた大会。
GAMI:それまでは1ブロックに8人とか10人はあったんですよ。でも4人がベストですね。理由は各ブロック6試合で済むから。5人になると10試合に増える。面白いけど、お客さんが試合を見ていて星取表が分からなくなる。私もこんがらがる(笑)。

--なるほど。試合数から見ると1ブロック4名がちょうど良かったのですね。
GAMI:昨年はコロナでやらなかったけど、Catch the WAVEは2ヶ月かけて行います。当然、怪我をする選手も出てくる。大怪我の場合、欠場だけど軽症の場合、試合スケジュールを変更すれば怪我を治して出場できるメリットもありますね。

--WAVEは他団体から若い選手が多く参戦しますよね
GAMI:まだ色がついてない選手は面白いんですよ。あと若い選手は良く働く(笑)。今コロナ禍なので1試合ごとにリング清掃が入るじゃないですか?若い選手はメチャクチャ早いんですよ。
私とレフェリーのTommyさん2人でリング清掃したら5分くらいかかったけど、若い選手だと1分くらいで終わりますよ(笑)。

--他団体の選手がWAVEに上がるとのびのび戦っているような気がします。マイクも自由に話していて好感が持てます。
GAMI:「あんたら他所にきたらなんの責任もないんやからノビノビやりなさい。どんどん好きなこともやったらええ。ただ出来ることだけやりなさい」とリングに送り出します(笑)。

--GAMIさんはファンを始め、周りの声に耳を傾ける経営者ですよね。いいものは取り入れる。
GAMI:1度自分の中に取り入れて噛み砕いてオリジナルにします。

--物事を客観的に捉える視点をお持ちですよね。
GAMI:女子プロレスは男子と違い、いまだに伝統の女子プロレスへの依存性がメチャクチャ高い。もう時代は令和ですよ。その時代に沿ったことをしていかんと。なにより女子プロレスに対するファンの見方が変わりました。でも、それはそれ、これはこれ。
「ファンの見方が変わりました。だったら、私たちはそれに合わせます」じゃダメ。うちの団体がやるべきことをやって、それを認めてくれるファンの人たちに会場に来てもらう。

--確かにそれがブレてはいけないですね。現場監督という立場で客観的にプロレスを捉えているGAMIさんは、現在の女子プロレス界は、どのように見ていますか?
GAMI:ある雑誌に秋山さんと丸藤くんが対談している記事が載っていて、「今のプロレスラーは1から10まであるとすると、6から10まで出来るけど、1から5までの基本が出来ていない」と書いてあった。それを見て、その通り!と思いました。

--それは華やかな部分だけを見て、そこだけを追求するからでしょうか?
GAMI:うん。例えば「ムーンサルト」、あの技はそんなに難しい技ではないんですよ。でも完成形を見て、自分で試してみて「ムーンサルト」が出来ると、それで「プロレスラー」だと勘違いしてしまう。
そうではなく、若い人たちにはロックアップの大切さやバックの取り方一つ一つ「なぜこうなるのか?」から教えないとダメなんですよ。私が若い時は、コーチが山本小鉄さんだから「なんでこうなるんですか?」とか怖くて聞けなかったけど(苦笑)。
腕の取り方は、基本的に掌が上を向いている時と下を向いている時しか教わっていないけど、それを応用すれば何とでもなるんです。人間の転がし方とか倒し方とか急所の位置とか。でも今の若い人は全く知らないから、決まった動きしか出来ない。
基本的な間合いであったり、自分の体重の置く位置とか、軸がどこにあるか、プロレスは「相手をどうやったら倒せるか」から始まっているのに、その部分をみんな知らない。
うちら(WAVEの選手)はコミカルでメッチャふざけているけど、基本の1から5がキッチリ出来た上での5.5とか6をしているわけ。1から5を出来ない選手が増えたらプロレスの未来はないかな。

--GAMIさんのような考えを持った方は貴重ですよね。今後、女子プロレス界とどのように関わっていく予定ですか?
GAMI:WAVEはWAVEなんですけど…最近、ものごとに対しての考え方を変えました。変えたてホヤホヤだけど(苦笑)。全てを三角形で考えるようにしました。ゴールがピラミッドの頂点。その頂点に辿り着くためには、何を積み上げて行くのか。
例えば「今後も女子プロレスを存続させるには?」というテーマをピラミッドの頂点に置くと何をすべきなのか?
女子プロレスの価値を上げるとか、認知度を高めるとかあるじゃないですか。そのためにはWAVEの集客を上げるとかASSEMBLE(※)を成功させるとか、いろいろあるんですよ。

※日本の女子プロレスの各団体が集まった組織団体。現在、定期興行を行っている。

じゃあ、成功させるには、どうすればいいのか。選手を増やすとか選手の質を上げるとか考え方を変えさせるとか、いろいろやれることがある。
「WAVEの企業価値を上げる」「WAVEを存続させる」と言うのがWAVEの中での目標。それと女子プロレス全体を見た時、やはり「女子プロレスを存続させる」というのが目標かな。

--GAMIさんはWAVEだけでなく、女子プロレス界や男子も含めたプロレス界全体を見ていますよね。
GAMI:ただ男子はDDTの高木大社長やNOAHの丸藤くんのように、経営陣に向いている人たちがどうにかするんですよ(苦笑)。でも女子に関しては、「プロレスをどうするべきか」とかを考えている人が少ない。考えていたら、現状のようになっていない。
だからまだまだやるべきことは沢山あります。せめて私が死ぬまでは「女子プロレス」が残っていて欲しいから、あと48年間は残すぞ!と(笑)。


<インフォメーション>
3/14(日)新木場1stRINGで「White wave 2021」、4/1(木)新宿FACEでPHACE2 Reboot 2nd『NAMI☆1~Apr.~’21』が行われます。詳細はプロレスリングWAVEのWebサイトをご確認ください。→https://pro-w-wave.com

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文・編集/大楽聡詞
写真提供/プロレスリングWAVE